いざコンテスト!!〜準備編


珍しく生徒会に呼ばれている、と遅れて執行部の部室にやって来たかずちゃんはえらく不機嫌な顔。彼女は喜怒哀楽がハッキリしてるし、執行部のまとめ役でもあるからこんな顔をしてるのは少なくないんだけど…今回の不機嫌さは尋常じゃなさそうだなぁ。
生徒会に何か面倒なことでも頼まれたんだろうか。いや、アッチが私達にする頼みごとはいつだって面倒なことばかりなんだけどさ。
まぁそれはともかく、ひとまずこの誰も近づけない程に不機嫌なかずちゃんをどうにかしないとなー…と、ポッキーを齧りながら考えていたら、怖いもの知らずなときとーが声をかけていた。うん、さすがときとーだよね。
イライラMAX、不機嫌さも微塵も隠さないまま彼女は持っていた書類の束をバンッと机の上に置いた。というか、投げつけたって方が正しいかもしんないけど。

「…『全校男装&女装コンテスト』………何コレ」
「文字通りよ。今度の文化祭で開くんですって、新聞部と写真部の合同企画ってことらしいわ」
「うーわ、これ生徒会に通ったのかよ…何考えてんだ」
「でも面白そうではあるんじゃない?それで、桂木ちゃんの不機嫌な理由とこの企画の繋がりは?」
「それが―――…」

かずちゃんの話によると、生徒会が彼女を呼び出したのは我ら執行部から1人、男装もしくは女装コンテストに出場してほしいって依頼だったみたい。+コンテスト中の警備。でもどっちかってーと、出場依頼の方が本題に聞こえたってかずちゃんはブツブツ文句言ってるけどね。
まぁ、警備に関しては依頼されなくたって文化祭中は交代制で校内を巡回するのが決定事項だったけど…それとは別にコンテスト会場に張りつけ、ってことなのかしらね。でもたかがコンテストでしょ?執行部が会場に張りつくようなことが起きるとは思えないんだけどなぁ。そっちより別のとこで他校生徒とのケンカとか起きそうな気がするけど。
ボソリ、と疑問を口にすれば、ずいぶん前に同じような企画が行われたらしいんだけど、グランプリに選ばれた人が追いかけられて大変だったんだと。
あー…そりゃ会場に張りつけ、って依頼がきてもおかしくはないか。でもさ、そんな前例があるんなら最初っからそんな企画案を通さなきゃいいだけの話でしょうが。そうすれば出場依頼、なんて面倒なことも回ってこなかったはずなのに。

「奏の言うことは尤もだけどね、まぁ…人寄せにはバッチリなんでしょう。こういう企画って」
「わかんねぇでもねーけど、…誰が出んの?」
「女装ならときとーか藤原が似合いそうじゃない?」
「げっ…やめろよ小鳥遊!!」
「そうですよ!何で俺が女装なんか…!」

そんなの君が一番女顔だから。モテると思うよー、男に。

「時任の女装も似合いそうだけどー…俺としては、お前の男装。見てみたいけどね?カナ」
「………へ?私?」
「確かに小鳥遊は男装が似合いそうですね」
「松原クン…君まで何言っちゃってるのかな!」

嫌だ、って言ってんのに執行部のメンバーはどんどん話を勝手に進めていき、最終的には私が男装コンテストに出場することで決定した。コイツら…あとで覚えておけよ、この野郎…!
唯一の助け綱だったかずちゃんさえも大きな瞳をキラキラさせて、似合いそうね!とか言ってくるもんだから断り切れなかったんだもの。誠人くん、ときとー、かずちゃんのお願いには弱いみたいなのよね?私。
その中でも断トツに弱いのがかずちゃんだ。可愛い女の子のお願いとあらば、断るのが憚られるんだもの。…それがどんなに嫌なことでもね。
これが藤原からの頼みだったら殴ってでも断るけどね。死んでもイヤ。

「小鳥遊先輩の男装…確かに似合いそうですよね」
「顔が笑ってるわよ藤原。…アンタのことだから恥をかけばいい、とか思ってんでしょーけど…出るからには優勝するに決まってんでしょ」

私を誰だと思ってんのよ。
んべ、と舌を出して勝ち誇った顔を浮かべてやれば、ぐっと悔しそうな顔をして押し黙った。ふん、アンタの考えてることなんてお見通しなのよこっちは。
恥をかいて誠人くんに嫌われてしまえば、とかそんなこと考えてもいたんだろうけど、そう簡単にあの子は渡さないし藤原に興味を持つとも思えない。そこに関しては根拠はないけど自信があるんだから!
…とは言ったものの、どうしようかなー。服は何とか出来るけど、この長い髪がものすごく邪魔だ。バッサリ切っちゃうのも1つの手だろうけど、たかがコンテストの為だけにそれをするのは癪、とても癪だ。
この長さは案外気に入ってるし、梳きはしても長さを変えることはあまりしたくないのです。

「かずちゃん、髪の毛ってどうしたらいいと思う?」
「そうね、…あ、奏って確かキャスケット持ってたわよね」

彼女に言われて部屋の中にある小物類を頭の中で1つ1つ思い浮かべれば、確かにキャスケットを持っていたような気がする。そういえばかずちゃんと出かける時に何度かかぶっていったことがあったっけ。小さなバッジもついていてお気に入りの帽子。
あ、そうか。そのキャスケットの中に髪の毛を仕舞い込んでしまえばいいのか。

「少しだけサイドを出してあげるとカッコイイかもね。髪のセットは私がやってあげる」
「ほんと?じゃあお願いしちゃおっかな」
「でも服はどーすんだ?小鳥遊、割と可愛い感じの服が多いだろ」
「興味本位で買ってほとんど着てない服がクローゼットの奥に眠ってるから、それ着てみようかなぁって」

似合うかどうかはわかんないけど、と付け足せば、かずちゃんが見てあげるから持ってきたら?と言ってくれました。でもあの服を学校で着るのはさすがに勇気いるよ…!

「んじゃ、桂木ちゃんウチ来れば?そしたらカナも嫌じゃないっしょ?」
「うん、それなら…でもいいの?呼んでも」
「別に問題ないよ。時任もいい?」
「おー、別にいいぜ」
「…だって、かずちゃん」
「2人がいいなら週末にお邪魔するわ」





同居人の2人の許可が出たので、その週末。私は初めてかずちゃんを自宅へと招待することになりました。
あらかじめクローゼットから引っ張り出してベッドに広げておいた服をかずちゃんに見てもらうと、カッコイイ!絶対似合うわよ!!と絶賛されたのだけど。え、その反応は嬉しいんだけど着る前からそんなに絶賛されるのはすっごく怖いんだけど。
やだよ、着てみたらイメージと違った、ってがっかりされんの。
私が微妙な顔をしているといいから着てみなさい、と急かされるし。いや、でも、うん…着ないと始まらないよね、さすがに。
女の子同士だし、とそのまま目の前で着替えを始めると、じーっと見上げていたかずちゃんがボソッと相変わらず細いわよねと呟いた。そんなしみじみと呟かれても私困っちゃうんだけどなぁ…そう言うこの子だって細いんだけどね?何でだかわかんないけど、体育で着替えてる時とか時々、さっきみたいにボソリと呟かれるんだ。その度にじーっと見られるの、結構恥ずかしいんですけどね。
まぁ、かずちゃん相手なら全然構わないんだけど。

「ん、こんな感じ。ど?」
「奏がそういう格好してるの初めて見たけど、似合う…!」
「ほんと?男に見えそう?」
「今は髪がそのままだから女の子だけど、それさえどうにかしちゃえば見える!そこらの男より絶対カッコイイと思うわ!」
「…かずちゃん褒めすぎ…でも嬉しい、かも?」

物は試し、ということでキャスケットも引っ張り出してきて髪を帽子の中に仕舞い込んでみたら…うん、案外イケるかもしんない。コレ。靴もゴツいブーツを持ってるからそれを履けばオールオッケー、かな?
衣裳や髪形も決まって一安心なんだけど、新聞部と写真部の男装&女装コンテストって…何かやらされそうな気がしてちょっと怖いなぁ。変なこと、させられないといいんだけど。
-2-
prevbacknext
TOP