彼は誰時

「眠れないや……」

ケガをしている間は、物凄く眠くて寝ようなんて思わなくても寝れた。
なのに、もう外は真っ暗だというのに、全然眠くならない。
今は何時ぐらいなのだろうか。
多分、現代では寝る時間と考えられないような時間なんだろうな。
私はそう思いながら、布団から抜け出して、自室から出る。
少し歩いた所で、空を見上げた。

「……わぁ」

キラキラと光る星たち。
月が出ていないからか、それとも星を隠す現代の光が無いからか。

「綺麗……」

心奪われるって、こういうことをいうのだろうか。
私は縁側に座って、星空に見いる。
首が痛くなってきたころ、私はゴロンとその場に寝転んだ。

「屋根が邪魔だけど、こっちの方が見やすいや」

なんだか、星が掴めそうで手を空に伸ばしてみる。

「届く訳がないよね」

自分の行動が可笑しくて笑ってしまう。

「……どうやったら、元の世界に戻れるのかなぁ……」

ずっと口には出して無かった言葉。
それを出してしまったことで、目頭が熱くなる。
パチリと瞬きをした瞬間、水が溢れた。

「お父さん、お母さん……会いたいよ……帰りたい。元の世界に帰りたい……」

会いたい
帰りたい
さみしい
苦しい

近藤さんは優しい。
井上さんだって。
平助も仲良くしてくれてるし、原田や永倉だって兄のように優しい。
斎藤や沖田だって、なんだかんだ言っても受け入れてくれてるし、土方さんだって山南さんだってよくしてくれてると思う。
芹沢さんも時たま、不器用な優しさを見せてくれるときもあるし、平間さんだっていつも私を心配してる。
よくしてもらってるのに。
こんなに、よくしてもらってるのに。
なんで、"帰りたい"とか"さみしい"なんて思ってしまうのだろう。

こんなところになぜ、私は来てしまったのだろう。
なぜ、私は井吹龍之介という男の子なんだろう。
どうして、この時代なんだろう。

夢なら、早く覚めて。

腕を顔に乗せてギュッと目を瞑る。
ゆっくり腕を外して
恐る恐る目を開ける。

ああ。
星が瞬いてる。

目を閉じる前と変わらずに、星はそこにあって
変わらない風、空気がそこにあって
起き上がって庭に出てみる。

ざくざくと足を踏みしめる音。

「私は、ここにいる……?」

存在してる?
そっと草木に触れれば、ちゃんとした感触があって安心する。

「お父さん、お母さん……私はここにいるよ……」

実は、私が生きてきた日々の方が……

そんな考えが過り、頭を振る。

もう一度、夜空に目を向け、私は自室へ戻った。
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