★序章 (1/2)


――令和××年、七月十日。

梅雨に入り、雨と蒸し暑で悩まされるこの時期。

たとえ、梅雨が終わろうとも、今度はからっと暑さが待っている。


(今日も、暑いなぁ…。早く戻って、エアコンつけて…涼しみながらゲームをしたい)

暑さにやられながら、坂道を歩いているのは、フリーターの梓沙、外見は20歳ぐらいだがすでに20代後半のアラサー女子。

仕事を終えて一旦、家に戻ったものの…何か甘いものが食べたいと、近所のコンビニまで買い物に行っていた。

しかし…

(ガソリン代気にしすぎて、徒歩にしたけど…原付にすればよかったな)

後悔しながら坂道を歩く。

一歩でも早く家へと向かう。

大好きなゲームをするために…。


そして、ようやく家に辿り着くと――部屋に入るなり、エアコンをつける。

畳の上に、ジュースのペットボトルとポッキーを置くと、switchを取り出し電源をつける。

(よしよし、やるぞ…今日こそやるんだから)

先日、switch版で移植されたゲームを買ったのはいいものの、他のゲームをメインにしすぎてやる時間がなかなかとれずようやく、時間がとれたのだった。

Vitaで出ていた頃からやっていたゲームそれは、【剣が君】前編と後編にわかれ、前編は将軍の妹に瓜二つな主人公が偽花嫁行列をやることなり、後編は偽花嫁行列に加わっていた攻略とかかわりがとくに強くなる。

『楽しみ…』

ぽつりと、思わずつぶやきながら、梓沙

は、主人公の名前を変更する。

じぶんの名前の漢字を探し出し、決定ボタンを押す。


いよいよ、はじまる…

はずだった。


『あれ…?』

剣が君の主人公の名前変換をして、スタート開始していたはずが――何故か、時代劇に出てくるような町並みが広がっていた。

(確か、ゲームスタート開始した…はずなのに。なんでこんなところに?)

何が何だかさっぱり意味がわからない。

『もしかして、寝落ちしちゃった?だから、これは夢…?』

夢にしてははっきりした感覚。

(寝落ちは困るかも…せっかく、ゲームしてたのに!)

夢から覚めようと、思わず自分の頬をつねる。

『い、痛い!!』

つねったところから痛みが走る。

『(え…、夢じゃない?)………』

夢ではなく現実であることに、言葉を失った。

非現実的すぎると、タイムスリップなど漫画やアニメであることであって、現実で起こるはずなどない。

けれど、現実に起こっていることに戸惑っていたが、次第に、ジロジロと行き交う人々に見られていることに気が付き、すぐさま、その場から走り去る。


『はぁ…はぁ…』

人気のないところまでくると立ち止まり、荒く呼吸を吐いた。

『ふう…』

深く深呼吸し、現状の把握に取り掛かる。

(えーと、つまり…ゲームしていたけど、名前変更して決定ボタンを押したら、時代劇のような町になっていて…つもり、タイムスリップしたってことだよね?どういう原理かしらないけど)