どうしてこうなった。連れ込まれたラブホテルのベッドで名前は天を仰いだ。
先にシャワー浴びるねと消えていった年上の女はまだ戻ってこない。明日から高校生活が始まるというのに。
バイト先も無事に決まり日用品の買い出し中に名前はお姉様に声をかけられた。まさか自分だとは思わずシルバーアクセサリーを夢中で見ているとグイッと腕を引かれ女の存在に気がついた。

「お姉さんが買ってあげる」

「本当に?お姉さん何か裏がある?」

それとなく遠慮したのだがあれよこれよと似合う物を見繕われ会計済み。シンプルな紙袋に包まれたアクセサリーは名前の手へと渡された。本音を言うと欲しかった。裏があると分かっていても嬉しかった。

話を聞くだけで良いとの事だったが、そんな事あるわけがない。バスルームのドアの開く音に遅かれ早かれ経験する事だったのだと名前は腹を括った。

「お待たせ」

バスローブのみを纏った女はきっとそのつもりなんだろう。綺麗なお姉さんで筆下ろしかと考えながら名前もシャワーへ向かおうと立ち上がった。

「じゃあ、僕も…」

急に身体に衝撃が襲ってきたと思えばベッドの上に転がっていた。自分の上に跨るお姉様を見て、押し倒された事を理解した。

「君はそのままでいいよ」

楽しそうに綺麗に微笑む女の瞳の奥にギラギラとした欲を感じた。このまま食べられちゃうんだ僕。この身体どうなるんだろう。挿れるってどんな感じだろうと考えていると、名前はズボンまで脱がされていた。

「可愛いパンツ履いてるんだね」

なぜか笑われた。気に入って買ったボクサーパンツを。興奮してるの?とふわりと股間に手が伸びてきたが、分からない。多分勃ってはいないだろう。ウエストのゴムに女の指がかかる。結構焦らすタイプかと考えていると、ずるりとそれが下された。

「は…」

それっきり何も発しない女を見ると名前の股間を凝視したままである。そこまでガン見されると流石に恥ずかしくなる。気まずくなった名前は女の髪にそっと触れた。

「でっか…」

ですよね。名前もそれは思ったのだ。トイレに行って驚いたのだ。立派な物をお持ちでと。



真新しいブレザーの制服は何だかんだ似合っているのかもしれない。初体験と引き換えに手に入れたシルバーのピアスは両の耳できらりと輝いた。

「よし、行くか」

懐かしい感覚である。相変わらず長い校長先生のお言葉は耳にも入らず、あくびを噛み殺す者やヒソヒソと仲間内で話す者、こくりこくりと船を漕ぐ者で様々だ。窓の外の桜が風に揺れて舞うのが儚くて綺麗だとしばらく見入っていると、新入生代表の挨拶が始まった。この学校も首席が挨拶をするのだろうかと考えながらも桜から目を離さないでいると、女生徒の興奮した声が耳に入った。

「降谷くんヤバくない?」

「ヤバいイケメン」

なんとなくその会話が気になり、桜ではなく壇上の彼へと視線を向けた。
確かに女生徒が騒ぐのも分かる。ミルクティーカラーの綺麗な髪は輝き、褐色の肌は健康的で身体つきも良い。堂々と挨拶する姿がとても魅力的だ。
原稿を読んでいるはずだが前を向いている時間の方が長い。頭に入っているのだろう。凄いなこの人なんて思っていたが、こちらを見た気がした。こんな大勢いる中で目が合うわけがない。気のせいだろうと再び桜に目をやる。しばらくして壇上を見ると、またもや目が合った。これは気のせいではない。
締め付けないゆったりしたシルエットを好む名前は、かっちりきっちり制服を着る事はなく適度に着崩していた。校則はほどほど守れば良いの考えだ。今日という日くらいはテンプレスタイルが良かったかと少し後悔したが、楽しむと決めたのだ。そこは気にしないでおこう。
だって左斜め前は大型犬のリードみたいなチェーンを首に下げてリーゼントだし。

名前はまた窓の外へと視線を戻した。




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