もしも・・・A


その人物は、そろりそろりと周りを窺いながら歩いていた。

「あら、井吹さんではありませんこと?」

井吹と呼ばれた人物は、その声が届くと同時にギクリと肩を震わせ、ゆっくりと振り返った。

「あ、あぁ〜伊東さん!」

井吹は、なんとか平静を保とうとはしているが、声はひっくり返り、わたわたと焦る様子が見てとれた。

「こんな所で何をしてるんですの?」

そんな井吹の様子など、気にも止めないで伊東はニコリと尋ねる。

「え?あ〜……、そう!土方さんに呼ばれてたんだった!悪いが行かせてもらうぞ!」

「待ちなさい」

井吹は、そそくさと立ち去ろうとするが、それは伊東によって阻止された。

「井吹さん。前にも申しました通り、私は貴方が気に入りましたの。是非とも私について来てくれませんこと?」

「い…いや、俺は剣術なんて出来ないし」

少しずつ井吹に近付く伊東に対して、井吹は同じぐらい後ろに下がり距離を取る。

「そんなの関係ありませんわ。私の小姓になって側にいてくださればいいのです」

誘うように妖艶に微笑み、瞳は捕らえんとするとようにギラリと光らせる伊東にぞわりと井吹は粟立つ。
射すくめられたように動けなくなった井吹に伊東は近づき手を伸ばした。
井吹の頬に触れ、するりと顎へ下り顔を上げさせる。

「ふふっ」

触れられ嫌悪感しかない井吹。
不敵に笑い伊東が振り返った。

「そんなに殺気を出さないで下さいな。私は勧誘をしていただけですわ」

井吹からは伊東で見えないが、誰かが来て助かったと安堵する。

「井吹を離してもらおう」

「まあ、こわい」

冷たく発した声音に、言葉とは裏腹に明るい声で笑う伊東。
井吹から手を離し、「考えておいて下さいね」と言い立ち去って行った。

「はぁあぁ。……助かった斎藤」

井吹は、ぐったりとした様子で助けてくれた人物、斎藤に礼を言う。

「あんたは、隙がありすぎる。もう少し自覚を持て」

「わかってるよ」

憮然と言う井吹に絶対わかってないとため息をついた斎藤であった。







あとがき。
もしも無傷で井吹が残留してたら話パート2
絶対、龍之介は伊東さんに気に入られてアタックされてるに違いない(笑)
龍之介がこそこそしてたのは、伊東さんに会わないようにするためです(笑)
自己満足すみません(;^_^A
ここまで読んで頂きましてありがとうございました(^^)

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2013.05.12〜12.11

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