「名字くん、お弁当作ってきたからあげる」

今日もいつものように3人で昼飯を取ろうとしていると1人の女生徒が話しかけてきた。彼女は先日、名字が弁当を褒めていた子だ。

「いいの?ありがとう。お返ししないといけないね」

女生徒の席に向かう名字の姿をヒロと黙って見ていた。女生徒は頬を赤く染め名字にお返しの交渉した。

「名字くんの写メ撮りたい」

「そんなんでいいの?一緒に撮る?」

一緒に撮りやすいように横に移動する名字に女生徒はすぐさま答えた。

「名字くんだけの写メがいい」

数秒思考停止はしたが名字はいいよと快諾した。リクエストにも応えると言っていたが、女生徒はかっこいい名字くんが撮りたいとしか言わなかった。

「いくよ?3、2、1…」

カウンドダウンが減っていくと共に真顔になった名字はパシャとシャッターのタイミングでアイドルさながらの顔をキメて見せた。挑発するように舌を出し、色気を含んだ表情に撮影していた女生徒は息を飲んだ。

「ごめんね。ふざけちゃった。負担になるからお弁当は今回だけ受け取るね。ありがとう」

ぽんぽんと女生徒の頭を撫でて、机に置かれた弁当をそっと握りこちらへ戻ってきた。その間女生徒は携帯を胸に抱いたまま放心しているのが見える。

「弁当もらったー」

持ってきたおにぎりは夜ご飯にしよう。なんて呑気に言う名字の言葉より骨抜きにされた女生徒が気になってしまった。



「名字くん、この前サービスありがと。サンプルのトリートメント凄くいい」

休み時間、隣のクラスの女生徒が教室に顔を出した。目的は名字だった。どうやらバイト先に買い物に来たらしく、名字がサービスをしたらしい。

「ほんと?触っていい?」

ストレートのロングヘアをするりと撫で、くるくると毛先を指に絡ませ堪能している。

「さらさらだね」

にっこりと笑顔で返すが女生徒は照れたようにそっぽを向いた。耳が赤いのが少し離れたこちからも見て分かる。

「友達の誕生日プレゼントサービスで可愛くラッピングしてくれるし、サンプルたくさんくれるし、トリートメント今度買いに行くから!」

早口で告げた女生徒は逃げる様に自分のクラスへと帰っていった。もう行っちゃうの?待ってるね。なんて言ってるが彼女はそれどころじゃないだろう。

「名前ってモテるんだな」

焼きそばパンを齧りながらヒロは呟いた。女にもだが、名字は同性にも好かれていると思う。人たらしがしっくりくる気がすると思う。

自分たち以外にも話す生徒は居るらしく、たまに他の男子生徒と話している事もある。その時は下ネタの話をしていた様な気がするが…。聞き間違いでなければ名字はおっぱいがなんやかんや言っていたと思う。
誰とでも分け隔てなく接しているし、面倒見もいい気がする。恥ずかしくて購入できないと嘆く男子生徒に後日、ドラッグストアの紙袋を渡し、がっつくなよと言っているのを見た事もある。

「名字はモテるな。性別問わず」

いつの間にか戻った名字は自分の横に座っていた。弁当を広げてウインナーを掴んでいる。

「降谷と諸伏はイケメンだからモテるんだろうな。女子がほっとかないと思う。あ、いつも2人だから近寄り難いのか」

よく焼けていると言いながら咀嚼する名字に、ヒロと顔を見合わせて笑った。
名字は何も分かってはいない。

降谷零、諸伏景光、名字名前イケメントリオと有名になるのはもう少し先の話である。


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