彼は誰時

「――い、……おいっ!井吹!」

びくりと私は肩を揺らす。
あれ、私。あれ……?
今の自分の状況を把握すると共に、あわあわと慌てる。

「ご、ごめん…!」

謝りながら、そのぬくもりからそっと離れる。
あれだよ、イケメン顔がドアップにあって肩を掴まれてたら慌てるって。

「大丈夫か?」

「う、うん」

イケメン顔――土方さんに確認され、私は頷く。

「ついて来い。話がある」

その台詞にちょっとだけ、ドキッとしてしまう。
いや、わかってます。甘い話がある訳じゃないって。
見たくないけど、視界に入る赤く汚れた土。
先ほどのことが、まざまざと思い出されて、ぶるりと体が震える。
いまは、今はダメだ。
ぶんぶんと頭を振り、歩き出した土方さんを追い掛けた。

幕命、変若水だなんだという、なんだか頭が痛くなるような話。
そして、これは一部の人しか知らないことなのだとか、色々な釘を刺された。
なぜ。
どうして。
彼らは体のいい、実験体じゃないか。
粛清されるか、薬を飲むか、選ばされて、使うだけ使って狂ったら殺して、薬を改良して……。
すぐに傷が癒えるし、普通の人とは違う強さから、人間の扱いはされない。
選んでいるといっても、死にたい人間なんていないはずだ。
それならば、生きる可能性のある薬を飲むことは躊躇わないだろう。
私だって、きっと死にたくないから、薬を飲むことを選ぶ。
だけれど、いつかは理性が無くなって、人ではなくなってしまうのかもしれない。
それが分かっていても、私は飲むことを選ぶだろうか。

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