「それにね、フレッド」
 かたくつないだ手を、フレッドの太ももの上に落とした。
「ぼく、八月に初潮が来たんだ」
「はあ?」
 それまで神妙な面持ちでカナの話を聞いていたフレッドが、気の抜けた声を出した。
「モリーおばさんがね、フレッドになら話していいよって、ほんとは男の子には内緒だけど、話していいよって言ってくれたんだ」
 ぽかんと、間抜けな表情をしているフレッドがおもしろくて、カナは鼻先にキスをした。
「ねえ、フレッド」
 ふるえるカナの睫毛に、涙が浮かんで濡れていた。
「いままでの話、ぜんぶ忘れてくれる?」
 唇にかみつきながら、カナはフレッドにまたがった。ローブの前をくつろげ、音を立てて首筋に口付けると、「おい!」と焦った声が聞こえてくる。腰を上げて自分のローブとシュミーズをまくりあげ、下着をするりと脱ぎ下ろしたとき、熱い手が肩に掴み掛かった。
「バカ、カナ!」
 膝に引っかかったままのショーツをカナが引っ張って投げ捨てると、真っ赤に顔を染めたフレッドが、腕を伸ばしてカナを遠ざけながら、視線を彷徨わせていた。
「いったん考えようって、去年言っただろ!」
「待てないよ」
 カナはフレッドの茹だった頬をつかみ、顔を突き合わせた。
「ぼく、待てないんだ」
 噛みついた。唇に吸い付きながら、カナはローブの下へ下へ、手を伸ばしていく。でこぼこした腹筋のその下、すでに固くなったそこに手を這わせると、フレッドがうめいた。
「なあ・・・・・・」
 黙らせるように、カナはもう一度くちづけた。唇とその周りが、吸い付きすぎて赤くなって腫れているかもしれない。「はあっ」と、カナは大きな吐息を吐きだした。
「フレッド――」
 腰を上げて、つかんだ陰茎を、カナは自分の性器に擦り合わせた。ねだるように口を開くと、フレッドが口付けてくれる。それがうれしくて、カナは笑った。
「あっ――はあっ、くるし・・・・・・」
 ぬかるみに、熱い杭が挿さる。それはカナが思っていたよりも、ずっとずっと大きかった。こじ開けられる感覚に、勝手に腰がふるえた。のぼせたフレッドの頭が、カナのやわらかな胸に沈んでいた。ローブの前をはだけ、シュミーズの紐をほどくと、亜麻色の瞳がそれをぽーっと目で追った。桃色の突起が目の前に現れると、フレッドが迷わず吸い付いた。
「あんっ」
 子犬みたいな声が漏れて、カナは自分でもびっくりして口を手で押さえた。亜麻色の目とかち合う。恥ずかしくなって、はにかんでいると、フレッドが執拗に乳首を追いかけた。
「やだ、くすぐったいよ」
 カナはクスクス笑った。そばかすだらけの鼻先が、胸のなだらかなところに沈んでいるのを見ると、心が震えた。
 すこし、腰を前後にゆすると、胸のあいだに熱い息がかかった。
「それ、ヤバいって」
 熱のこもった手が、腰に回る。カナはなんども、あちこちにキスを落としながら、腰をくねらせた。
 だんだんと、戯れの愛撫が減っていく。肌のぶつかる音と、カナの肉のあわいから漏れるぬかるんだ音と、ふたり分の切羽詰まった呼吸の音だけが空っぽの教室に消えていって、頭が沸騰しそうになる。ただカナのなすがまま、フレッドはそれに没頭した。カナの尻のやわいところをつかみ、ときどき思い出したように口付けしながら、黙って熱い息を吐いた。
「あ――あ――あ――あ――」
 たまらなくなって、カナはだんだん、吐息とともに漏れる声を抑えきれなくなってきた。なかをかきまぜる動きも速くなる――唾液がひとすじ、こぼれた。
「はっ――ダメ――フレッド――んんっ!」
 カナの背が、弓なりに反れ、まるい乳が揺れた。薄い腹がびくびくと波打っている。ゆっくりと天から降りてくるような感覚に、目の前がちかちかした。
「カナ?」フレッドが心配そうにカナを見た。カナはその唇に吸い付いた。まもなく、また尻を揺さぶり始める。
「はっ・・・・・・ねえ、良い?」
「聞くなよ」フレッドがため息混じりに言った。「見て、わからないか?」
 カナは笑った。くつくつとお腹が揺れると、フレッドが「あーっ」と息を吐いた。
「お前さんの腹が揺れると、かなり来るよ。とくに、さっきのは」
「はあっ、フレッド」
 カナはいつのまにか、ぽろぽろ泣いていた。泣きながら、懸命に腰を振る女の子は、さぞや間抜けに見えたことだろう。
「ぼく――すごく――」
 しゃくりあげるカナの背を、汗ばんだ熱い手がやさしく撫でた。つづきは言葉にならなかった。「しあわせ」だと、カナはそう言いたかったのだけれど。
「なんだ?」
 涙でぼやけた顔のフレッドが、「この行為に夢中だ」と顔に書いてある、その愛おしい男が、カナの顔を覗き込んでいた。たんこぶや、青あざに、カナはやさしくキスをした。
 しあわせだった。胸がいっぱいになった。それがあふれて、今度は切なくてたまらなくなった。
「大丈夫か?」
 セックスに没頭しながら、カナは涙を流して微笑んだ。
「大丈夫だから、離さないで」
 しあわせなのだと、言葉にしてしまうと、今にもなくしてしまいそうで、恐ろしかった。
 フレッドの腕の中で、カナは突然身動きが取れなくなった。からだをぴったりとくっつけながら、きゅうーっと、おなかの切ないところを締めた。フレッドが、何度目か、うめいた。
「カナ、もう十分だから――」
「やだ・・・・・・」
「ヤバいから、これ以上は。わかるだろ?」
 目の前の男も感じてくれていると思うと、カナはなによりも嬉しかった。ぞくぞくと背すじが痺れると、フレッドが「だから――」と焦ったようにカナの体を起こした。
「フレッド、その――ぼく、立てないかも」
 後ろに手をつきながら、カナが白い胸を上下させて言った。観念したように、フレッドがまだ熱くたぎったままの杭を抜き去っていく。その感覚に、カナはまた腰がふるえる。
 カナが腕を広げると、フレッドがそこに収まる。
 しあわせ。しあわせ。しあわせだ。
 男の子が自分の未熟な乳を楽しんでいる光景というのは、どうしてこうも、頭の中を直接くすぐられているような心地なんだろう。カナは魔が差して、たったいま自由になった陰茎に手をのばす。フレッドの声にならない声を聞くと、まるで自分が主導権を握っているようでぞくぞくした。ほどなくして、カナの細っこい両手が白く汚れた。フレッドはそれをとても複雑そうな目で見ていた。



20250608


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