マイクロファイバー生地のふわふわパジャマを着て消灯時間にそなえる。羊のようにモコモコするのにはささやかな魂胆をはらんでいた。
ゴトン、と、部屋の外のベランダから音。おまちかねである。カーテンをめくり、施錠されている鍵をくるりと回して、冷えたガラス窓をガラガラと開ける。夜の凛とした空気がモコモコに守られていない顔や手を刺していった。
「おかえり、サウンドウェーブ」
名前を呼べば、ベランダに転がる青いラジカセのような生命体が抑揚のない声で返事をする。
「ああ。今日は寒い」
サウンドウェーブも、寒いことがわかるんだ。そんなことを考えながら、わたしはベランダのラジカセをうやうやしく両腕にかかえた。サウンドウェーブの体は確かにぴーんと冷たくなっている。そのまま両腕で彼を抱きしめ、暖房のきいた部屋に戻った。鍵を回して忘れずに施錠。
ラジカセになっているサウンドウェーブをハグしたまま、やわらかなベッドに潜りこむ。湯たんぽを入れておいてよかった。手元のリモコンを押すと、こうこうと照っていた電気が一瞬で消えて、小さなオレンジの明かりが部屋を包んだ。
「サウンドウェーブ、冷え性なの?あまりあったかくならないね」
この世界が壊れないよう、ふとんの中で抱いているサウンドウェーブに小さく囁く。
「冷え性もなにも、俺に血は流れていない。あまりくっつくとお前まで冷えるぞ」
静かで無機質な声だけど、その中に確かに優しさの色がみえて、思わずサウンドウェーブをぎゅうっと抱き寄せた。ごつごつしたラジカセの体がおなかに食いこんでちょっと痛い。そしてちょっと冷たい。
「…警告したからな。はらが冷えても知らないぞ」
「でも、こうするとふわふわであったかいでしょ」
白状すると、かちかちのサウンドウェーブをふわふわでくるむためにわたしは羊になったのだ。じんわりとわたしの熱がサウンドウェーブに伝わっていくのがわかる。彼の冷たい体がだんだんと同じ体温になっていく。なんだかたまらなく大好きで、すり、と頬ずりもおまけした。今夜はうんと気分がいい。サウンドウェーブが来てくれたから。
「おい、苦しい…。なんだ、寂しかったのか?」
「うん、会いたかった」
「そうか」
サウンドウェーブがラジカセになっているのをいいことに、わたしはやりたい放題の愛でたい放題だ。やさしくラジカセの側面を撫でて、すみっこにキスをおとした。くすぐったかったのか、サウンドウェーブがもぞりと身動きをした。
「……」
「おやすみのちゅうは、いい夢がみられるおまじない」
「俺は夢をみない」
「じゃあ今日、はじめて夢をみるかもしれないよ」
おやすみ、サウンドウェーブ。
愛しいラジカセを視界に焼き付けながらゆっくりと瞳をとじる。目を瞑っても、腕の中にサウンドウェーブの重みを感じて幸せな気持ちになった。夢でも会えますように。
「……おやすみ、#name1#」
おやすみ