「ねえ、これ誰のローブか分かる?」

その日の夕食後、談話室で私はアリシアとアンジェリーナにあのローブを見せながら尋ねた。

「えっ、どうしたのよ?」
「いや、廊下に落ちてた」
「グリフィンドールの紋章が入ってるってことは、私たちと同じ寮よね?」
「ええ、そうね」

うーん、と私と一緒になって考えてくれる2人。

「サイズを見ると、私たちと同い年ぐらいじゃないかしら?」

アンジェリーナが立って、ローブを広げて自分の体に当てがいながら言った。

「あ、ほんとだ」

グリフィンドールの同級生と聞いて思い浮かべるのは、フレッドやジョージにリー、その他女友達や男友達。

「でも、もしかしたら身長の高い後輩かもしれないし、小柄な先輩かもしれないわ」

アリシアが最もなことを言った。
その通りだ。サイズだけで歳を断定することは残念ながら難しい。
またまたうーんと考え込む私たち。

「ねえクラリス、そのローブが落ちてた廊下ってどこ?」
「えっ!うーんと…」

あの屋根のことは2人にも内緒にしていたかったから、破れた天窓の近くの廊下を言う。

「じゃあ、そこにこのローブ置いとけば良いじゃない。もしかしたら探してるかもよ、落とし主の生徒が」
「あっ、そっか!」
「ええ、それが良いわ!」
「そうだね!ありがとう2人とも」

私は2人のアドバイスを受けて、翌日にまたあの屋根の上にやって来た。
もしここが廊下だったら、2人に言ったみたいに洗ったローブを置いておくだけで良かったんだと思う。
でも生憎ここは屋根の上だ。それに、本当は落としたんじゃなくて寝ている私にかけてくれたんだから、誰か知りたかったし、ちゃんと直接会ってお礼を言いたかった。

「来ないね〜」

登ってきた野良猫を撫でながら、膝の上に置いたローブの紋章に触れてみる。
朝食を食べてすぐにやって来たけど、流石にこれじゃ退屈である。私は退屈なのが苦手だ。

「ちょっと早いけどお昼にしようっと」

まだ昼食には早いけど、持参したバスケットを開く。
そこには例の如く厨房に行って作ってもらった大ぶりのバケットサンドが2つ入っていて、私は畳んだローブにパンくずが落ちないように気をつけながらかぶりつく。

「んん〜、美味しいー!」

やっぱりここの妖精たちが作るのは最高だね、なんて思いながらアイスティーを喉に流し込んだ。



◇◇◇◇◇◇



屋根の上に寝っ転がって、自分の腕を枕にしながら本を読む。
いつの間にか時間が経っていて、もうそろそろ夕暮れになろうか、という時。

「あ、」
「ん?…あれ、ジョージ?」

屋根に登ってきたのは、ジョージだった。

「なんで……って、あ、もしかして!」

私はハッとして、膝の上に畳んであったローブを手に取った。

「これをかけてくれたのは……」
「あぁ、うん…僕さ」

私の隣に座りながら、ジョージは言った。

「ジョージだったのね。ありがとう、助かったわ」
「いや、どうってことないさ」

私からローブを受取りながら、ジョージは肩を竦めた。

「ていうか、クラリスは分かるのかい?僕がジョージだって」
「え?そりゃあ分かるわよ。だって2人でいる時、貴方たちわざと似せようとしてるでしょう」
「バレてたか」

ニヤ、と笑いながらジョージは言った。

「あなたはフレッドほどおふざけじゃないよ。そうでしょ?」
「うん、まあ、そうとも言えるかな」
「…ジョージは、どうしてここが分かったの?」
「ああ、それはね」

屋根に座る位置を直しながら、ジョージは話し始めた。


夕暮れで染まった横顔



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