第三者から見た2人
コンラッドのことは、他の誰より理解出来てると思ってた。見なくてもどんな顔してるのか何となくわかるし、彼がどんなこと考えてるのかも何となくわかってた。
でも、あんな優しい顔で笑うコンラッドは初めて見たんだよなぁ。
side:有利
「…あれ?」
「どうした、ユーリ。何か見つけたのか?」
「ああうん、あそこ」
ほら、と指差した先にいたのは、偶然休みが重なったらしいコンラッドとフェリシア。
「コンラートと義姉上じゃないか、2人がどうかしたのか?」
「んー?あの2人、本当に仲が良いんだなぁって」
俺が知ってるコンラッドはいつだって柔らかい雰囲気で、物腰も柔らかくて、…すごく穏やかな人、って感じだったんだ。もちろん俺に何かあった時とか、俺が何かしでかしそうな時は必死な形相で止めてくるし、練兵の訓練してる時なんかは普段の雰囲気なんか封印!って感じで、めっちゃ真剣な顔。笑顔なんて少しもない。
だけど、フェリシアが帰ってきてからは少しだけ変わったような気がするんだよね。何つーか、…雰囲気が今まで以上に柔らかくなったような感じ?それと彼女に向ける笑顔が、普段よりも優し気だ。本当に大切で愛おしいんだろうな、っていうのがよくわかる。笑顔だけじゃない、眼差しだってすげぇ優しいんだぜ?
「今だって幸せそうに笑ってる」
「そうでないと僕達は怒るぞ」
「…そう、そうだよな。あの2人には幸せになってほしいよなー」
詳しくは聞いてないけど、付き合うまでと結婚するまで色々あったらしいし?その末に手に入れた今の生活なんだろうから、ヴォルフの言う通り、幸せな顔してくんないとダメだって思うんだ。特にコンラッドはさ、結構他人優先の性格してるし、欲も薄い気がしてるし。…そんな彼が唯一求めたのが、きっとフェリシアなんだろ?だったらさ、もっともっと笑って幸せだーって言ってもらわなきゃ。
「コンラートも義姉上も、お互いが傍にいる時が一番綺麗に笑うんだ」
「あ、何だ、ヴォルフも気が付いてたの?」
「ずっと傍で見ていたんだ、そのくらいわかって当然だろう」
「そーだよなぁ…俺よりもずっと長く2人のこと見てきてんだもんな」
そのまま仲良さそうに寄り添って歩く2人の姿を眺めていたら、ヴォルフがボソリと「僕は2人が付き合うのも、結婚するのも反対だった」って爆弾発言しやがった。あんまりにも驚いて思いっきりでっかい声で叫んじまって、それは中庭を歩いていたコンラッドとフェリシアにも聞こえていたらしい。それ所じゃない俺は、びっくりした表情でこっちを見上げている2人の姿を見ることはなかったんだけど。
って、今はそっちよりヴォルフの爆弾発言を問い質す方が先!何だよ反対だった、って!大事なお兄ちゃんが愛する人と出会ったっていうのに、何でそれを反対する必要があるんだ?!むしろ大歓迎、心から祝福するべきことなんじゃねぇのかよっ!…それに今じゃあんなにフェリシアに懐いてるのに、反対する要素なさそうなんですけど。
ガクガク揺さぶりながら一気に問いかけてみれば、答えるから落ち着けー!と怒られた。そしてちょっと酔ったらしい、そんなに強く揺すったつもりはないんだけどなー船に弱いヴォルフだから仕方ねーのかな?
「で?何で反対だったんだよ」
「…お前も知ってるだろう、コンラートが人間との混血だということを」
「うん、知ってるけど………えっまさか反対の理由ってそれ?!」
「そうだ。義姉上は純血魔族で、十貴族の家系に生まれている!本来ならば混血であるアイツと結婚どころか、付き合うことすら認められないんだぞ」
つーまーり!ヴォルフは相手がフェリシアだから、ではなく、コンラッドが人間と魔族の混血だから反対したかったってことか…おいおい、どれだけコンラッド嫌いなんだよお前。いや、今は大分友好関係を結んでくれてると思うけどさ、昔にフェリシアが怒ったこともあったみてーだし。つーか、小さい頃は次兄大好きな弟だったっつー話だし、多分心の底から嫌ってるわけじゃあないんだろう。…俺の推測でしかないけど。
俺はてっきりフェリシアを認めてないんだと思ってた、と呟けば、そんなわけないだろう!と怒られた。うん、ですよねーお前、案外フェリシア大好きだもんなー。
「義姉上は小さい頃から僕に良くしてくれていたし、大好きだった。…だからこそ、反対したかったのかもしれん」
「でも認めたんだろ?最終的に」
「認めざるを得ないだろう、両家の親が承認してしまったら」
ヴォルフも詳しいことは知らないらしいんだけど、フェリシアは自分の家族を必死に説得したらしい。コンラッドの方は愛の狩人であるツェリ様が母親だから、きっと反対すらしなかったんじゃねぇのかなぁ。むしろ、めっちゃ喜んでくれそう、それこそ当人達以上に結婚式とか張り切って仕切りそうだよね。
「…今でも嫌なのか?2人が結婚したこと」
「今は、……これで良かったと思っている。今まで以上に幸せそうな笑顔を見れているしな!」
耳を赤くしながらもふんぞり返ってそう零したヴォルフの姿に笑っていると、少し遠くから「陛下?ヴォルフ?」と慣れ親しんだ声が聞こえた。
振り向いてみると、そこにはさっきまで中庭にいたはずのコンラッドとフェリシアの姿があった。あれ?いつの間に城内に戻ってきてたんだろう?というか、走ってきたのかな?2人共、ちょっと焦ったような顔してるけど。
「何だ、そんな焦った顔して」
「中庭を散歩してたら、陛下の大きな声が聞こえたから」
「何かあったのかと思ったのですけれど、…大丈夫そうですわね」
「大きな声、…あっさっきの?!うわ、ごめんっせっかくの休みの日なのに…」
そんなに気に病まれずとも大丈夫ですよ。
クスクスと笑いながらフォローしてくれたフェリシアは、やっぱり優しいと思う。その姿にホッと胸を撫で下ろしたんだ。
「ちょうどいい頃合ですし、陛下、ヴォルフ、ご一緒にお茶でもいかが?」
「僕達も一緒に、か?」
「ええ。嫌かしら?」
「べっ別に嫌じゃ、ありません」
「俺達はお茶とお菓子を用意してきますから、陛下達は中庭に行っていてください。今日は風が気持ち良いですよ」
ではまた後で、と厨房に向かって歩き始めた2人の後ろ姿を、ヴォルフとしばらく見送ってから俺達は中庭に向かうことにした。
-8-
prev|back|next
TOP