創作小説 *恋愛

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「ゆうー…手が冷たいよぉ」




季節は冬、外へ出ると指先からは早々と温度が奪われていく。


「何で手袋はかないんだよ」


私のゆっくりと歩く速さにあわせてるが、ほんの少し前を行く彼女が少し振り返って答えた。


「だって、手袋はいてると可愛くない…」

「……?」


微妙に困った顔をするゆう。


「なんかダサいもん」

「そう、なんや…?」


私の一言で余計に困った顔になる。

何でこの乙女心が分からないの。制服の上から羽織った少し大きめのカーディガンから中手半端に見える指が重要なのに。
手袋なんてしたら台無しだよ。


「だから、手繋いでっ」


笑顔でお願いする、ゆうがこれに弱いのは間違いないはず。


「オレと!?」


嫌なんだか嬉しいんだか、ただびっくりしてるだけなんだか分からかったけど、とりあえず照れてるんだなと顔を見て察しがつ いた。


「うん……ダメぇ?」


そして上目使いになりながらもう一度お願い。前読んだ雑誌に、この仕草は[男の子ならされるとたまらない]と書いていた。ゆうはどうなんだろう。

一気に彼女の頬に赤みが射した気がした。


「ちょっとだけならいいけど」


そして顔を伏せて右手を差し出してくれた。




「やったぁっ」




私も手を伸ばす。

そしてギュッと握り締めたと同時に、






「ひゃっ、いやぁあ!」



条件反射で手を離しそうになった。


「お、璃乃の手の方があったかい」


ゆうの手は血が通ってるか分からない程冷えていた。


「冷たい、やっぱり離してー」

「嫌ー!ずっと繋いでりゃあ温くなるって」


細長い指でしっかりと握られ離してくれない。ゆうは嬉しそうにこちらに笑顔を向けた。


「うぅー…」


繋いだがために指先の体温が更に奪われていく、隣に熱が伝わり次第に温度差を感じなくなった。
そして気が付けば彼女の手は冷たくなくなっていた。


「あれ、ゆうの手の方があったかい」

「そ?」


「何で?」

「オレには分かりません」


そう言いながら少し困って照れた顔が可愛いなと思いながら、帰る方向が別れるまでずっと手を繋いでいた。


明日からまた手を繋ごうね。

手を離すときにそう思った。





H19'12.21 ももいろ。との相互記念小説 りゆ様へ

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