とある雨の日、輝は帰り道を急いでいた。

ちょっと小腹を満たせるような何かを購入しようと深夜のコンビニまで出向いたものの、店を出て少し歩いたところでゲリラ豪雨に遭った。最近の私はとことんツイていないなと笑ってしまう程に。

いつもなら明るい大通り沿いを急ぐのだが、いかんせんこの雨である。普段は通らない裏道を通り、少しでも時間を短縮しようと路地裏へと入った。

路地裏に入ると急に雨が止んだ事を不思議に思いながら、それでも濡れた服の不快感から一刻も早く逃れたいと、足運びの速さは緩めない。

そして気づいた。

飲食店の業務用ゴミ箱の向こう側に隠れるように、人が潜んでいることに。その人は隠れる気がないのか、脚を投げ出して座り込み、脚が通路を塞いでしまっている。

輝は「また酔っ払いか…」と気にせず脚を跨いで通り抜けようとした。
その時何の偶然か、突然雲がはれて月の光が酔っ払いの姿を照らし出す。

一言で言うなら「チャラそうな男」だろう。色素の薄い金髪と褐色の肌。俯いている為に顔の造形は見えないが、身長は170cmを軽く超えていそうである。体重は無駄な贅肉もなく、かと言って細すぎずな標準体型と推測した。

たまに見る酔っ払いは40〜50代の男性ばかりだったので、こんな若い男性の酔っ払いは珍しい。そして珍しいと思う反面、なんとなく嫌な予感がした。何がと聞かれるとわからないので「直感」と答える他はない。輝はその直感を信じ、身動き一つしない男に声をかけてみることにした。

「大丈夫ですか?こんな所で寝ると、風邪をひきますよ」

「………」

返事はない。仕方ないなと輝はその場にしゃがみ、男の顔を覗き込んで肩を揺すろうと体に触れた。冷え切った体と血の気の失せた顔色が見え、輝は目を見開く。
男の右腕は力なく地面に投げ出されており、手の平には赤黒い何かがべっとりと付着している。左腕は男の腹部に乗せられており、まるで腹部をかばっているようにも見えた。
そっと左腕を持ち上げてみれば、腕に力は入っておらず簡単に持ち上がる。その下の腹部を見て、輝は顔を強張らせた。
そこには大量の出血により真っ赤に染まった男の腹部があった。

―――

なんとか家まで連れ帰り、輝は今自らにできる処置をした。
傷の手当てをし、体を濡れタオルで綺麗に拭い、寝間着として着られるものを着せた。現在の彼は、輝のベッドで安らかな寝息を立てている。容体は落ち着いたようで、輝は安堵の息を漏らした。

なぜ救急車を呼ばずに連れ帰ったのかは自分にもわからない。これも直感である。
実際に治療をしてみてわかった事だが傷は銃創であった。本来であれば警察に報告する義務がある患者である。しかしなぜかそれをしてはいけない気がした。本来、病院で治療を受ければ輸血だってして貰えるし、確実に命は助かる。

なのに出来なかった。

輝は自らの行動を不思議に思いつつも、ただ男の意識が戻る事を祈るのだった。

.