「愛してるよ。毎晩君を食べる夢を見るんだ。きっと君は美味しいだろうね。夢の中の僕は君を食べた後に必ず果てるんだ。そのくらい美味な君を今から食べると思うと、それだけでもう我慢ができないよ」
この興奮状態の男を止める事は出来るのだろうか。急に前に飛び出してきたと思えば、長々と愛の言葉を注がれる。相当歪んでいる事しか理解できない。
「君と僕は一つになれる。このうえない幸せだね。永遠に一緒に居られる」
限界だ。気持ちが悪い。こんな奴に殺されると思うと発狂しそうだ。死んだら呪ってやる。末代まで呪ってやる。
「食べたいくらいに可愛いってのは分かるけど、本当に食べるってのはどうかと思うよ」
久しぶりに感じた幼なじみの存在に心が震える。
「いきなり何だ。僕達の時間を邪魔しないでおくれ」
汚い雄叫びを上げ襲いかかる男を、五条はいとも簡単にかわし打ち負かした。
「送ってく」
たった一言、けれどそれが凄く安堵した。
恐怖体験をしたはずなのに、それが霞むほどに昔話に花を咲かせる。たまにおちゃらけて笑わせるあたりが、五条の優しさなのだろう。
「あのさ、僕達付き合おうか」
予想もしていなかった言葉が、思いももよらぬタイミングで襲い息を飲む。確か昔、恋をしていた。初恋は実らないと言うし、身の丈が合わない事も後々自覚した。
いい男になって再び現れた幼馴染みの言葉に戸惑う。
久々に感じる懐かしく心地よい感覚を壊したくない。幼馴染みの肩書きもなくなれば一生関わる事も無いだろう。それはとても惜しい。
「幼馴染みの関係を壊すということは、責任を取る覚悟がおありかな」
「もちろん。一生をかけて」
子供の時から変わらず美しい顔が色気を纏って近付いてくる。少し照れ臭く凝視できずに、ぎゅっと目を閉じた。
初めて味わう唇の感触に目眩を覚えた。
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