All My Loving


俺には何があって
お前に何をしてやれるか
考えてみた
だけどわからねぇ
だったら俺は
ありったけの力で―――。








「あー…やっぱいねぇか…」


何となく来てみた彼女の家の前で、真っ暗な窓を見て痒くもない頭を掻いた。


腕時計を覗けばたった今、二つの針が12を通り越していった所。


まだ、頑張ってんだろうなァ…


思って、ふいに来た震えに両腕を抱いた。


3月の中旬といっても、まだ夜は肌寒い。


仕事帰りにそのままここに来て、カッター一枚にジャケットだけじゃ、じわじわと滑り込んでくる寒気には耐えられない。


彼女の家の合鍵を持ってないわけじゃない。
勝手に入っても「あら、いたの」くらいの反応なのはわかってる。


でも―。


ポケットに手を突っ込んで原チャのキーを取り出した。


どうすっかなァ…


そのキーの右横についたもう一つのキーを眺めて、結局ポケットにしまう。
変わりにポケットから愛用の煙草を取り出して、火をつけた。


ゆっくり肺に煙を流し入れて吐き出しながら、ぼうっとするのは結構嫌いじゃなくて。


好きな女を待つっていうんだから、尚更いい。


待ってるうちにあと何本煙草吸えっかなとか、朝までには帰ってくんだろとか、考えてるうちにあっという間に一本吸い終わってしまう。


玄関の前で座り込んで、ぼうっと空を見上げてる自分も、俺ぁ結構嫌いじゃなかったりするんだよな。


「あいつ、年中忙しいなァ…」


教師も忙しくないわけじゃないが、あいつにくらべたら全然。


それに今年は副担だから、生徒の名前も気合入れて覚える必要ねぇ。
授業内容も俺の場合適当だから、まぁ気楽なもんだ。


一緒に忙しけりゃ、まだ励ましにもなるかもしれねぇけど俺がこれじゃな。


アイツが相当参ってることも実は分かってて、ここにいる。


疲れてんのに迷惑か?なんか考えてもどうしようもない。
いっつもそうだ。
前つんのめってんのを背中ひっぱってやんねぇと落っこちまう。


何時の間にか携帯灰皿一杯に煙草吸ってて、時計見たらあれから45分。


またもう一本新しく火をつけた。


ジジっと短くなる先を見詰めて、こんな所でこんなことしてる理由を考えてみる。


俺は何も持ってねぇって自分でわかってるから。


何か特別なことしてやれるわけでも、めちゃくちゃ男前なわけでもねぇ。


もしも、この先俺なんかよりずっとずっといい男があいつの前に現れたとして、あいつが俺を捨てたって仕方ねぇって分かってる。


それでもよ、俺は負けねぇよ、あいつ好きな気持ちだけは。


だったら、何ができるか。


離れてる間も、想い続けるしかねぇじゃねぇか。
ありったけの気持ちを信じるしかねぇじゃねぇか。


どうせ、「大丈夫か?」なんて聞いたって、「大丈夫!!」って気ぃ張らせることになるんだ。


黙って俺は、あいつ想うくらいしかできねぇんだよ。


疲れて帰って来て、家ん中に誰もいないより、玄関前に俺でも座ってたら、ちっとは気が晴れんだろ。


うっすら見える星を見詰めて、携帯灰皿に灰を落とす。


吐き出した紫煙はゆらゆらと濃い闇に吸い込まれていった。


まぁ、何だかんだ言っても結局は心底さ、あいつに惚れてんだよな。


「うーわ、何だそれ、恥ずかし。
乙女ですか俺は。」


口端持ち上げて目を瞑った。


「銀時?」


静寂を震わす一瞬の、それは待ち侘びた声。


「うを!
お、おかえり。」


慌てて立ち上がって、携帯灰皿をポケットに押し込む。


「いや、そこまで偶々来たからよ。
ちょっと、寄ったんだわ。」


ずっと玄関先で待ってたなんて、何となくバツが悪くて言えねぇから頭ガシガシ掻きながら視線を逸らす。


「そっか」と一言言って名前が鍵を開けた。


先に玄関に入って黙りこくってる名前に、一瞬不安になった時体ががくんと揺れた。


「って、う、わ!!ちょ、おま…。
…名前…?」


「…ただいま。」


気付いたら腰にがっしり巻かれた腕とか、胸に押し付けられた顔とか、小刻みに震えてる華奢な体とか、それでも気丈であろうとする声とか、全てにあぁ大事だなぁと思わされる。


「おかえり、名前。
…ったく、こんななるまで一人で背負い込むんじゃねぇよ…。
ちったぁ、頼ればいいのによ。」


「頼ってるよ。今。」


「あーそうかい…。
…しょうがねぇなぁ、お前はホント。」


思わず口に出してしまった苦情に返された、小さくて短い彼女らしい答えに思わず笑ってしまう。


「名前―。
顔、あげてみ?」


もぞもぞと動いた頭を見ながら、可愛いヤツと口元が緩んだ。


「目、閉じて。」


薄い瞼、目尻、透けるような頬に順々にひとつずつキスを落としていく。


最後にありったけの愛しさを込めて、そっと唇に触れた。


朝になればまたお前は、戦闘モード万全で構えて笑うんだろうんだろ?


そんなお前もさ、俺は嫌いじゃないよ。


毎日毎日、律儀なくらい邁進するお前に心底惚れてるってさ、んなこと言やしねぇけど、思ってる。


学校でさ、ふとした瞬間、本当にふとした時いつの間にか想ってたりするわけよ、そういうお前のこと。


だけどさ、だからさ


お前のそういうとこ含めて、全部ひっくるめて好きだから、朝になったらまた背負わなきゃなんねぇ重たい荷物も、今くらい下ろしてさ、俺に好きにされて欲しい。


なんて、かなり我侭か?


それでもさ、「頼ってる」と言われたことが、こんな風に寄っかかってくれてることが、心底嬉しくてしょうがねぇってことくらいは考えても罰あたんねぇよな。


「今日はお前寝るまで見ててやっから。
疲れてんだろ、風呂入ってこいよ。」


「ありがと…。」


ありったけの愛を君に送るよ
僕の愛は、ダーリン、君だけのもの


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むかぁし作ってた夢サイトで書いてた小説を少し作り変えました。
当時憧れていた方への贈り物として書いたものでした。
久々に読んで、その方を思い出してちょっと感傷。
その方はもうサイトを閉鎖されてしまいました。

しかし最近銀魂読んでないから、脳内変換が難しい。
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