トライアングル継続?


 ――ごめんなさい。と彼女が深く頭を下げる。それは、どっちに……? そんな風に困惑する菊田と有古を前に、彼女はうつむいたまま続けた。

「……選べません、か……」

 二人とも良い人に変わりはないけれど、そういう目で見たことはないんです。と、心底申し訳なさそうに、か細い声で彼女は言った。気持ちは嬉しいけれど、とも。

 菊田が言う。

「別に俺たちのこと嫌いなわけじゃないってことで良いんだよな」

 有古が言う。

「……突然あんなことを言われてしまって、迷惑ではなかったか」

 彼女はどちらの問いにも「もちろん」と頷き、私はまだお二人のことを何も知らない、そんな状態では選ぶことはできない。と申し訳なさそうな表情でそう言った。
 ……彼女は少し、二人が怒ってしまわないかと心配だった。気分を悪くさせてはないか、せっかく好きだと言ってくれたのに、失礼なことを言っているのではないか、と。
 しかし。

「……ふ、はっはっは!」
「く、っふふふ……」

 何故か、二人は顔を見合わせて笑い出した。

「いや……悪い悪い、もう、どっちが選ばれるかしか考えてなくてよ……そうかそうか、そういうこともあるよな」
「ええ、少し傲慢でしたね、俺たち」
「そうだなあ」

 困惑する彼女をよそに、ひとしきり笑い終えた彼らは彼女に向き直り晴々とした顔で微笑んだ。「じゃあ、諦める云々ってのナシってことで」「飲みに行く話はどうしますか」「それは……行くだろ、なぁ?」なんて、当事者である彼女を置いて話がどんどん進んでいく。

「ん……いや、その……どっちが選ばれても禍根は残さないようにしよう、と、菊田さんと話してたんだ」

 なんの話? と聞いた彼女に、有古は答える。続いて菊田も頷きながら、「で、まぁ答えが出たらひとまず三人で飲みに行きいなって話だよ」と続けた。

「まあ〜お前が嫌だったら無理強いはできねえけど……どうだ? 今日の夜、空いてるなら」

 彼女は曖昧に頷きながらも、やはり戸惑いは隠せない様子だった。私はいま二人の告白を断ったはずでは、と混乱し続ける彼女に、菊田はこうも言った。

「選ばない、じゃなくて、選べない、なんだろ? ……じゃあ、好きになってもらえるようこれから努力していこうと思ってさ」
「それで俺のこと好きになってもらえるなら、その時はまた、俺から好きだと言わせてくれ」

 なんだよ俺が言おうと思っていたのに、なんて仲良さげに笑い合う二人の姿に、彼女もようやく「丸くおさまったのか?」と息を吐いた。安心ついでに今夜の食事に対して肯定の返事をした瞬間――なぜか、二人の雰囲気が変わったような気がする。
 なんというか……獲物を狙う、肉食獣のような……。

「――じゃあ、これから覚悟しててくれよ」
「――俺も、絶対に手を抜くつもりはないので……」

 そうして、気がついた。これは終わりなどではなく、彼女を巡る戦いの、始まりでしかないのだと……。

 その後、三人がどうなるのか、彼女はどちらかを選ぶのか、選ばないのか――

 ――それは、また別のお話。