「…なぁ、香ちゃん」
「はい、何ですか?悟浄くん」
「なんか歌ってよ」
「ええ?ずいぶんとざっくりですね…何をご所望?」
「んー………じゃあさ、好きな相手を想ってなんか歌って?」
同じ部屋にいるから、香鈴と悟浄の会話は自然と耳に入ってきてしまう。
別に2人も内緒話をしているわけじゃないから、僕が聞いていてもさして問題はないと思うんだけど…それでも。今の悟浄の言葉はどうしても聞いてはいけなかった、―――いや、聞きたくなかった言葉だ。
好きな相手、だなんて。
僕は彼女を好きだけれど、あの子は恋愛に興味がないように思えて。それにいつだって一番近くにいるのは僕達だったから安心していた部分もあったのかもしれない、香鈴は―――誰にも恋心を抱いていない、って。
だからこそ、悟浄の言葉にドキッとしたし聞きたくないって思ったんでしょう。さっきのは僕の推測でしかなくて、本当は恋愛に興味があるのかもしれない。誰かに恋心を抱いているのかもしれない。…そう思うと、今にも部屋から逃げ出してしまいたくなる。
悟浄の言葉に少し考える素振りを見せて、彼女が紡いだのは…とても、哀しい曲だった。メロディも、歌詞も、切なくて泣いてしまいそうな、そんな曲。もっと明るい曲を歌うのだろう、と勝手に思っていたから驚いてしまいました。
それは彼も同じだったようで、綺麗な声で歌を紡ぐ香鈴を驚いた瞳で見つめている。
「…こんな感じでいかが?」
「すっげぇ綺麗な歌だったけど、…切なくねぇ?」
「あら、貴方が言ったんじゃない。好きな相手を想って歌ってくれ、って」
恋愛って楽しいばかりではないでしょう?
そう言って笑った彼女の笑みが、ずっと脳裏にこびりついて離れないんだ―――。
ごじょさんと夢主の会話+八戒さん。
彼女の恋愛観にちょっと触れてみたり。