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じりじりと蒸した空気がまとわりつく。
古びたクーラーは一応効いている、筈だけど。私だけじっとりと汗をかいて、ぐったりしていた。
「どう? 気持ちよかった?」
上から見下ろして、花ちゃんが言う。
別にいちいち聞かなくても分かるようなことを、彼女は言葉で確かめたがる。
「んー……。そりゃ、まぁ」
頭の中が沸騰したみたいに、可笑しくなってきていた。いったい何回したがるんだろう。
夜中から始まったそれだが、短い仮眠をいくらか挟んで繰り返しずるずると続いていた。
「もう、疲れて眠いんだけど。花ちゃんそろそろ一緒に寝よ? 眠くないの?」
「そうだねぇ、私も眠くなってきたかなぁ」
ごろん、と隣に寝転んで彼女は機嫌良さそうに笑ってた。
「恵さん。可愛かったなぁ……っ」
にじり寄って鼻先が着きそうな距離で、にぃっと笑う。
「ん……、そうかなぁ」
「そうだよ、いつもすっごく可愛いんだよ? 堪んないんだからねっ」
満足気に話した後、だから恵さんが悪い、と意地悪気に付け加えた。
「え、えぇー? 私が?」
「そうなんだよー」
「はぁ、でももうちょっと手加減してくれたっていいじゃん。体力ないんだから」
持久走のようなセックスに散々付き合わされて、目の前で大袈裟なため息をついてやりたかったけど代わりに大きくあくびをする。
寝不足と、身体のいたる所から感じる疲労感で、もう気持ちいいとか気持ちよくないとかどうだっていい。
「なんか、恵さんだと我慢できなくなっちゃうの。でも、いつもつき合わしちゃってごめんね」
申し訳なさそうにしゅんとしているのを見ていると、くすぶってきていた憤りがしぼんでいく感じがした。
「ほんとだよ。身体がもたないや」
そう零しつつ、心の中ではしょうがないことだと承知していた。彼女も干からびそうな私を見て可哀想だと思いながらも、毎度どうにも自制が効かないようだった。
花ちゃんは私の頭をゆっくりいい子いい子しながら、ごめんね。ごめんね、と小さな声で謝っていた。
「恵さん、ゆっくり寝ていいからね。いびきいっぱいかいていいからね」
「そりゃ、こんだけ疲れたらいびきもかくわ」
ふふっ。と鼻で笑い返され、撫でていた手が止まったかと思うと顔にいくつかキスが落ちてくる。
もそ、と私も顔を近づけてゆっくり唇を合わせた。
「おやすみ」
「うん、おやすみなさい」
昼も過ぎた頃、やっとゆっくりとした眠りに二人でついた。
シャワーなど後回しに、じっとりしたお互いの肌を重ねるようにして。
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