若干癖のある、顎の下まで伸びた銀髪。引き締まった形の良い顔立ちによく似合う、キリッとした眉に高めの鼻梁。薄すぎない唇は、淡いピンク色。何より目を引くのは、切れ長で
大学生にして、身長は一八五センチ。けれど成長期はまだ終わっていないらしい。体型は、やや筋肉質な長身痩躯。手足もスラリと長いから、アイドルやモデルといった芸能人になっても不思議ではない。
髪と瞳の色は闇の属性形質だが、顔立ちは父親譲り。容姿を言葉に表すなら、妖艶な眉目秀麗。色気たっぷりで女性を魅了する――そんな美貌なのだ。我が兄は。
何故、兄さんが中等部三年生の実技試験の場にいるのか。
本当に……どういうこと?
「中等部最後の試験だから、学園一の実力者と戦わせるのも
荒俣先生が説明してくれた。
中等部からは学年末の試験だけ、下級生のレベルに合った上級生と対戦することになっている。今は中等部三年生だから、高等部の中から実力者が選ばれる。
私は例外として教師と戦うのだが、今回に限って兄さんを召喚するとは……。
衝撃のあまり言葉が
「有珠の驚き顔は久しぶりに見るよ」
「……誰だって驚くよ。相手が兄さんなら
「それは光栄だな」
「久しぶりの対戦だ。今度こそ勝たせてもらう」
兄さんも負けず嫌いだから、ちょっと好戦的な一面がある。
でもそれは、私も同じ。
パチンッと指を鳴らす。それだけで漆黒から白金色へ一変する髪色。
自慢のプラチナブロンドは付与魔法で変えていたので、本気の
最後に眼鏡を外し、魔法で作成した亜空間に収納することで消す。
「私だって、負けないから」
ありのままの姿で挑戦的な笑みを浮かべた私に、兄さんも笑みを深める。
「……心の準備は良さそうだな。――始め!」
荒俣先生が試合開始の合図を告げると、兄さんが先手必勝で魔法名を唱えた。
『【
この世界では魔法の発動条件の一つとして『呪文』という
手順は、属性の指定、イメージを組み立てる『呪文』、キーワードである『魔法名』の詠唱。
想像したものを固めるために『呪文』を使うけれど、『魔法名』だけでも発動できる。この場合は『呪文
とはいえ『呪文』が無いと
良くて不発。最悪の場合が暴走。熟練者でも呪文破棄を失敗してしまう。
だが、
誰の力も借りずに独自で生み出した魔法は、汎用魔法とは比べ物にならない性能を
というか、いきなり兄さんお得意の固有魔法か。
まぁ、私の固有魔法も
私は兄さんの固有魔法の技【修羅道】に対抗すべく、数ある固有魔法の一つを
『〈
私の数ある固有魔法の一つ、生成魔法。
魔力単体で物質を作り出す魔法。家電製品のような道具もそうだが、一番は武器を作るのに重宝している。
あらかじめ必要な魔力を込めていれば問題ないのだが、魔力を込め続けなければ形状を維持できない欠点がある。そのためその場限りになってしまうが、仕組みを知らない人に武器を奪われたとしても、形状が維持できなくなり、霧のように消えてしまう。
この魔法のおかげで、武術の才能を
冷静に生成魔法で身の丈ほどの棍を作り、兄さんの格闘技に立ち向かう。
兄さんは稀有な闇属性保持者。しかも派生属性の幻属性もあるから、それを主軸にした固有魔法を編み出した。
――【
私が『
一つ目――天界道は、対象者の脳を支配することで思考力を奪い、対象者を操る技。
二つ目――人間道は、対象者の意識を一定時間の無限ループに
三つ目――修羅道は、身体能力を飛躍的に上げて超人的な格闘能力を発揮する技。
四つ目――
五つ目――
六つ目――地獄道は、対象者を幻覚世界に陥らせる。
幻属性が無ければ再現できない高度な魔法。一般的な魔法と違って汎用できない欠点があるけれど、かなりの効果と威力を発揮する。
今の兄さんは自身に
とても厄介なトランス状態。これに対抗するには付与魔法で身体能力を強化してから生成魔法で迎え撃ちたい。けれど、付与魔法の後に生成魔法を使う場合、その前に攻撃を受けてしまう。だから、ここは生成魔法で一呼吸置くために武器を生成したのだ。
丸腰相手に武器は
でも、これは試合。遠慮は無用。