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▼ダイゴ

何度きっぱり断っても諦めてくれないその人が今日もまた仕事上がりの私を待ち伏せして食事に誘ってくる。それは熱意と言うにはあまりにも恐ろしい。
と、背後から腰を抱かれ私はダイゴに抱きしめられた。何故ここに、訊ねる言葉が出るより早くダイゴが口を開く。「僕の彼女に何か用かな」口元の笑みとは裏腹に、瞳はぞっとするほど冷ややかだった。

▼ダイゴ

バラの花をもらった。今日は特別な日でもない何でもない日なのにどうしたの、バラの香りを胸いっぱい吸い込んで訊ねる。花屋の前を通ったら目が留まったんだ、笑うダイゴの視線はバラへ向けられて。12本のバラはどれも綺麗に花を開いている。そこからとびきり見事に咲いている1本を引き抜くと、めいいっぱい微笑んで差し出した。

▼ダイゴ

少し唇がカサついているからリップを塗った。「僕にも貸してよ」「リップは貸し借りしたくないの」ポーチにリップを仕舞っていたら「これなら文句ないよね」突然ダイゴに抱き寄せられその唇を重ねられた。ちゅ、と音を立てながら角度を変えて行われるそれに顔を赤くしていると「ありがとう」満足気なダイゴが微笑んだ。

▼ダイゴ

いつもいつもダイゴに振り回されて私ばかりが余裕がなくて掌で踊らされている。嫌じゃないけど時々悔しくなる、たまには立場を逆転させてやりたい。だから今、ソファに座って何かの資料を読んでいる彼の隣に座ってタイミングを伺う。
「どうしたんだい」今だ。ダイゴがこちらを向いた瞬間、アスコットタイを掴んでキスをした。

▼ダイゴ

デートなのにスマホを忘れてしまって困っていたらミクリさんが「私のを使うといい」とスマホを貸してくれた。お言葉に甘えてミクリさんのスマホでダイゴに連絡すると「今日は急ぎの用以外は連絡するなと言ったはずだけど」私が挨拶するより早く不機嫌な声が聞こえて。「私だよ」声をかけると沈黙ののち電話は切られてしまった。

▼ダイゴ

ホウエンジャーの不遇さを熱く語ったらあからさまに嫌そうな顔をされた。私は興味なくても石の話聞いてるのに!腹を立てて抗議したら「君が今話していたのは中の人の話だったじゃないか」何故かダイゴも怒っている。それの何が悪いのと聞き返すと「僕以外の男を格好良いと思うの禁止」予想外の返答すぎて思わず吹き出してしまった。

▼ダイゴ

その時ひどく酔っていたから私は誰を部屋に連れ込んだかちゃんと理解しておらず、夢心地の中その人を組み伏せる今もそれが彼だとはうまく認識出来ていない。きっとこれは夢、そう結論づけて欲望のままに動けば世界が反転して今度は私がはけ口にされていた。どうか目覚めた時に一人でありますように、交わる視線に叶わない願いを唱えた。

▼ダイゴ

「どうしてダイゴはポチエナと仲良くしてくれないの」今日もまたダイゴがポチエナを睨みつけていたからついムッとして声を荒らげた。ダイゴは困ったような顔をして「僕は努力しているよ」ため息を吐いた。「このポチエナ、僕が君のことを虐めてると勘違いしてるのさ」君の可愛い声を聞いて。私の真っ赤な顔を見たポチエナがダイゴに噛み付いた。

▼ダイゴ

なんとはなしにネットニュースを眺めていたら見知った2人の写真が目に付いた。あーあ、写真撮られてるじゃん。タップして写真を拡大する。元からの知名度を抜きにしてもこの2人が歩いていたら目立つに決まってる。もっと変装したらいいのに。あ、そうだ、今度は私が選んであげよう。どんな面白い格好させようかな!

▼ダイゴ

あやしい薬を手に入れてしまってどうしようと悩んでいたらダイゴに見つかった。どうするつもりと聞かれて答えられずに黙っていたらそれを取り上げられた。そして「どうせ使うならこんな危ない薬じゃなくてうちで出してるのにしようよ」ちょうど今持ってるんだよね、無邪気な子どものような曇りのない笑顔で悪魔のように囁いた。

▼ダイゴ

不注意から紙で指を切ってしまった。ピリッと走る痛みに小さく呻くとダイゴの視線がわたしの指先に留まる。「不器用さんだね」ふっと笑われたと思ったら手を掴まれて、そのまま彼の口元まで引き寄せられるとぺろりと舐め上げられた。傷口に走る痛みと体を巡る羞恥とで動けずにいたら「まだ足りない?」にやりと不敵な笑みを向けられた。

▼ダイゴ

夜中にふと目が覚めた。覚えはないのにベッドで寝ていたようだ。そういえばダイゴはいつ帰ったんだろう、玄関を見るとそこには自分の靴しかない。運んでくれたのかな、感謝をしていると鏡に写るその体にあっと声が漏れる。こんな所に痕なんてなかったのに、わたしは感謝を撤回して服では隠れそうにないそれにため息をついた。

▼ダイゴ

「あれ、ここに飴なかった?」食べようと思って目を付けていた飴がなくなっていた。ダイゴに聞くと「ここ」と頬をつつく。ざんねん、と思っていたら「あげようか」ぐいと腰を抱かれ唇が塞がれる。遠慮なく侵入してくる舌に耐えれず逃げようとしたら呆気なく解放され、少しの物足りなさを感じていると口の中に甘い飴玉が転がっていた。

▼ダイゴ

「ごめん」その言葉から始まる時は余裕がない時だと知っているから全部ダイゴに委ねて目を閉じる。何も謝ることなんてないのに、こんな時でも彼は紳士で少しだけつまらない。勿論痛いのはいやだけど、もっと我がままになってくれてもいいのに。なんて考えていたら劣情にまみれた瞳がこちらを見ていて少しだけ楽しくなった。

▼ダイゴ

今日は朝からダイゴの様子がおかしい。やけに優しすぎるのだ。「何か隠し事してる?」問えばしかし沈黙の後「ごめんね」と謝るばかり。何かされたのかと確認しても何もなく、いよいよ迷宮入りしかけたその時ぽつりと「夢で」と自白の声が。どんな夢を見たのと尋ねようと口を開き、けれど好奇心はニャースも殺すのだと慌てて口を閉じた。

▼ダイゴ

「どの水着がいいと思う?」自分じゃ決められなくてダイゴに聞いたら「それ」と少し攻めたビキニと指さされた。もっと露出が少ないのを選ぶかと思ったからびっくりしてると「どうしたの」不思議がられた。「これ着ていいの?」「プライベートビーチなら問題ないよ」しれっと言うダイゴに、さすが御曹司だなあとうっかり感心してしまった。

▼ダイゴ

「もし世界をちょっとだけいじれるなら、ダイゴはどうしたい?」
「そうだね……明日の天気を晴れにするかな」
「消したい過去とかないんだ」
「今ボクはこんなにも幸せなのに、一体何を変えるんだい」
君は違うのかい、ダイゴは幸せそうに笑った。

▼ダイゴ

「キスしていい?」いつもならそんな事聞かないのに、改めて尋ねられたら恥ずかしくてつい「やだ」と返事していた。すると珍しくダイゴが動揺して、何だかそれがとても可愛らしかったから「ごめん」と私からキスをした。じわりと紅く染まる頬がやはり彼らしくなくて何があったのと問えば「くだらない夢を見ただけさ」強く抱きしめられた。

▼ダイゴ

急に雨に降られたから家へ着くなりお風呂に入らせてもらった。当然着替えなんて持ってないからシャツを借りる。大きいね、ダイゴの匂いがするよ、と子供みたいな感想を伝えたらダイゴがこちらを向いて口を開き、けれど何も言わずにそっぽを向いた。「なんでそれしか着てないの」「その方が喜ぶかなあって」彼の吐く大きなため息は熱を帯びていた。

▼ダイゴ

リーグスタッフとデキてる、そんな噂を耳にしたと伝えると「それが?」一瞬だけその手が止まる。「そんな根拠のない嘘を信じるんだ」口元は笑っているのに目は恐ろしく冷めていて、思わず逃げようと体をよじっだけど無駄な抵抗で。「君が信じていいのは僕だけだよ」分かったね、ダイゴが笑う。私の塞がれた口からは返事の代わりに涎が零れた。

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