「君は悪くないよ。悪いのは僕だ。君を好きになった僕が悪いんだ」

会う度に悲しそうに微笑む顔に胸が痛い。
長年付き合っている彼氏が居る。何度も別れようと思った。けれど、私が居ないと彼は生きていけないのではないかと思い留まる。もう何年もこの繰り返しだ。周りにはそれはもう情だと言われた。きっとそうだ。それでも一緒に居てしまうのだ。

大きな優しい手に撫でられる。心も身体も満たされ気持ちいい。こんな風に甘えられる相手は彼氏ではない。五条悟なのだ。

「自分を責めないで。悪いのは僕だから」

頭を撫でていた手がするりと頬に滑って撫でられる。この肌の感覚に凄く落ち着いた。親指が唇をなぞり顎下へと移動する。軽く上へ押し上げられ綺麗な顔と目が合った。

「目、閉じて」

降ってきた唇の柔らかさに胸が苦しく涙が溢れた。目の前の相手が好きなのに、私は彼氏を見捨てられない。厄介なしがらみに囚われている。

「凄く勇気がいる事だから急がないで。ゆっくりでいい。待ってるよ」

お休みと手を振りながら遠くなる背中を見送った。

「おかえり」

いつもなら部屋で寝ているはずの彼氏の出迎えに戸惑った。ぎゅっと抱き締めて甘えて来るこの仕草に胃が痛くなる。瞳の奥のぎらついた欲を感じて、さらに身体が強張った。

「何で濡れないかなぁ。もういいよ」

この言葉に罪悪感を感じる私は、まだ毒されているのだろう。何もかも疲れた。彼の為に頑張って来たつもりだった。私が年上だからしっかりしなきゃと。金銭面も、大人の余裕も、何もかも無理していたのが馬鹿らしい。たった一言言えたなら楽になるはずなのに。やはり胸の辺りで止まって言い出せない。

ちゃんとけじめをつけなければならない。このままでいいわけがない。無理にでも行動を起こさなければ私は一生ずるずる引きずるのが目に見えている。

明日の夜大事な話があります。予定を空けていて下さい。
机の上にメモを残してベッドに入った。もちろん寝れるわけもなく。確かに愛してた期間の感謝の言葉と別れの言葉に一晩中頭を悩ませた。





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