予感的中


ここ最近、小鳥遊の様子がおかしい。…ような気がする。くぼちゃんもそのことに気が付いてたみたいで何かあったのか、って聞いたみたいだけど、笑ってはぐらかされたって言ってた。何でもないから大丈夫、って。
アイツは俺と一緒で自由奔放なとこがあるけど、でも周りには気を遣えるタイプで誰かに迷惑をかけることを一番嫌うんだ。それに隠すのが上手いから、ちょっとした変化じゃ俺は気が付かないことが多いんだよな。くぼちゃんは割と気が付いてるみてーだけど。だから小鳥遊も、くぼちゃんには敵わないって前に笑いながら言ってた。
でも今回は俺が気がついちまうほどに顔に出てるし、参ってるように見える。参ってるっつーか、…何かに怯えてる感じっつーの?そんな感じなんだよなぁ…笑顔もぎこちねーし。
…ああそうだ、俺が小鳥遊に初めて会った時の笑顔に似てんだ。全部飲み込んで、笑顔で隠そうとしてる―――見てるのが辛くなる笑顔。





「あれ?久保田くん、時任、奏は?」
「何か調子悪いみたいでさ、保健室行った」
「大丈夫なの?最近、ずっと元気ないみたいだけど」
「…桂木ちゃんも気が付いてたの?」

くぼちゃんがひどく驚いた顔で桂木を凝視している。そういや俺がコイツに小鳥遊のことを聞いた時も気が付いてたんだ、って驚いてたな。
今まではアイツの異変に気が付いてたのくぼちゃんだけだったから、ってのもあんだろーけど…ちょっとした嫉妬っつーか、独占欲もあんだろーなぁ。こう見えて、くぼちゃんは小鳥遊にベタ惚れらしーからさ。
それにしても小鳥遊の奴、本当に大丈夫なんかな?大丈夫だ、って笑っちゃいたけど顔色すげー悪かったし。あんまり寝てねーみたいだし、食欲も落ちてる。あんなに好きだった菓子も全然食わなくなったもん。

「…なー、くぼちゃん」
「んー?なによ時任」
「俺さ、すっげー嫌な予感すんだけど」

俺の縁起でもない言葉に桂木はあからさまに狼狽えて、くぼちゃんはいつもの何を考えてんのかわかんない糸目のままだ。でもコイツが纏ってる雰囲気が氷みてーに冷たくなったような感じはあるから、きっと俺と同じこと考えてるような気がすんだ。

俺達は、アイツがあそこまで参っちまう原因を、体調を崩す程に怯えちまう原因を―――知ってるから。

何も知らない桂木は狼狽えてるものの、ワケがわからないって顔してる。
でもどうすっかな、…小鳥遊に聞いても何も答えてくんねーのは目に見えてんだ。けど、アイツに聞く以外に今の状況を把握する手段はねーんだよなぁ。

「桂木ちゃん、ケータイ借りてもいい?」
「え?ええ、いいけど…はい」
「ありがと」

ケータイを借りたくぼちゃんは財布ん中から紙切れを取り出したかと思えば、それを見ながらどこかへ電話をかけ始めた。一体、誰にかけてんだろ?
そのままアイツは廊下に出て誰かと何かを話し始めたから、電話の相手が誰かはわからずじまい。でもまぁ、きっと小鳥遊関連の知り合いだとは思うけどな。さっきの話の流れから、それ以外は考えらんねーもんよ。つーか、それ以外の知り合いに電話かけてたらそれはそれで何だよ、って話になるしな。

「どこに電話をかけてるのかしら、久保田くん」
「さーな。小鳥遊関連だとは思うけど…あとで話してくれんじゃねーの?」
「…ねぇ、奏ってばどうしちゃったの?」
「俺達にもわかんね。くぼちゃんが聞いてみても何にも言ってくんねーし」

机にぐでーっと乗っかりながらそう告げれば、だから拗ねてんのねってクスクス笑う声が頭上から聞こえた。
その声の主は桂木以外に存在しないんだけど、…ってそんなのはどうでもよくて!俺が、この俺様が拗ねてる…?!

「んなわけねーだろっ!」
「でもずっとイライラしてるじゃない。久保田くんも少し、落ち着かない感じよね」
「…よくわかんな、桂木」
「アンタはわかりやすいもの。彼は―――何を考えてるのか、さっぱりだからなんとなーくだけどね」

だよなー俺だってくぼちゃんが何考えてんのか、全部わかるわけじゃねーし。そりゃ相棒ですから?ある程度は予想できるし、わかる時の方が多いけど。わかりやすい時だってあるしな。…他の奴らからすれば、どこが?!って感じらしいけど。
そのままボーッと桂木と待っていれば、数分してくぼちゃんが教室に戻ってきた。かと思えば、俺と桂木にだけ聞こえる声で保健室行くよ、と一言。説明も何もないまま、俺達はダッシュで保健室へと向かうことになったのだけど。…つーか、くぼちゃんがこんなに焦ってるように見えるってことは、小鳥遊に何かあったってことなのか?
桂木も何となく察したみてーで若干、青ざめてる。コイツ、小鳥遊と仲良くていつも一緒にいるもんな…何かあったのかもしれない、って考えるだけでそりゃ心配にもなるか。

「五十嵐先生、奏いる?」
「あら、久保田くん。小鳥遊さんならさっき、親族だって人が迎えに来て帰ったわよ?」
「え?奏、帰っちゃったんですか?カバン置いたまま?」
「…くぼちゃん」
「うん、確実…だね。桂木ちゃんも行くよ」
「え?あ、うん!失礼しました!」

俺達の嫌な予感的中ってやつか?いまだに現状が把握できてねー桂木にはあとでちゃんと説明するとして、ひとまず小鳥遊の行方を追わねーと!
…あれ?でもどうやって追うんだ?アイツの場所を知る手立てなんて、俺持ってねーよな?

「くぼちゃんっどうやって小鳥遊のいる場所探るんだよ?」
「んー?コ・レ。」
「ちょっと久保田くん…それって、」
「ご察しの通り、発信機ってやつだぁね」

おいおいおい…!くぼちゃん、いつの間にそんなもんアイツに仕込んでんだよ!!本人にバレたらぜってー怒るぞ?それも烈火の如く。俺、知らねーかんな?フォローも一切しねーかんな?!
つーか、相棒でもさすがにこの変態っぽいのは頂けねぇ。どういう目的でんなもん仕込んだんだ、って話じゃん?それに一緒に住んでんだから、そんなもん必要ねーじゃんよ。昔のことがあるから、なるべく1人で外に出させねぇようにしてたんだし。
…あ、友達と出かける時に調べてたのか?何処にいるのか、って。ヤベーそれってストーカーじゃんか!いくら付き合っててもそれはダメだろ!!

「ちょっと時任?お前、変なこと考えてるっしょ」
「え、」
「言っておくけど、これはカナも了承してるから。それに普段は起動させてないから」
「でも何でそんなのつけてもらってるわけ?」
「ちょっと昔に、ね。俺達の口からは言ってあげらんないけど」

とりあえず、場所がわかんならさっさと向かわねーとだよな。
俺達は学校を抜け出して、発信機が示す場所を目指して走り出した。
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