はじめまして皆さん

 その後、続々とクラスメイトたちが登校してきた。その一人ひとりと挨拶を交わし、簡単な自己紹介をする。梅雨ちゃん、百ちゃん、障子くん、三奈ちゃん、常闇くん……。半分ほど席が埋まったところで、彼は来た。
 右側が白、左側が赤。紅白のめでたい配色の髪をしていて、ともすればオモシロな感じになってしまいそうなのに、彼の美貌はそれすら魅力にしてしまう。すごいイケメン。恐らく顔は母親似だろう。だって父親とはあまりに違い過ぎる。

(それにしても左目の周り、火傷の痕? 個性が暴走でもしたのか……?)

 首を傾げつつ近づく。
 私は彼を一方的に知っていた。轟焦凍。No.2ヒーロー、エンデヴァーの息子。個性は半冷半燃。右側は氷を生み出し、左側は炎を生み出す。エンデヴァー待望の、子ども。

(目が、人を拒絶してるなぁ)

 笑ってしまう。どうやらエンデヴァーは何も変わっていないらしい。そのことに自分でも驚くほど落胆していた。

(仕方ない。エンデヴァーが何もしないなら、私がやろう)

 もう、それくらいしか出来ないから。


 ***


「おはよう!」

 明るい少女の声がした。
 目の前に少女が立っていた。キラキラの笑顔で、真っ直ぐにこちらを見つめている。その物怖じしない態度は、何の苦労知らずに育ったであろう、中学までのクラスメイト達を思わせた。

「……ああ」
「今日からクラスメイトだよね! よろしくね!」
「……」
「ガンスルー! ……私御影灯、あなたの名前は何?」
「……」
「答えてくれるまで付き纏うよ!!」
「轟焦凍」

 付き纏われては堪らない。即座に答えると御影とやらは満足そうに笑って、「轟くんね! よろしく〜」と無理やりこちらの手を取りぶんぶん上下に振ってから去って行った。一連の流れの速さについて行けず、しばらく呆然とする。なんだ今の。
 俺は、クラスメイトなんて気にしている場合ではないのだ。一刻も早く、右側の個性だけで親父を超えるヒーローにならなくてはいけない。よろしくなんて、出来るわけがないのに。

(あんまり、関わらねぇようにしよう……)

 俺は、ああいう平和ボケした奴が一番嫌いだ。


 ***


 ────はい轟くん超ドライ! ドライというかシャープ! 尖りに尖りまくってる!!

 心の中でエンデヴァーもとい轟炎司に向けてありとあらゆる悪態を吐きながら、新たに登校してきたクラスメイトに話し掛ける。今のやり取りだけで既にかなり苛立っているようだったので、これ以上は逆効果だろう。今は、「遠慮のない図々しい奴」と印象付けるだけでいい。

 先は長いなあ、と考えながら挨拶して回る。そろそろ4分の3は埋まる、という時になって、いかにもヤンキーという感じ(ノーネクタイ・腰パン・目つき悪い)の少年が教室に入ってきた。

「おはよう!」
「あ゛ァ?」
「え、ビックリした……メンチ切るイコール挨拶の文化圏の方?」
「何言っとんだテメェそんなわけあるか!!」
「説得力に欠け過ぎる」

 見た目通り過ぎて逆にビックリすした。ガラ悪くない?

「私は御影灯、君は?」
「あ? 俺は爆豪勝己だよく覚えとけ! この学校の頂点に立つ男だ……!!」
「爆豪くんね! よろしく! 学校の頂点の部分はよく分からんけども……。成績の話?」
「ヒーローとしてだ!!」
「えー、それなら私もトップ狙うつもりだから譲れないなぁ。二番手で妥協する気ない?」
「ねぇわクソが!! 一番じゃなけりゃ意味ねぇだろうが!!」
「それはごもっとも」

 口が悪いが、言っていることは真っ当だ。目指すからには一番を。至極当然、むしろそうでなくてはこの先やっていけないだろう。

「まあ譲る気ないけどね」
「上等だテメェどこ中だ?!」
「そんなヤンキーのお手本みたいなセリフを生で聞く日が来るとは……。辺岩中学出身です」
「……どこだ」
「岐阜」

 すみませんねぇ知名度低い学校で。

「つーかどけや! 席に座れねぇだろうが!」
「あ、ごめんごめん、どうぞ〜」
「ふん」

 爆豪くんは肩を怒らせながら自分の席に向かって行った。私の前の席へ。うーん、ある意味退屈しなさそう。

 チラリと時計を見る。集合予定時刻にはまだ余裕があるが、そろそろ席に着いた方がいいかも知れない。そう思って席に向かう……わあ、爆豪くん机の上に足置いてる。

「爆豪くん、その座り方背中痛くならない?」
「ならねぇわクソが。何話し掛けてんだモブ」
「ワンセンテンスごとに暴言挟まないと死ぬ病気かなんか?」
「んなワケあるかボケ!!」
「説得力に欠け過ぎる」

 因みに私の席は君の後ろです、と言うとめちゃくちゃ嫌そうな顔をされた。そんな顔せんでも良くない?

「そんな嫌か」
「不愉快」
「傷付いた」
「ザマァ!」
「まあ取りあえずよろしくね。あと私の名前はさっきも言ったように御影灯だからね。ナチュラルにモブ呼びするのやめようね」
「断る」
「私の名前そんなに覚えづらい??」
「あ? 覚えた上で呼ばねぇんだよ」
「一番最悪な奴だ……ヒドい……傷付いた……」
「ハッ」
「じゃあ私も君のことあだ名で呼ぶね!!」
「何でそうなる」

 え? そういう流れじゃなかった?

 すっとぼけつつ、爆豪くんが文句を言うのを聞き流して、何がいいかなぁと考える。

「爆豪くん何て呼ばれたい? 今のところ最有力候補は『ヤンキーくん』なんだけど、流石に捻りがなさすぎて面白みが足りないよねぇ」
「オイテメェ人の話聞けや」
「『吊り目くん』……『腰パンくん』……なんかダサいのしか思い浮かばないや……ごめん……」
「どこを謝っとんだ!! 頭沸いてんのか!!」
「何言ってんの、私は大真面目だよ」
「尚のこと問題だわ」
「で、何がいい? 希望があれば聞くけど」
「爆殺王」
「それもしかして君のヒーロー名候補だったりする??」

 やめた方がいいと思うぞ本気で。

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