私のはつこい
先生に恋をするなんて、と思っていたのに。ナントカ先生ってカッコイイよね、と話す子達をバカじゃないのと思っていたのに…人生って、何が起きるかわからないって本当だと思う。
今の高校に入学したのは去年の春。そう、入学してもう1年が経ったのです。特別この学校に入学したい理由があったわけじゃないけど、家からそこそこ近くて、それでいて私の学力でも問題なさそうな学校だったので選んだ感じ…なんだけど、今となっては此処を選んで正解だったなぁと心底思うわけですよ。
まぁ、その理由が至って捻じ曲がったアレだなーって自分でも思うけど。その理由というのが、…
「お前ら席に着け!HR始めんぞー」
ああ、今日もカッコイイなぁ…片倉先生。
そう、そうなんです!私が今、この学校を選んでよかったなぁと思うのは担任である片倉先生が好きだからなんだ。好きっていっても、頼りになる先生だからーとかそういう好きではなくて、ドキドキする方の好き。所謂、恋愛感情ってやつです。
中学生の頃はね?先生を好きになる子って何を考えてるんだろ、とか思ってたんだ。いくら若くてイケメンな先生でも、私達にとっても先生にとってもさそれ以上でもそれ以下でもないわけでしょう?ただの先生と生徒だもん、恋心を抱くなんて無駄じゃんって思ってたの。
…なーのーに、今の私は片倉先生に恋をしているのです。面白い方に私の人生は転んだな、ってまるで他人事のように思ってる部分もあるけど。
「紗代、そんなにじーっと見ていると注意されるぞ」
「え、私、そんなに見てた?」
「はあ…お前、毎日その調子だぞ」
「うっそ…あんまり見ないようにしてるのになぁ」
そう言う私にかすがちゃんは呆れた表情で、それでか?と溜息をついた。だって本当に見ないように気を付けてるんだから仕方ないじゃない。…彼女からしたらあくまでつもり、なんだろうけど。
相手は先生だから多少、視線を送っていたとしても特に深い意味があるとは思われないと思っているんだけれど…かすがちゃん曰く、私の視線は他の子達とまるで違う、らしい。他の子達がメモを取っている間でも、私は先生を見つめてしまっていることも多々あるらしく…そんなことを繰り返していると注意されるぞ、と彼女は忠告してくれたみたいです。
先生に私の気持ちがバレてしまうのはとても困るけど、でもなーHRや授業中しか先生を見ていることって出来ないじゃない?職員室に入り浸るわけにもいかないし、ストーカーよろしく校内中を追いかけるわけにもいかないんだし。だから今のこの時間!たっぷり見ておかなくちゃ、とも思うんだよね。そうするとあっつい視線を送ることになって、結局本末転倒になっちゃうけど。
「紗代殿は本当に片倉殿に憧れているのでござるなぁ」
「まーあの人、強面だけどよく見てくれてるし面倒見いいもんね。今時、あんな先生珍しいんじゃないの?」
「さっちゃんが片倉先生のこと褒めるなんて珍しい」
「その言い方失礼だよ、慶ちゃん…」
HRが終われば私とかすがちゃんの周りにはいつものメンバーが集まってきた。クラスメートの猿飛くんに真田くんに前田くん。
私達が通う学校はクラス替えというものがなくて、1年の時のメンバーで3年間を過ごすというちょっとだけ変わった所なんだ。もちろんそれで文句を言う生徒も少なくないけど、でも私は仲良くなった子と離れずに済むから割と気に入ってる制度だったりする。あ、担任の先生は毎年変わるけどねー去年は美人な孫市先生でした。それで今年は片倉先生が担任、というわけ。
そんな先生に私が恋心を抱くきっかけになったのは、何と入学式の日…だったのです。あの日は母親と一緒に行く予定だったんだけど、急な仕事が入っちゃって入学式に来れなくなっちゃったから私1人で学校まで行くことになったんだ。
でもね、私、極度の方向音痴で…何とか学校に着くことは出来たんだけど、すでに遅刻ギリギリで。しかもこの学校、すんごく広くて教室までの道のりもわかんなくて半分途方にくれてしまったのです。
『…おい、お前新入生か?』
高校生にもなって泣きそうになってたら、不意に声をかけられて。迷っていた私にとっては救世主だったんだけど、でも声はひっくいし何だか威圧的だしそんでもって強面だし!…で、第一印象は怖いとしかなかったんだよなぁ。
怯えとかそういうもので上手く話せなかった私を見兼ねたのかどうかはわかんないんだけど、先生は少しだけ屈んで泣きそうな私の頭を撫でてくれたの。今思えば、思いっきり子供扱いされてる気がしないでもないんだけど…でもその時はそれが何でだか嬉しくて、ホッとした記憶がある。
それで教室まで案内してもらってる間に段々落ち着いてきて、隣を歩く先生の横顔にときめいたのです!
「(何でときめいたのかは覚えてないんだけど、…太陽の光に照らされた先生の顔がとってもカッコ良かったんだよなぁ)」
それからよく目で追うようになって、徐々に好きだなぁって思い始めた。で、今に至るわけだ。
あー、でもこうやって思い返してみるとものすごく単純だな。
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