読み切り短編集

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愛しい
愛しい
愛しい

愛しい


愛しい

ただただ
あなたが
愛しい



口付けて離した後、ほおをつぅーっと指先で撫で下げた。そして向かう先は唇に触れる位置。
しっとり濡れた唇は柔らかくて、親指でいくらか撫でててやると僅かに震えた後に小さくため息が漏れる。


”あなたに触れて貰うのを待ち望んでます” と言いたげに少しだけ開いた口と誘うように濡れた瞳に吸い寄せられてまた顔を近づけた。



ねぇ、好きだよ。
ねぇ、伝わってる?
ねぇ、好きだよ。だからこうして優しく触れたくなるんだよ。


胸の内に、大事な言葉はまだ温めておいて。私は無言で何度も口付ける。
少し先を尖らせて唇の先同士だけ合わせたり、少し場所を外してみたりする。

でもそんな軽い触れ合いだけでは物足りなくなって。もっと唇から伝わる熱や息遣いを直に感じたいから舌をあなたに忍び入れ満たしていく。それにひくん、と微かに反応し受け入れて控えめに応え始める。

明かりを落とした部屋の中、粘膜質で生々しい感触と舌同士と唾液が絡んでるせいでいやらしく頭に響いてくる水音。段々と上がっていく熱を帯びた息遣いと溶けてしまいそうなくらいに熱い舌をありありと感じる。


夢中になって艶めかしいやり取りを続ける中、下の方も熱を持ってじんじんと痺れ疼きだしていていることに気がつく。
あなたが愛しくて可愛くて気持ちいいから、もっともっと…と体が反応してしまう。





ねっとりとしたキスはそのままに、胸へも手を伸ばして撫で回し始める。鼻にかかる声にならない声とヒクつき始めてぎこちなくなる舌の動き。何度も撫でるうちに乳首の辺りが更に硬くなって主張してきた。だからその乳首の先を狙って執拗に撫で回してあげる。





「…っ、ふっ……んん、ゃあ、ああ…ぁあっ」


敏感な場所である乳首への続けざまの刺激に、身体が大きくビクついて一旦キスが中断され声が漏れる。

はぁ…。なんてやらしくて、愛しい身体だろう………。
愛撫でコントロールを失い逃げ惑う唇にまた覆いかぶさって無理やりに唾液を絡めた。わざとらしく音を大きく立てながら深く口付けて離さないようにする。
また乳首を弾いて、悶え何度も震え続けるあなたとのキスを続けた。



そうして自然と2人は更なる熱を求めて身体を重ねゆく。
ただただ溢れる滴と熱を感じ確かめ合い、お互いを欲しがり満たし合うのだ。














疲れ果ててぐったりした後にすぐに眠ってしまったあなたの幸せそうな寝顔をまじまじ見つめながら、私もまた幸せを感じていた。

それから眠るあなたを起こさないようにそっと内緒の口付けを落とす。
ピク、と一瞬だけ反応するものの深く寝入って起きずにさっきと同じリズムの寝息を繰り返す。






「好きだよ…」



消え入るような声で、ようやく私は面と向かって好きだと吐き出した。

好きで堪らないのに。いつも言えずにいる。
耳元で好きだと囁いたら、きっとあなたは耳を真っ赤に染めながら喜んでくれるだろうというのは想像できるのに。



口に出すにはどこか恥ずかし過ぎて、この気持ちを言葉で伝えようとしても喉につかえてしまう。

でもね、好きなの。好きなの。


あなたの事が、好きなの。
あなたの全てが愛しいの。



ねぇ、本当だよ?
あなたの事が、愛しくて堪らないんだよ。





愛しい
愛しい
愛しい


愛しい

ただただ
あなたが
愛しい




※「あい」ではじまる20題よりタイトル引用


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