夢幻
昌浩が帰ってしまう…。
同じ条件の雷がある日に。
それは、見逃してしまうほどの一瞬で、
切なく悲しげな表情をしていた。
<夢幻>
「ふう……。」
「どうしたの麻衣?」
「あ、ううん!なんでもないの!
天気予報でも見てみようか!」
「天気予報?」
「うん!」
ぽちと、テレビをつける麻衣。
「な、な、なんだこれー!?
人が四角い箱のなかに入ってるよ!
どうなってるの?ねえ、これどうなってるの?!」
興奮気味に聞いてくる昌浩。
パシパシとテレビを叩いているもっくん。
「えっとー。なんて説明したらいいんだろ……。
うーん。この箱を媒体にして情報が送られてくるって言えばいいのかな……。」
「あーうん。なんとなくわかった!玄武の鏡と同じようなもんか!」
「玄武?……よくわかんないけど、多分そうかな……?」
聞いたことのない名前に首を傾げずつ、適当なことを言う麻衣。
「玄武っていうのは、俺達の仲間だよ。
鏡で向こうの状態とか繋げることが出来るんだ。」
「へえー。そうなんだ!すごいのね!」
昌浩は嬉しそうな顔をしてにっこりとした。
その時、昌浩はハッと顔を上げ体を緊張させる。
「もっくん……。」
「ああ……。」
同じようにもっくんもキョロキョロと警戒したようにあたりを見渡す。
「どうしたの……?」
ただならぬ、二人の様子におびえる麻衣。
「あいつの気配がするんだ。」
「あいつって?」
「麻衣はここに居て!
絶対、外には出てきちゃ駄目だ!」
「昌浩!」
「大丈夫!絶対守るから!
いくよ!もっくん!」
「ああ!」
呼び止めた麻衣に心配させないように微笑むと駆けていく昌浩ともっくん。
呆然とする麻衣。
「あいつって誰よ……。」
麻衣はそう呟いて、ハッとする。
「まさか!」
昌浩に言われたことなど忘れ、後を追いかけ
勢いよく外に駆け出る。もう雨はやんでいた。
そこで目にしたものは……。
昌浩ともっくん。
そして、見たことの無いような体躯をした化け物。
「ひっ!……化け物!」
がたがたと体が震える。怖い。怖くて震えが止まらない。
「っ!麻衣!なんで出てきたんだ!」
「だって!」
必死に声を上げる麻衣。震えて体のゆうことがきかない。
「今すぐ、戻るんだ!」
そんな事、言われても足がすくんで動けない。
それを、察したかのように化け物は麻衣に向かって突進してきた。
「麻衣っ!!」
「ちっ!くそ!!」
麻衣は怖くて悲鳴もあげることが出来ない。
自分に化け物が突進してくる。
その出来事を呆然と見るだけだ。
ああ、死ぬのだ。そう思った瞬間。
「うぁあ゛ぁーー!!!」
火に呑まれる化け物。
突然麻衣の目の前に現れた、人。
「もっくん変身するの遅い!」
その言葉で、麻衣は自分の前にいる人物がもっくんだと知る。
ゆっくりと振り返るもっくん。
自分を見て、おびえた表情の麻衣にズキリと胸が痛んだ。
もう、あの自分に向けられた笑顔は見れないんだろうか……。
化け物……と言われて泣かれるのだろうか……。
「も、っくんって……。」
きゅっと唇を噛みうつ向く麻衣に、やはりと思うもっくん。
「もっくんって、人に変身できるんだぁ!すごい!!」
ぱあっと顔を輝かせて言った麻衣の言葉。
思っていた言葉とは似ても似つかなくて、もっくんは面食らう。
きらきらした目でそんな事言うもんだから、嬉しくなっちゃうじゃないか。
「くっ……おまえってやつは!」
くしゃりと、いつも昌浩に対してやるのと同じように麻衣の頭をなでる。
突然のくったくない笑顔に驚く麻衣。
顔が熱い。パシッと自分の顔をはさむ。
なにこれ?ついでに心臓もバクバクと音をたてる。
はじめて見た。あんな顔。
そりゃあ、初めて会った時は、物の怪の姿をしていたけれど。
「うぉおおおお!!」
火達磨にされていた化け物が、その火を振り払うように暴れだした。
「もっくん!」
「この姿の時は、もっくんいうな!」
また、火を放つ。化け物は身動きできないようだ。
その間に、昌浩は呪文のようなものを唱え始めた。
ゴロゴロと遠くで、雷鳴が聞こえる。
昌浩の声に反応してるのか、今夜また雨が振り出すのか麻衣にはわからなかった。
でも予感がする。今夜帰ってしまうのだろうと。
「臨める兵闘う者、皆陣破列れて前に在り!急々如律令ーーー!!」
ピシャーーン!ゴロゴロ……
「うぁあ゛ぁあ゛ーーー!!」
つんざくような雷鳴とともに術は放たれ化け物は喚きながら、すっと掻き消えた。
「やったな。」
「うん。」
「はあぁ〜。昌浩すごいねー。」
「これでも陰陽師だからな!」
「陰陽師!?」
本当に違う世界から来たんだ。
陰陽師がいた日なんてずっと昔の話……。
いや、今でもいるかもしれないけど……。
「あ…。」
声を上げる昌浩。
よく見ると体が透けてきている。
「帰っちゃうんだね……。」
寂しげに言う麻衣。
「…うん。麻衣ありがとう。」
「え…?」
「短かったけど、楽しかった。」
「私も、すごくわくわくした。ありがとう昌浩。もっくん。」
心がずきずきする。行かないでほしい…。
でも、これは私のわがままで…。
笑顔で、笑顔でさよならしなくちゃ…。
「なに、泣いてんだ。」
「あ…。」
優しく、涙をぬぐってくれたまだ人形のもっくん。
余計に涙が出ちゃうよ……。
「紅蓮……。」
「え?」
「紅蓮。今の俺の名だ。お前に呼ぶ事を許してやる」
優しく微笑むもっくん……いや、紅蓮にドキリと麻衣の胸が跳ねる。
「紅蓮…また、会えるかな?」
そんなの聞かなくてもわかってる。
でも聞きたかった。
「ああ、また会えるさ…。」
寂しそうに笑って言ってくれた紅蓮。
嘘でも、うれしくて麻衣は笑った。
「うん。そうだよ麻衣。きっと…会える。」
昌浩も頷きながら言った。
「ありがとう。」
すーっと消えていく二人に精一杯の笑顔を向けた。
「さよならは、言わないよ。」
「うん。じゃあ、またね。」
「また、ね。」
二人がその場からいなくりパラパラと雨が降りだしても麻衣は動かなかった。
涙が止まらないよ……。
紅蓮。
END
あとがき
うわぁー切ない終わり方になってしまった;
ハッピーエンドじゃないよー!
さりげなく主人公は、紅蓮に恋心が芽生えてたんです。
あれでもね。一応そうなんですよ。
叶わぬ恋ってやつですねー。
ごめんねー主人公ちゃん;
でも、書いてて楽しかったー^^
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