海と空


 

自室という小さな空間で2人きり。
女の子と、それも好きな子と密室に居てドキドキしない男はいないと思う。
クラスメイトである双葉ちゃんがオレのベッドで寝転がって携帯を弄っている。
ぺちぺちと足を揺らせ合わせる度にスカートから太腿がチラチラと覗く。
はっきり言って目に毒だ。

「ねぇ、双葉ちゃん」
「悠人、なに?」
「もうちょっと女の子らしく出来ないの?」

双葉ちゃんの足の動きがぴたりと止まった。
顔をこちらに向け、くりくりとした丸い瞳でオレを見つめる。
その視線が擽ったく、オレは僅かに視線を逸らしてしまう。

「そのままの私がいいって言ったの悠人じゃん」
「まあ、そうだけどさ…」
「大体そういうの私に向いてないんだよねー」

再び視線を携帯に落とした双葉ちゃんに近付き、傍で床に腰を下ろした。

「ねぇ」
「なに」
「部屋の主を放ったらかしにして携帯弄ってて楽しい?」
「私は楽しい」
「胸に刺さったんだけど」
「聞く方が悪い」
「理不尽」

むすっと頬を膨らませてオレは双葉ちゃんの背中に跨った。
その重みでスプリングがギシリと軋む。

「重い」
「退屈なんだよ。構って」
「私は忙しいの」
「じゃあ襲っていい?」
「やばい。悠人と話が噛み合わない」

ぎゅっと双葉ちゃんの身体を抱きしめ、髪に口付ける。
抵抗の色はない。

「双葉ちゃん」
「…なに」
「イイコトしよっか」
「お断りします」
「つれないなぁ」
「悠人は軽すぎるんだよ」
「隼人くんに似て?」
「いや、隼人先輩以上だと思う」

その言葉に俺は不貞腐れ、首筋に顔を埋める。

「ちょ、擽ったい…!」

また荒北さんと連絡取ってるの?
そんなに好きなの?
オレがこんなにも双葉ちゃんを好きなように?

「もう、我慢出来ないんだけどなぁ…」

空と海が交わることがないように、きっとオレ達の想いが交差することはない。
それならば、

「ねぇ、双葉ちゃん」

何度だって伝えたい。
この想いが消えてなくならないように。

「好きだよ」



今日もオレは、
報われない恋をする。



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