序章 (1/1)
もし、あの日に戻れたら。
特別なことなんかなくたっていい…ただ、平凡で穏やかな日々をおくれたらそれでよかった。
両親や双子の兄が生きていて、女学校で藤岡夫妻の娘である秋穂と出会って、親友になって、どこにでもいる普通の女の子として生きていれたのなら。
けれど…
現実は、残酷だ。
大事なものをすべて奪っていく、残酷なほどに…。
それは、二十年前ほど前のことだった。
私は、父、母、双子の兄・満との四人家族で、決して裕福とは言えないが生活には不自由ない生活を送っていた。
これからもそうだと思っていた。