※性行為の描写があります。


「いいですか?これで最後、見納めですよ。明日からはコスプレになっちゃうんですから」
「気付いてないようだが、その台詞は今日だけでもう五度目なんだぜ。いちいち聞かされるぼくの立場にもなってみろ」
「数えてたんですか」
「君が、あんまりうるさいから」
「そりゃあ、うるさくもなりますよ。だって露伴先生、あなた私のこと好きでしょう?」
「……それはまあそうだが、そういう言い方をされるのは気に入らない」
「この際だから聞きますけど、正直に答えてくださいね」
「失礼な、ぼくはいつだって正直だろ」
「露伴先生は、女子高生の、私、好きですよね?」

ここで大人気なくキレてしまわなかったことは、我ながら褒められてもいい。何を繰り返し繰り返しオウムのように言うかと思えば、そんな疑惑が彼女の中にあったとはちっとも知らなかった。いつからだ、この女、いつからぼくのことをそういう「性癖」の持ち主だと思い込んでいたんだ。

高校の卒業式が無事に終わったと胸に花をあしらったまま、締め切り明けのぼくに報告してきたのは今日の夕方だ。ちょうど仕事も終わったし、御祝いに用意していたケーキを二人で食べながら、これまでの話やこれからの話を和やかにしていた時だった。明日からコスプレだと言われ、とりあえずとスケッチをして写真を何枚か撮ってやった。それでも気持ちはおさまらないのか、繰り返し繰り返し口にするから、おかしいこれは何かがあると思ってはいた。結果がこの、馬鹿げた疑惑だったというわけだ。

「君は、この岸辺露伴にそういうフェチがあって、付き合っていると、そう言いたいのか?」
「まあ……無くはないのかなと思って」
「言っておくが、ぼくが君を女子高生だと意識するのなんて、二人で外を歩いてる最中にパトカーとすれ違った時くらいだ」
「へええ、そうですか」

ニヤリ、彼女は悪そうな笑みを浮かべた。表情はそのままに立ち上がり、座ったぼくの前に仁王立ちした。何やらイヤな予感がする。紅茶の入ったカップをソッとテーブルの真ん中へと避難させた。それが見えていないのか、ぼくの膝の上に躊躇なく腰を下ろす。膝を跨るように脚を広げたせいで、スカートが捲り上がっている。首の後ろに手を回され、逃げられないぼくを正面から見据えて「せんせい」と舌ったらずに呼んだと思うと、突然顔を近づけてくる。唇をほんの少し尖らせれば触れてしまうくらいの距離で、彼女はケーキを食べたばかりの甘い吐息を吐き出した。

「でもこんな風にせんせいって呼ばれるの、好きでしょ?」
「いつの間にこんなこと、覚えたんだ? 悪い生徒には、お仕置きしないとな」

君が煽ったんだからな、大人らしくない言い訳を押し込んで噛み付くように唇を合わせる。角度を変えて深くなるキスに溺れるように、どちらも呼吸が乱れていく。そのまま制服の隙間に手を滑り込ませて、下着を外してやろうと背中に手を回すが、背中を拘束しているはずのホックが見当たらない。手で探ってみると、外されたベルトは彼女の腰の方目掛けてだらりと垂れ下がっていた。いつの間に外したんだ、と思いながら、おそらくカップのみで胸に引っかかっているブラジャーを引き抜く。いまだに続くキスの途中で、彼女が笑った気がした。

「誘うの、ずいぶん上手くなったじゃあないか。誰に教わったんだ?」
「ふふ、いじわるな露伴先生も好きよ」
「…………今日はベッドになんか、連れてってやらないからな」

夕日が差し込む明るいこの部屋で、存分に女子高生の君を味わうとしよう。膝を開き、無理やり脚を広げさせる。スカートの下に両手を差し込むのを、彼女は期待を込めた目で見つめている。すでに濡れ切っているだろう箇所には触れないで、パンツを脚から脱がせてやる。下着をつけずに制服を着ている女子高生の彼女が自分の上に跨っていて、興奮しない男がいるだろうか。もしいるなら見てみたい。

「せんせい、はやくさわって」

我慢出来ないのか、上気した顔でスカートをたくし上げる彼女の顔に、自分でも笑ってしまうほど欲情してしまう。もはや少しも余裕なんてないのに、なんとか自制して彼女の秘部にそっと触れた。ぼくの膝の上で乱れる様は想像よりもうんとエロくて、なんというかほんとうにたまらない。校章を隠すように胸に咲く生花をくしゃりと握り潰して、手に付いた花弁を彼女の頭に振りかける。きっと君は、快感を身体で受け止めるのに精一杯で気が付かないだろうが。

「今日の君はなんていうか綺麗だよ、すごく」
「……あ、そんな、っ言い方」
「君はぼくだけのものだ、なまえ」

卒業なんかさせてやるもんか。指だけで果てたのか身を縮こませて痙攣する彼女を見ながら、ズボンのジッパーを下ろし彼女を強く抱き寄せた。胸の花が撒き散らす、むせ返るような香りに包まれながら、ぼくは君の名前を呼ぶ。まるで解けない魔法をかけるように、何度も。


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