始める為の終焉


「なかなか面白いものを見せてもらったけど、…でも壊れちゃったか」


残念だねぇ、ウサギちゃん。君はなかなか面白い存在だったけど、でも…ボクのおもちゃでいたかったのなら、所有物でいたかったのなら―――ちょっとイラナイものを持ちすぎだったかもね。

ヒュウ、と喉を鳴らし壊れかけてしまっているウサギ―――紋那を見下ろし、人知れず口角を上げた。でもまぁ、この子の暴走のおかげでいいデータが取れたわけだし?悪いことではなかったかもね、少なくともボクにとっては。
虚ろだった少女の瞳はボクの姿を映し出すと、僅かに光を取り戻した。おや、もう無理だと思ってたけど…なかなかに根性あるじゃない。さすがはボクの興味を引いたオモチャだね。


「は、かせ……」
「んー?なぁに、ウサギちゃん」
「なんか、…すごいねむいの。なんでかなぁ」
「それはきっと、君の身体が死へ向かってるからじゃないのかなぁ」


生憎、ボクは死んだことがないから本当かどうかはわからないけど…身体の機能が止まりかけてるんだろうし、それを眠くなってきたと勘違いしたとしてもあながち間違いじゃないんだろう。ボクの持論を語れば紋那はそっか、とだけ言葉を返し、浅い呼吸を繰り返している。…ああ、もう少しかな。
もう限界なのだろうが、震える手がボクに向かって伸びている。ボクが少しでもこの子に愛着があったとすれば、その手を掴んであげていたんだろうけど…ごめんね、生憎そういう気持ちは持ち合わせてないんだ。
興味は引かれたし、退屈せずにすんだけどね?君を拾って育てたこの数年間は。…だけど、それも今日で終わりだ。


「博士、…わたし、博士が大好きだったよ」
「うん、知ってるよ」
「あなたの隣はだれ、にも…わたさないんだから、博士は…」


わたしのものなんだから。
それは初めてに近い彼女の独占欲。人形のように従順だった彼女の、自我だ。


「おやすみ、ウサギちゃん」


ボクがそう言ったのと同時に、彼女の身体は砂のように散っていった。
うーん、思ったより早くにゲームオーバーになっちゃったかな?まぁ、ボクに好意を抱いてるのがわかった時点でこうなるかもしれないとは予測していたんだけど。…でもちょっとだけ、賭けてみたくなっちゃったんだよね。
あの子が新しいウサギちゃんを生かしたままボクの元へ連れてくるのか、それとも自分の心に正直に彼女を殺そうとするのか―――あわよくば、連れてきてくれないかなぁって考えてたけど、ま、自我が芽生えたばかりの子供じゃあ難しいか。あの子の世界はボクを中心に回ってる、だからこそ…こういう結果になってしまったわけだ。


「さぁて、新しいゲームの準備は済んでるし…今度は君自身で遊ばせてもらおうかなぁ」


…ね?美しい銀髪の歌姫、香鈴ちゃん。
-7-
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