タイプ
「名前サン」
「んー?」
最近ハマってる漫画雑誌をパラパラめくりながら、名前が返事をする。
その横で喜助はお茶をすすった。
「名前サンのタイプって、どんな人っスか?」
「え、なに、急に」
「いえ、そういえば、聞いたことなかったなぁって」
タイプ…タイプ…難しいな。
名前はそんなことを言いながら、眉を寄せて考える。
「芸能人とか、あ、漫画のキャラクターでもいいっスよ」
助け舟を出すと、名前は今手元にある漫画雑誌を最初からパラパラとめくる。
「うーん、そうだなぁ…銀さんとか?」
「誰っスか?」
「あ、そうか、喜助さん漫画読まないもんね」
このキャラだよ。
そう言って見せてくれた漫画のカラーページには、銀髪の男が着流しにブーツで腰に挿した木刀に腕を置いている。
「…硬派な感じっスか?」
「いやいや、全然。」
かなり適当だし、プー太郎とあんまり変わらないし、基本死んだ目をしてるんだけど、やる時はやる、みたいな?、と説明してくれる。
「名前サン、そんな男がタイプなんスか…?」
「う…そう言われれば…どこが好きなのかな…。
そうだな…ゆるーい感じが好きなのかも」
有名どころで言えば、ルパンとか。
名前は視線だけ上に持っていき考える。
「女の人に弱かったり、ちょと変態だったり、めんどくさがりだったり…。
失敗もいっぱいするし、かっこ悪いところもあるんだけど。
でも、そういうところ隠さないで、そのままでいるところが、逆に格好いい…みたいな?」
でも結局そういう人が一番、周りのこと考えてたりするんだよね、と締めくくって、柔らかく笑った顔を喜助は、喜助は顎に手を当てて見た後視線を宙に飛ばした。
「つまり…」
少し考えて、名前に視線を戻す。
「名前サンのタイプは、アタシみたいな男ってことでいいっスかね?」
「なぜそうなる」
名前は至極当然のような顔で、こちらを見てくる喜助に呆れた視線を返す。
この人のこの激ポジティブ思考は、一体なんなんだろう。
「いやぁ、だって」
人差し指を立てて、帽子のつばを持ち上げてみせた。
普段は余裕の笑みを浮かべていて、女性に紳士的で、特に名前さんに対しては優しくて?
それでいて頭がキレて、いざという時には颯爽と現れてくれる…。
「名前サンが言ってたタイプに合致するじゃないっスか」
「いや、なんか、都合よく変換されてる気がするんですけど」
「やだなぁ、名前サン。最初っから、“私のタイプは喜助さんよ”って言ってくれたらよかったのに」
名前はヘラヘラと笑う喜助をみて、ため息を吐いた。
そう言って欲しいなら、最初からストレートにそう言ってって言えばいいのに、と名前は思う。
「なんスか、そのため息!」
呆れちゃいやっス!名前サン!
勢いに任せて抱きついてくる喜助を、押しのけるのもめんどくさい。
ぎゅうぎゅうと後ろから抱きしめてくる喜助をそのままに、漫画の続きを読む。
でも、確かにそうかも。
名前は密かに思う。
昔からすると、好きなタイプも変わった。
昔はクール系の、いかにも“かっこいい”タイプが好きだった。
例えば…黒崎くんみたいな。
というか格好良さの種類を、知らなかったんだろう。
こういう格好良さもある。
喜助さんの余裕のある感じとか、笑みの向こう側でいつも何かを考えてるところとか、でも私の前でだけ見せてくれる表情とか。
そういうところを見ていて、そう思う。
「ねぇちょっと、重いよぉ」
「愛の重さっスよ」
更に体重をかけてくる喜助に、名前の体が軋んだ。
好きな人でタイプが変わるって、中々すごい。
背中で喜助の重さを感じながら、ちょっとした優越感。
「絶対、私の愛の方が重いわ」
「言いましたね」
簡単に私の体は裏返させられて、喜助さんの思いのまま。
やぁめてよー
クスクスと笑って、腕から逃れようとする名前の腰を、喜助はぎゅっと抱きとめる。
こうやって、好きだ好きだと言い合う時間が何よりも愛おしい。
なんだっていい、側にいてくれるなら。
「あー名前サン、かわいい」
「はいはい」
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なんでもない会話してるとこ、書きたくて。
そしてこのタイプ論、私のタイプ論でもあります。
かつては、ブリーチでは一護・拳西派、銀魂では土方派、ワンピースではゾロ派でした。
年取ると、好きなタイプも変わりますよね。