ヒーローは遅れてやって来る


携帯が示す場所までもう少しだ、と車を走らせていた時、つけっぱなしだったイヤホンからガガッとノイズ音が聞こえた。


 side:赤井


さっきまではノイズ音どころか、何も聞こえてきていなかったはずなのに…なんだ?助手席に座っているジョディはイヤホンをつけていないらしく、じっと携帯を見て「次は右折」と道案内をしてくれている。後部座席に座っているボウヤはインカム自体持っていないのだから、気がついていなくて当然のことだろう。
もしかして、円香が連絡を取ってきたのか?だとすれば、アイツは無事だということになるが―――


「こちら赤井。―――おい、円香か?」
「えっ円香?!」


呼びかけてみても一向に返事が返ってくる様子がない。だが、可能性としては円香からの通信が一番高い…だからこうして呼びかけているのだが、何故何も答えない?チッと舌打ちをして、咥えていた煙草をギリッと噛みしめる。
ふっと一瞬、最悪のケースが頭に浮かんだ。インカムのスイッチを入れたのは、組織の奴らではないかと。だとすれば、俺の呼びかけに一切反応を示さない理由も頷ける。ならば余計に急がねばならんだろう、グッとアクセルを踏んだその瞬間だった。

―――くたばれ、ジン。

愛しい女の声と、耳をつんざくような爆発音が聞こえてきたのは。
さすがに耳を疑いたくなったよ、爆発音が聞こえたということは…俺達が今向かっている場所が、爆破されたということになる。円香が無事なのかはわからない。最悪、アイツはもうすでに命を落としている可能性だってあるのだから。
イヤホンから聞こえた爆発音は同乗していた2人にも微かに聞こえていたらしく、顔が青褪めている。


「嘘でしょ、円香…?!」
「落ち着け、ジョディ。現場に着いてみない限り、まだわからん」
「そうだけどっ!」


今にも叫び出しそうなジョディを制し、可能な限り飛ばし―――辿り着いたのは、火の手が上がっている廃工場。考えたくはないが、やはりアイツは…グッと拳を握り込んだ時、ボウヤが「あっ!」と大声を上げ走り出した。何事だ、と追いかければ、そこには血だまりの中に倒れている円香の姿。
脈と呼吸を確認すれば、まだ生きているのがわかった。急いで病院に連れて行けば助かる可能性はある…この状態だったら、救急車を呼ぶより直接連れて行ってしまった方が早いかもしれんな。意識を失っている彼女を横抱きにし、ジョディに近くの病院に電話するように指示を出した。


「もう少し―――踏ん張れよ。円香」


上司である俺より先に死ぬなど、許しはしない。コイツを失って堪るか。
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