いざコンテスト!!〜本番編
時が経つのは早いもので。あっという間に文化祭当日、です。
コンテストは午後からだから午前中は皆と一緒に校内を巡回してるんだけど、まぁ文化祭って学生にとってお祭りだからさー羽目を外す輩が多くなるんだよね。普段以上に。なので、いつもはかずちゃんとコンビを組んでる私だけど今日はおちゃらけコンビ(かずちゃん命名)の誠人くん、ときとーと3人で行動中。
別に彼女と2人でもイケると思うんだけど、他校の生徒も来てるから男女で組んだ方が安全!って言われちゃったもんだからさぁ。
んー…でもこの2人と組むと勝手に公務執行してくれるから楽できていーかも。かずちゃんと組むのも好きなんだけどね、楽しいから。
「小鳥遊、お前もちったぁ働けよっ!」
「働け、って言われても…私が動く前に君らが動いてんだもん。出番ないでしょーよ」
「う…」
「ま、いーんでないの?時任。コイツは午後のコンテストに出るんだし、怪我したら大変っしょ?」
「あ、そっか。コンテスト出るんだっけ」
おうよ。執行部メンバー全員の推薦でね!ものすごく不本意だけどね!!
そのおかげ、と言うのは悔しい部分もあるけど、私はコンテスト中の警備からは外してもらいました。その代わりに会場の警備を担当するのが誠人くんとときとーとかずちゃん。他のメンバーは午前と変わらず、交代で校内を巡回するんだって。…とは言っても、大半の生徒やお客さんが会場に集まってきちゃいそうだけどね。どうやら前評判がかなり高いらしいから、この男装&女装コンテスト。
何て言うか…皆、物好きだよね。男装と女装なんか見て何が楽しいんだか。
「見てみたい、って言っちゃった手前、こんなこと言うのもアレだけどさ、よく承諾したね」
「断らせない雰囲気醸し出してたのはソッチの方じゃん。イヤだ、って散々言ったわよ」
「メンバー全員の推薦だもんな」
「ときとーもそのうちの1人でしょ、共犯じゃない」
いつの間にか買ってきてくれたアメリカンドッグに噛り付きながらそうぼやけば、2人してちゃんと応援行くからって宥められた。うん、それは嬉しいけど応援も何も、警備で最初っから最後まで会場にいるでしょーがアンタ達。つーか、これなら本当にときとーを女装コンテストにゴリ押ししておけば良かったなぁ…そしたら仲間が出来たのに。
まぁここまできたら腹括ってちゃんと出るけどね。そして優勝狙ってくるけどね。
あー、でもほんと本番で何させられるんだろ。ただ男装して、観客に選んでもらうってわけじゃなさそうなんだよなー。
それだけなら特に心配することもないんだけど、…新聞部と写真部の合同企画でしょ?写真部はともかく、新聞部は何か企んでるような気がして仕方ないんだよね。だっていつだって校内新聞のネタを探して走り回ってるくらいだしさ。
そもそもこんな企画案出したのだってネタになるから、だよね。確実に。当事者じゃなければ面白そう、と思えたかもしんないけど…いざ当事者になっちゃうとね…完全に何してくれてんだこの野郎になっちゃうから人間って怖い。
「あっ奏、見つけた!」
「かずちゃん?どったの」
「そろそろ準備を始めなきゃいけない時間だから捜してたのよ」
「ああ、もうすぐ昼だもんね。俺らも軽く昼飯食べて会場の体育館行かないと」
「だなー、面倒だけど」
「じゃあ久保田くん、時任。私は先に行ってるからちゃんと来てよね!」
「へーへー。わかってるっつの。小鳥遊、頑張れよー」
若干、投げやりチックなときとーの言葉に片手を上げて答えてその場を後にした。
かずちゃんに連れられてやって来たのは、コンテスト出場者の控室。…と言っても、体育館の更衣室なんだけどね。部活とか授業で使われてる。着替え中の人がいると大変だからそっと扉を開ければ、意外と人が集まっててびっくり。来るの早いんだなぁ、皆。
エントリーしたものの、他の参加者には興味がなかったから誰がいるのかとか知らなかったんだけど、…演劇部でよく男役をやってる子とか、女バスのエースの子とか、女生徒に人気が高いって有名な子達が勢揃いしていた。わー、これはすっごいわ…圧巻。
でもそうか。男装コンテストだもんね、どっちかっつーとカッコいい感じの子が出るに決まってるか。ってことは、女装コンテストには中性的な…美人な男の子達が集まってる、というわけかなぁ。
まず出場者がちゃんと集まってるのかどうかが気になることだけど。かずちゃん曰く、出場者はちゃんとポスター掲示されてたらしいんだけどね?私、案の定見てません。見てたら男装コンテストの出場者も知ってるっつの。
「…ねーかずちゃん。コレ、私がいても浮くだけじゃない?」
「そう?私からすれば、アンタが一番カッコいいと思うけどね」
「いやん、かずちゃんってばおっとこまえー」
「茶化さないの!ほら、髪の毛やるからちゃっちゃと着替えてちょうだい」
彼女の言葉にはーい、と返事をして着ていた制服を脱いで、持ってきた服に着替える。結んでいた髪も解いてからかずちゃんが用意してくれた椅子に腰かければ、彼女は手際良く私の長い髪をキャスケットで隠せるように1つに纏めていく。
うーん、普段はポニーテールにすることが多いけど、今回みたいにお団子にするっていうのもなかなかいいかもしれない。慣れるまでは上手くできないかもしんないけど、でも慣れちゃえばこっちのが邪魔にならないかも…特に公務執行中は。ポニーテールもいいんだけどさ、時々先っちょが人にぶつかっちゃうみたいだし。
髪の毛って案外、当たると痛いんだよね〜よくときとーに文句言われたもん。どうにかしろ、って。切る以外にどうにかする方法なんてないけどねー。
「よっし、完成!うん、やっぱりカッコいいわよ奏」
「そ?かずちゃんにそう言ってもらえるなら。私それだけでいいかな〜」
「何言ってんのよ、せっかく出るんなら優勝してきなさい」
「そーしたいとこだけど、何させられるのかわかんないし…純粋に投票のみだったら、頑張りようないもん」
「投票のみってことはないと思うわよ?何かしらアピールタイムはあるでしょ、確実に」
あ、やっぱりそう思う?
ですよねー、投票だけってことは絶対に有り得ないよねぇ。だって事前にこの格好の写真を張り出してたわけでもないし。
「そろそろ男装コンテストをスタートさせますんで、出場者でない人は出てってくださいねー」
時計を見てみればもうすぐ13時。そういえばコンテストは13時スタートとか言ってた気がする。今の今まで忘れてたけど。ってことはかずちゃんと一緒にいられるのはここまでか…ま、仕方ないわよね。それに彼女は会場の警備もしなきゃいけないんだし、ずっと私の傍にいてもらうわけにもいかないか。残念ではあるけど、ね。
そんな彼女は控室を出て行く前に私の首に何かをかけていきました。一体、何をかけていったのかと思い首元を見てみれば、シンプルだけどカッコいいメンズアクセサリーが2つ揺れていた。うわ、あの子ってばいつの間にこんな小道具用意してたんだろ?
それもチョーカーとシルバーアクセとか、もうカッコいいとしか言いようがないじゃん。シンプルなデザインだからあんまり目立たないし。そういえばアクセサリーとか、そういう小道具は一切考えてなかったな…彼女の機転に感謝だね。
かずちゃんのさり気ない行為にじーんと感動していると、時間になったらしく体育館の舞台袖まで移動。
袖にいてもすこーしだけ体育館内の様子が見えるんだけど、予想以上に人が集まってんだけど…ほぼ全校生徒が集まってんじゃないの?コレ。+外部のお客さんもちらほらいるっぽいかな…私服の人とか、他校の制服着てる人も見えるし。…さすがにこれは緊張、してきたかも。
『では出場者の方々に入場してきて頂きましょう!』
スタッフらしき人にどうぞ、と促されてステージに出てみれば一気に黄色い歓声に包まれた。わぁお、ただ男装しただけの女の子の集団なのにこんな歓声上げられちゃうものなの?ちょっとびっくりしたよ。
…あ、そうだ。誠人くん達はどの辺にいるのかなー………あ、いた。ずいぶんと後ろの方にいるんだな、もっと前の方にいるのかと思ってたけど。でもまぁ、あっちの方が全体を見渡しやすいのかも。本当なら上から見るのが一番いいんだろうけど、けどいざ何か起きた時にすぐ対処できなくなっちゃうもんな。下にいた方が都合がいいか。
まぁ、そんな執行部事情は置いておくとして。肝心のコンテストが始まったわけなんだけど、自己紹介と衣裳チェックが終わり…もう投票に移るのかな、とぼんやりと思ってたんだけども。司会の人の爆弾発言に目ん玉ひんむきました。
何を言ったのかといいますと、…「観客の女生徒相手に愛を囁け(ハート)」だってよ。
なんっじゃそりゃ!!!まず女の子が女の子相手に愛を囁いてどうすんの?!需要あんの?!って叫びそうになったけど、男相手に愛を囁く絵面を想像して…あ、そっちのが需要なさそうだ、と思い直した。此処、元は男子校だったからそれもそれでアリかもしんないけどさ。
ああもう、何かやらされるかもーとは思ってたけど、こんな斜め上で攻めてくるとは思わなんだ。いや、企画的には盛り上がるだろうし、面白いとは思うけどね。というか、もうエントリーナンバー1番の人がやってるけど、女の子の黄色い歓声も男の野太い歓声もすっごい上がってます。…何で男が歓声上げてんの。
そうこうしているうちに私の番、のようです。
『では、エントリーナンバー10番の小鳥遊さん、いってみましょうか!』
「…愛を囁けば、何してもアリ?」
『アリです!おー、これは期待できそうですねぇ!!』
主催者側が用意したと思われる女の子に近づき、私よりも少し下にある顔をクイッと持ち上げれば、大きな瞳が驚きで更に大きくなったような気がする。
あ、この子可愛いなー年下かなー?同学年ではないよね、見たことないもん。こんな可愛い子なら本気で口説いてみてもいいかなー、なんて思っちゃうんだけど。
今にもキスしてしまいそうな距離ギリギリまで顔を近づけてみると、至る所から歓声らしき声が聞こえるし目の前にいる女の子も顔がほんのり赤く染まってる。
「ね、君のことが好きなんだけど…俺にしない?」
「ッ、!」
女の子が一瞬息を飲んだかと思えば、今までで一番なんじゃないかってくらいのでかさの歓声が体育館いっぱいに響き渡った。段々、その声にも慣れてきたのか私は驚くこともなく逆に内心でニヤリ、と笑みを浮かべているくらい。
だって今までの誰よりも大きい歓声が上がったんだよ?もしかしたら本当に優勝できるかも、って思ったら笑みを浮かべたくもなるでしょ!
「ごめんね、びっくりしたでしょ?…でも協力ありがと」
「い、いいえ…!」
『おーっと、今までで一番の歓声を頂きましたー!さすが男女問わず、人気の高い小鳥遊さんだー!!』
え?そうなの?って、司会の人の言葉に首を傾げそうになった。だってそんなのよくわかんないもん、特に自分のことだし。一緒にいる誠人くんやときとーが人気あるのは知ってるけど(女の子に、ね)。ま、そんなのどーでもいいけどさー然程、興味がないし。
その後も順調に愛を囁いていく出場者達。うん、それぞれ個性あって面白いなぁ…でも出場者15人分の告白を受けてるあの子、大変そうだなとも思うわけで。でもどこか慣れてるような感じも見受けられるから、もしかしたら演劇部所属とかなのかもしれません。
自分の番が終わったらホッとしてしまったのかボケッとそんなことを考えていたら、いつの間にか全員のアピールタイム?が終了していたらしく、優勝者を決める審議に入ってました。
うわ、気が付かなかったよ…。優勝者は見に来てた生徒や外部のお客さんからの投票+審査員による審議によって決められるんだそうな。
しばらく時間がかかるので、私達は一度控室に戻ることになりました。ま、あそこにいても仕方ないしねー。とは言っても、することなくて暇なんだけど…どうせならかずちゃんや誠人くん、ときとーのとこにいたかったんだけどなぁ。
戻れ、と言われてしまったら逆らうわけにもいかないし。…いや、普段ならバリバリ逆らってたと思うけどさ。暇だなぁ、とボーッとしてたら、突然扉が開いてかずちゃんがひょっこりと顔を出した。
「どうしたの?何か緊急事態?」
「違うわよ、奏の様子見に来たの。…それと、2人も連れてきてるわよ」
控室から顔を覗かせてみれば、外にいたのは誠人くんとときとー。来てくれたのは嬉しいんだけど、…会場の警備は放っておいていいわけ?3人揃ってこっちに来ちゃったら、会場で何かあっても対処できないじゃないの。
素朴な疑問を投げかけてみれば、どうやら他のメンバーもコンテストを見に来ていたらしく、今は相浦くん達が3人に代わって警備をしてくれてるんだって。まぁ、それなら安心かな。多分、誠人くんとときとーの2人がいた方がもっと安心だとは思うけど…問題はないか。他のメンバーだって強いんだし。
「近くで見るとちゃんと小鳥遊だってわかるけど、遠目で見るとマジで男だった」
「…喜んでいいのかわかんないけど、一応お礼言っとく。ありがと」
「桂木ちゃんも言ってたけど、そこらの男より断然カッコイイね。びっくりした」
「あの告白のシーンも見てるこっちがドキドキしちゃったわ」
「相手の子が決まってなかったらかずちゃん相手にしたかったんだけどね」
「…やめてよ、目の前でされたら私卒倒できる自信ある」
誠人くん達と話している間に審議は終了したらしく、いよいよ結果発表らしいです。
3人と別れ、私は再びステージ上へ。
『厳正なる審査の結果!男装コンテストの優勝者は…エントリーナンバー10番の小鳥遊奏さんに決定致しましたーーー!!!』
「…あら」
まさか本当に優勝しちゃうとは思わなかったなぁ。でもやっぱり、嬉しいかも。
だけど、この時の私は想像もしていなかったんです。コンテストが終了した後、男女関係なく追っかけ回されることになるなんて。
(なんっで男装してたのに男に追いかけられる羽目になんのよー!!)
(いやあ、それはアレでしょ。此処が去年まで男子校だったから)
(…お前、そのうち抱かれたいランキング1位とか取りそうだよな…)
(ときとーやめてマジでやめて)