今日は推しのイベントである。この日のために配布アイテムも貯め込んだ。魔法のカードでチャージもした。報酬の推しの確保を目指し開始同時にログイン。スタートダッシュである程度の波に乗って、イベント最終日にブーストかけて一気に駆け上がる作戦だ。
「忙しそうですね」
ソファーで寛いでいる伏黒にうん。と返しミッションを終わらせる。後はランキング順位をキープするだけだ。
伏黒も伏黒で本を読んだり携帯を弄ったりしている。一緒にいるけれど個々で好きな事をするこの空間が好きだ。
そういえば今日は別ゲーの双子の誕生日だった。誕生日ボイスを聞かなければ、と休憩で手放した机の上のスマホに手を伸ばした。
「終わったんじゃないんですか」
少し不貞腐れたような声が背後からする。
「とある双子の誕生日を祝おうと思って」
スマホのロックを解除した途端に背後からずしりと重みが襲ってきた。頭頂部に顎を乗せられ地味に痛い。
「推しばっかり。たまには俺も構ってください」
珍しい姿に罪悪感とときめきが、一気に押し寄せる。ごめん。なにこの子可愛い。
「充電させて」
今度は肩に重みを感じる。少し掠れた声がダイレクトに響く。ぎゅうぎゅうと強めに抱き締める腕を撫でた。
「ごめんね。せっかくだし何かしよう。恵の好きな事でもさ」
今度は伏黒がうん。とだけ返した。推しに夢中になっていた事に反省する。伏黒が落ち着くまで大人しくしていよう。そしたら存分に可愛がろうと計画を立てる。
「これから俺も推しを愛でます」
気づいた時には目の前に広がる伏黒の顔と天井。あっという間の出来事に脳内処理が追い付かない。首筋のちくりとする痛みにはっとする。
「ちょっと待って」
「もう待ちません」
ログイン画面のまま放置されていたスマホはぷつりとブラックアウトした。
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