世界一幸せだ、って胸を張れる


マジバでのプロポーズ。それはムードもへったくれもないものだったけど、ずっと不安を抱えていた私にとっては何よりも嬉しい言葉だったんだよ?
友達に話すと大笑いされるけど、でも私達らしいんじゃないのかなって思えるから。
ねぇ、大我くん。私の全部を君にあげるから、だから君の全部を―――私にちょうだい。





―――あのプロポーズから8年の月日が流れた。
ほとんど連絡を取っていなかった時が嘘のように、電話やメールの回数が増えました。些細なことかもしれないけど、私達にとっては大きな進歩だと思ってるんだよね。
私達のことを知っている高校時代の同級生や先輩方は、良かったねと自分のことのように喜んでくれたのを覚えてる。本当に仲間に恵まれてるなぁ、と思った瞬間だったもの。


「一体、どうなることかと思っていましたが…ようやくですか」
「う、…お前にそう言われると弱いんだけど」
「知りませんよ、そんなこと。散々、迷惑かけたんですからその分も幸せになってもらわないと困ります」


結婚する、と報告した時の大我くんと黒子くんの会話を思い出すと、いまだにおかしくて仕方がない。だって何だか漫才をしているような会話なんだもの。高校の時からずっとそんな感じだったから、久しぶりにそれが見れて嬉しかったっていうのもあるんだろうけどね。
けど、口ではそんなことを言っていた黒子くんも嬉しそうに笑ってくれてたから。笑って幸せになってください、って言ってくれたの。すっごく嬉しかったなぁ。

あとは成り行きで『キセキの世代』と呼ばれた彼らにも報告することになったのよね。確かに試合で対戦したり、ちょこちょこ交友もあったけど…まさか結婚の報告をすることになるとは思ってなかった。だってそこまで仲が良い、とはどうしても思えなかったからさ。
まぁ、ちゃんと話してみると皆、面白くていい人達だったけれども。

その他にも降旗くん達やバスケ部の先輩方にも報告して、しかもお祝いのパーティーまで企画してくれちゃって。私達が式を挙げることはしない、って言ったから多分、それで計画してくれたんだと思う。別にそんな気を遣わなくても、って思ったんだけど…大我くんに皆の好意だから有難く受け取ろう、って言われちゃったらもう何も言えないでしょう?でも嬉しいのは本当だから、楽しみにしてるんだけどね。実は。

そしてそのパーティー当日。始まる時間よりかなり早く会場入りした私は、控室だと通された先に部屋に用意されていたものに驚いて言葉を失った。


「これ、…」
「私達と新郎本人、火神くんからのプレゼントよ!…まぁ、貸衣装なんだけどね」


そう言って笑うリコ先輩の言葉に何も返せない。だって式を挙げることをしない、と大我くんと2人で決めた時からきっと着ることはないだろうと思っていたから。いつか写真を撮れたらいいなぁと思ってはいたけど、それがこんなにも早くに叶ってしまうなんて思いもよらなかった。

そう、部屋の中に用意されていたのは―――女の子ならば誰でも憧れるであろう、ウエディングドレス。ブーケやベール、更にはアクセサリーまで揃えてあって目頭が熱くなってしまう。

ああもう、まだパーティーが始まっていないのにその前に泣いてしまいそうだ。こんなことしてくれてるなんて、私全然知らなかったよ大我くん…!


「メイクは私と桐皇のマネージャーだった桃井さんが担当するからね」
「桃井さんが…?」
「そう。ドレスのチョイスも彼女に手伝ってもらったのよ」


私、そこまで深い付き合いをしていたわけじゃないのにそこまでしてくれたんだ…すごい嬉しい。
ウエディングドレスを前に感動していると、突然ドアが開いて可愛らしい声が聞こえてきた。振り向いてみれば、そこにいたのはやっぱり桃井さんで。満面の笑みで久しぶり、と声をかけてくれる。
それに久しぶり、ありがとうと言葉を返せば、緩く首を振って「世界一の美人さんにしてあげる!かがみんをびっくりさせちゃおっ」とまで言ってくれて思わず笑っちゃった。


「うん、お願いします」





メイクと着付けが終わったのはそれから2時間後のことだ。
ドレスなんて着たことなかったからどうしたらいいのかわからなかったんだけど、桃井さんが今そういうお仕事をしているらしくものすごく手際が良かったです。それはもうビックリするくらいに。メイクも慣れてるし、…すごいなぁ。私は簡単なメイクしか出来ないから、本当に尊敬しちゃう。


「あ、そろそろ時間ね。行きましょっか、北川ちゃん」
「えっあ、はい!」


歩きやすいように、とドレスの裾が短めのものを選んでくれたおかげで足を引っ掛けて転ぶとか、引きずった裾を汚すってことをしなくて済みました。会場である部屋の前に辿り着くと、真っ白なタキシードに身を包んだ大我くんが居心地悪そうに立っていた。…もしかして、緊張してるのかな?
大我くん、と名前を呼べばバッとこっちを向いたけど、何も言葉を発することなくぽかんと口を開けて間抜け面。心なしか顔が赤いような気もする。
そんな彼を見て私もきょとんとした表情を浮かべちゃったんだけど、桃井さんとリコ先輩がぷっと吹き出したのを合図に我に返った。


「やーだ火神くん!北川ちゃんに見惚れちゃってるの?」
「えっ?!いや、その…っ!」
「見惚れちゃうよねぇ。北川さん、すっごく綺麗だもん!」
「うう、そんな風に言われると照れちゃうからやめて桃井さん…っ」
「だって本当のことだもん。リコさん、私達も中に入らなくちゃ」
「そうね。…じゃあ2人共、扉が開いたら入場だからね?」


その言葉に無言で頷くと2人はにっこり笑顔を浮かべて、会場内へと姿を消した。
しん、と静まり返った廊下で佇む私達。な、何だか私も緊張してきちゃったよ…!本当の結婚式じゃないし、家族や親戚がいるわけじゃないからそんなに緊張することもないと思うんだけど、ああどうしようこれ!!
不安になってきて大我くんの顔を見上げれば、ちょうどこっちを見下ろしていたみたいでバチッと目が合った。


「た、大我くん…!」
「俺も割と緊張してっけど、でもヘーキだろ。鈴と一緒だし」


ぎゅうっと握ってくれた手から感じる彼の体温に、少しずつ緊張の糸が解けていくのがわかった。…そうだよね、大我くんと一緒なんだもん。絶対に大丈夫。
大きく深呼吸するのと同時に扉が開かれて、眩しい光に包まれた。その光の先にいたのは大好きで、大切なたくさんの仲間。彼らの大きな拍手に導かれるように私達は会場内へと足を踏み入れたのです。


「鈴、俺、ぜってーお前を幸せにするから。愛してるぜ!」
「うん。私も、愛してるよ大我くん!」



(おい火神、北川を泣かせたら承知しねーかんな!)
(わかってるっすよ!泣かせねっす、絶対)
(北川さん、綺麗ですよ)
(ふふ、ありがとー黒子くん!)
(あっ黒子!テメ、人のモンを口説くんじゃねーよ!!)
(口説いてないですよ、バカなんですか君は)
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