友達だと思っていた奴が突然居なくなった。理由は知らない。何も言わずに転校してしまった。あのお嬢様かぶれは今現在どうしてるのか。再開したら一発ケリを入れてやろうか。もちろん手加減はする。

「マイキーは女つくんねぇの?」

深い意味など無く、龍宮寺堅はただ単に気になった。ケンカも強ければ顔もいい。寄ってくる女はごまんと居る。

「アイツ何してんのかな」

思い出にふけるように遠くを見つめる万次郎に、龍宮寺は激しく興味が湧いた。自分の知らない顔をさせるアイツとやらに、少し嫉妬してしまいそうだ。



「あ、エロ本みっけ」

名前と万次郎は一緒に下校することが多かった。と言っても万次郎が名前を待ち伏せしているので仕方なく一緒に帰っていた。

「拾わないでよ。それよりもマイキー、18禁って言葉知ってる?」

「知らね。すげぇボイン!」

はぁ。と呆れた顔をして名前は歩き出した。こうなった万次郎は夢中になるので放って置くのが吉。全部読み終われば走って追い掛けてくるのだろう。

「あ、名前っ!」

案の定、置き去りをくらった万次郎は全速力でこちらへ向かってくる。振り向かなくても分かる。きっと無邪気な笑顔をしている。

「やっぱさ、女は乳がデカくないとな」

「乳は大きさがが全てじゃない。どんな乳にも夢と希望が詰まってる。触り心地と感度だよ」

俺はデカイ方がいいと譲らない万次郎に、大人になったら分かるよと言えば鼻で笑われた。
意味わかんねぇと嘆く万次郎に、名前は不貞腐れると分かって言った。

「坊やだからさ」



思い出話を楽しそうにする万次郎に、いつの間にか龍宮寺も夢中になっていた。
良いところのお嬢様だと言い張る名前の後を付ければ名字組にたどり着いた話、新人の女王様はバラ鞭から始まり、一人前になってからが一本鞭になる話など、他にも珍妙な事件の思い出話に花を咲かせた。

「んで、お願いしまくったらやってくれたんだけど…」

万次郎は中腰に屈み、右手を龍宮寺へ差し出した。

「お控えなすって」

急な万次郎の行動に龍宮寺は意味がわからず、ただ立ち尽くした。

「さっそくのお控え、ありがとうござんす」

初めて見る光景に、龍宮寺はあんぐりとしたまた万次郎を見詰める。それを気にする事もなく、万次郎は続けた。

「手前、生国と発しまするは東京の生まれ、姓は佐野、名は万次郎、人呼んでマイキーと…」

堪えきれずに二人は噴き出した。
万次郎は意地でもお嬢様を貫こうとする名前が仁義を切るのを思い出し、龍宮寺は会った事は無いが話に聞く、とんでもお嬢様がコレをしたのを想像し二人はゲラゲラと笑い転げた。

「会ってみてぇな。ソイツ」

「今度見かけたらとっ捕まえてケンチンに紹介する」

きっと名前ならケンチンとも仲良くなるだろう。けれど、2人が仲良くなり過ぎるのは癪に触る。紹介する前にちゃんと俺のものだと言っておこう。なんて考えて万次郎は笑った。



へくしゅん。

「お、風邪か?」

花粉症の時期でもなければ、風邪でもない。名前を急に襲った一発のくしゃみに、兄の政宗は顔をしかめた。

「誰か噂してるのかも」

「お前の友達が噂してるんじゃねーの。アイツ何も言わずに消えやがったって」

「縁があればまたどこかで会えるよ」

本当にお前は小学生か。なんて笑う政宗に一応ねとだけ言って笑った。


この数年後、悪事に手を染め過ぎた政宗の兄が原因で名字組は壊滅。政宗と名前はたった二人の家族となった。


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