二度目まして


新しく就任した魔王陛下の非常時の護衛として、同じ諜報員であるヨザと共に船に乗り込んでいたんだが…まぁ、物の見事に面倒事に巻き込まれました。
というか、新魔王陛下の魔力はとんでもなく、あの、…悪趣味、だよな。うん。確かに此処は人間の領域だから、魔族に従う要素なんてほとんどないに等しい。私も魔族で魔力があるが…この辺りでは使えないことの方が多いんだ。だけどあの方は骨を使役して、賊を懲らしめることに成功した。結果的に魔族だとバレてしまって閉じ込められてはいるけれど。


「よし、これで脱出用の船は大丈夫だな」
「おう。見張りも誤魔化してくれるみてーだし、次はメシを届けに行かねーと」
「そうだな。きっと何も食べていないんだろうし」


厨房から失敬してきた夕食を届けに、彼らが閉じ込められている場所まで行ったらヨザがものすっごい勢いでドアを開けやがった。しかも気が抜けるような掛け声と共に。
何でそうお前は緊張感とか、そういうものが欠落してるんだ…ああもう、思いっきり開けたからヴォルフが吹っ飛んでるじゃないか。あとで怒鳴られても私は庇ったりしないからな、自分でどうにかしろよ?


「お待たせっ豪華夕メシよん」
「…何でグリ江ちゃん口調なんだ…ああ、良かった。お目覚めになられたんですね、陛下」
「大事に至らず何よりです。これは他の客と同じ献立ですが、お口にあいますかどうか…」


膝をついて顔を覗き込めば、焦ったような表情に変わりどうして陛下だってバレてるのか、って慌てだした。魔族だってバレてるのは恐らくコンに聞いたのだろうな。しかし、…何というか、とても可愛い反応をする人だなぁ。
笑っては失礼なんだろうが、さっきの慌てぶりが可愛くて面白くてクスクスと笑いが漏れてしまう。ヨザに至っては遠慮なく大笑いして、更には陛下の背中をバンバン叩いてるし…つーか、お前の力で叩いたら陛下は痛いんじゃないか?そして私以上に失礼な態度だな、相変わらず。
まぁ、案の定…ヨザはコンに失礼だぞ、と咎められているけれど、彼の顔に剣呑さは一切ない。本気で怒ってはいない、ということだ。若干、苦笑気味のようにも見えるけどな。


「それに陛下、オレ達のこと忘れててつれないんだもーん」
「え………て……ああーーーっ!!ミス・上腕二頭筋とミステリアスな美丈夫?!」
「ご名答ーうっ」
「私の方までわかるとは…驚きました」
「でも何で男性と女性に…っ」
「オレは元々男でルノアーナは女っ男装と女装は仕事上の都合ってね!」


事実、そうなんだが…常々、それをする理由があるのか疑問だ。私とコンビを組んでいるんだし、ただ変装をするだけで済むんじゃないか?わざわざ性別を偽らないでも。その方が背的にも違和感ないと思うんだけどなぁ。コイツが考えていることは、時々よくわからん。
そっと溜息をついていると、陛下が私とコンがヨザを何かしてたとか言ってるが…どういうことだ?確かに私達は子供の頃から一緒で、仲はいいと思うけどね。


「ま…また姉弟とか?」
「違いますよ、幼なじみです。ヨザは片親が人間、ルナは純血魔族だけど色々事情があって子供の頃、同じ場所で育ったんです」
「隊も同じだったから、生死も共にした仲ですね」
「彼の名前はグリエ・ヨザック、彼女の名前はウェラー・ルノアーナ。非常時の護衛としてシルドクラウトからずっとついていたんですよ」
「よろしこー」
「よろしくお願いしますね」


この後、ヨザが裸の付き合いをしただの息子さんを拝んだだの言い出すもんだから、ヴォルフが怒り始めて大変だったのは…また別の話だ。
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