続@



この薄桜学園は、今年から共学になる。
四月から二人の女子生徒が通う予定だ。
その内の一人が芹沢の娘だというのだから頭も痛くなるもの。
そう、いつも通り芹沢は無理難題を押し付けて、押し通して、男子校であった薄桜学園が今年から共学にさせられたのは記憶に新しい。
芹沢の娘だからって甘やかしたりは絶対にしない。
むしろ、もう一人の女子生徒よりも厳しくなるだろう。
今思えば、それはそいつのことを芹沢の娘としてとしか見ていなかった。
芹沢の娘だから、きっと同じなのだろうという思い込み。
他の教職員も生徒も同じように接していただろうに、あいつは…――。


「…――!―――!」

たまたま通りかかった、教材を取りにいくための道端で何やら争っているような声を拾う。
ここらは生徒も教員もあまり立ち入らない場所だったはずだがと土方は眉を寄せた。
だからこそ、そこで何をしているのか。
その声がする方へ足を向けた。



「だから金なんてないって言ってるだろうがっ!」

「芹沢の娘の癖にそんな訳ないだろ?」
「なんだったら体で払うかぁ?」
「あー!お前趣味わりぃ!」

ゲラゲラと耳につく男子生徒の笑い声が響く。
少しずつ近づいてくる男子生徒三人組に井吹はジリジリと後退りをした。

「や、やだ…!近づくな!」

「か〜わい、震えちゃってぇ」
「大丈夫だって、気持ちよくしてやるからさぁ」
「ほら、おとなしくしてれば痛いことはないよ?」

ニヤニヤと厭らしく笑う姿に青ざめる。
なんでこんな目に合わなければいけないのか。
放課後になり、よし帰ろうと廊下を歩いていたところに声をかけられた。
上履きの線の色をみるかぎり、三年生。
そんなやつらがなんの用なのか、不思議に思いながらも、のこのことあいつらの後をついていったのが悪かった。
人気のない、ほとんど使われてないだろう空き教室。
そこから人がいるだろう教室までずいぶん距離があった。
大声を出してもきっと届かない。
絶望的な気持ちになる。
でも、こいつらの好きなようにはさせられたくない。
なんとかドアから出て逃げ切れれば。
そんな気持ちとは裏腹に井吹はどんどんドアから遠くへ追い詰められていく。
一人の男子生徒に腕を捕まれたと思った途端、ぐるりと視界が回った。

「ちょっ、やめっ…!」

気付けば一人に馬乗りにされ、もう一人は井吹の足を抑えつけ、もう一人は腕を抑えつけていた。
バタバタもがくが三人に一人の力が敵うはずもなく…。

「や、やだ…」

ガタガタと震えながら、じわじわと集まる涙を見た馬乗りになっている男子生徒は井吹を見下ろしながら

「いいねぇ。もっと泣いて?色んな意味でね…?」

ニヤリと笑うと唇を奪った。

「ぅんっ!」

舌を噛んでやるっ!
いきなりねじ込まれた舌を噛んでやろうと歯に力を入れた途端

「おっと、あぶねえあぶねえ」

すんでで舌を抜かれた。

「さあ。お楽しみはこれからだぜ」
「っ!や、やだ!!」

伸ばされる手に必死に体を捻るがびくともしない。
なすすべもなく、井吹はぎゅうと目をつぶった。
誰か、誰でもいい、助けてっ!

「なにやってんだ、てめぇら」

井吹の祈りが届いたのか、ガラリと開かれたドアから誰かの底冷えするような冷たい声が落ちてきた。

「ひ、土方先生!?」
「こ、こ、これはですね!」
「なんでもないですから!」
「そ、そう!なんでもないです!」
「先生、さようなら!」

男子生徒はバッと井吹から離れると何か言われる前にそそくさと逃げ出した。
あっという間の出来事に、ぽかんとしてしまう。
逃げ出した生徒を見送った土方が舌打ちを一つ打つと井吹に目を向けた。

「あ、…ありが」
「てめえな、これ以上変な問題起こすな。芹沢さんの娘ってだけで色々言われてんだ」

井吹のお礼の言葉は、ため息と共に吐き出された土方の冷たい言葉で遮られた。
井吹は顔を伏せると唇を噛み締め、ぎゅっと手に力を込め握る。

「私、だって…!」
「ああ?」

ぼそりと何か呟いた言葉が耳に入り、土方は聞き返す。

「私だって、好きで芹沢さんの娘になった訳じゃないっ!あんたに、あんたなんかに私の気持ちなんか分かるかっ!!」

ぼろぼろと涙を流しながら井吹は叫ぶとバタバタと走り去って行った。

「……くそっ」

しばらく呆けたように立っていた土方だったが、忌々しげに土方は舌打ちをした。
ちらちらと頭に浮かぶ井吹の泣き顔を消すように。

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龍ちゃんを襲っていた男子生徒は、勿論土方先生が体裁(罰則)を与えてます。

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