鮮やかに


全てを諦めている瞳が嫌いだった。全てをひた隠しにする仮面が嫌いだった。
へらへらと笑って、その下に本音を隠す生き方が嫌いだった。

そんな時―――アイツの本音を聞いた。

闇に堕ちることが、狂ってしまうことが怖いと泣き叫んだあの日。
俺は、コイツをどんなことがあっても護ると決めた。傍にいて、ずっと護っていくと決めたんだ。
何よりも、愛しい存在だと気がついたから。

本当に楽しそうに笑うようになったアイツを見れて、ガラにもなく嬉しいと思った。死にかけたアイツの姿を見て、ガラにもなく怖くなった。
また―――大切な者を失ってしまうのか、と。
護ると決めたはずだったのに、いつだって…護られていたのは、俺達の方だった。
そして…アイツは、静かにこの世を去った。



走馬灯のように頭の中を駆け巡る光景、情景、会話。
さっきまではそれが何なのか全くわからなかったはずなのに、今はわかる。何かが弾けたように、全てを思い出した。
琥珀色の瞳をした小僧も、翡翠色の瞳をした姫も、金髪碧眼のへらい魔術師も、よくわからねぇ生き物の白まんじゅうも、そして、もう一度会いたいと願う緋月も、名前も、容姿も、声も、今まで何をしていたのかも…全て。


「俺は、今まで一体何を……」


記憶は取り戻した。だが、今いるこの世界が何なのかまでは…わからねぇ。
確かに此処は白鷺城で間違いねぇが、俺達は日本国へ移動した記憶は全くねぇぞ。
俺達がいたのは……そう、小さな町だ。露天商が立ち並ぶ、何の変哲もない町に移動して、いつものように情報を集めようとしていたはず。

―――…主は、探し物があるな?とても、とても大切な…愛しい探し物じゃ

…そうだ。町で会った、あの怪しい奴。
そいつと話をしているうちに、意識が遠くなって……そこから先は、真っ暗な闇ん中を漂っているような、そんな感覚だった。
んで、今までのことを全部思い出した途端、視界がハッキリとしたんだよな。
ということは、全ての元凶は―――あの怪しい老人か。


「…見た所、此処に来てんのは俺だけか」


へらい魔術師、小僧、白まんじゅうはどうやらこっちには来ていねぇらしい。つまり、これは探し物をしていた俺だけを取り込んだ…所謂、術ってことになるんだろうな。
生憎、俺にはそういう類の力は一切ねぇ。そういうのは小僧かへらい魔術師の仕事だからな。
術自体を解くことは出来ねぇだろうが、出る方法が全くねぇってことはないはずだ。
何かしら、打開策は残っている。やってみねぇとわからねぇよな。


「何が目的なのかは知らねぇが…とっとと出てやる」


ずっと此処にいても何も始まらねぇ。
俺は此処から出る術を探す為に、部屋の外へと足を向けた。





「ほう…全てを思い出したか。愉快、愉快。さぁ、汝の叶えたい願い…若造の叶えたい願い。どちらが強いかのう?」


ヒヒッ主等は、どんな結末を選ぶ―――?
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