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がやがやと人の流れる音を聞きながら噴水の近くのベンチへと座り込む

待ち合わせの時間まであと10分

ワンピース状になった丈の長いトレーナーの裾をつかんだ


『なんでこうなった…』


私は今日の午前中のことを思い出して盛大なため息をついた



***


ピンポーンと家のインターホンが鳴らされる音を聞いて玄関へ向かうと舞と香織がニッコリとした笑顔で手を降っていた

何しに来たのと言う前に玄関の扉を締めようとすると待って待って!と締まらないように扉を押さえ込まれる

そしてさっき飲み込んだ言葉を二人へ放つ


『何しに来たの』

「いやぁ、今日は名前丸井先輩とデートじゃん?
でもアンタ絶対そういうの気にしてなさそうじゃん?
だから私と舞でチェックしようかと…」

『デートじゃなくて部活の買い物ですけど』

「ちなみに舞はメイク担当ー!」

『だからそういうのいらないから!てか舞に頼んだらケバケバしくなりそうでやだ』


だから帰れ、と二人に言うが「お構いなくー」とズカズカと靴を脱いで家に上がり込まれる


「名前の部屋どこ?」


無遠慮に問われ、これ以上の説得を諦めた私は部屋の場所を教えて大人しく待ってろと忠告して二人に出す飲み物を取りにキッチンへ足を向けた

キッチンへ戻ると先刻までいたはずの神様が居らず、代わりに彼が書き残したであろうメモが残っていた

[なんかお邪魔そうだか帰るねー。午後のデートがんばれ☆]

手にしたメモにはそう書かれており、だからデートじゃねえって、と心の中で悪態を吐いた


***

『はぁ』


鞄から小さめの鏡を取り出して自分の顔を確認する

舞によってナチュラルメイクで仕上げられた自分の顔を見て、似合わないよなぁと小さく呟いた


「何が似合わないって?」

『あっ、丸井先輩』

「っと」

後ろから現れた丸井先輩に驚いて立ち上がると手から鏡が滑り落ち、地面に着地する前に丸井先輩の手によって受け止められた


『ありがとうございます』

「おう、んじゃまあ、行くか」


鏡を受け取って鞄にしまうと、丸井先輩に腕をひかれる

気にされていないのか気づいていないのかメイクについては何も触れられなかったので、とりあえずは安心した


「そういえば名字って化粧とかする奴だったんだ」


安心したのもつかの間、待ち合わせの公園を出るとすぐに頭の後ろで両腕を組みながら言われた


『まあ、するって言うよりされたって言う方が正しいですけどね』

似合わないですか?そう聞くと「いや、普通に似合ってるよぃ」と笑って返された

なんだこの爽やかイケメンは。とりあえずイケメンの言葉を信じることにした


「そういえば、買うものってどんくらいあるんだ?」

『そう多くはないと思いますけど、テーピングと湿布、冷感スプレー、あとは絆創膏とかガーゼとか…救急セットに入れておくものが多いですね』

「おっけー。じゃあ一つの店で済みそうだな」

『あ、はい』

「じゃあちょっと電車乗るけどいいかよぃ?」


勿論です、と答えて私と丸井先輩は歩き出した

  
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