私は真選組副長・土方十四郎が好きである。
いや、違うな、大好きだ。

真選組の頭脳とも言われるキレる頭、でもマヨネーズのことになるとてんでダメになる頭、鬼の副長とも呼ばれている厳しいところ、でもカロリー摂取には甘いところ、全てを叩き斬る迷いのない太刀筋、でも煙草とは縁が切れないところ、本物の鬼を射殺せそうな鋭い眼力、ちょっと男らしいさっぱりとした黒髪、それがちょっと跳ねてるところが萌える、隊服が似合う体格、すらっとしてエロくて長い脚、イケボエロボな声、それから、えっと、えっと、

「うるっせェェエエエ!!!朝から人のことベラベラベラベラ語っててうるせェんだよオメーはよォォオ!!舐めまわすように見られてるみてェで気持ち悪ィんだよ!」

背中に衝撃が走ってそのまま目の前にあった障子の引き戸に突っ込んだ。こ、この声は!

「あ、副長!おはようございます!やだ私の心の声聞いてたんですか!?」
「ごふっ」

障子に上半身を突っ込んだまま勢いよく振り返ったら副長にぶつかってしまって、そのまま庭に転がるようにして倒れた。
頬に怒りマークを付けたまま立ち上がる副長は道着姿で、麗しすぎて朝から危うく鼻血出るかと思った。ちょっと気怠そうなところがたまんない。

「聞いてたんじゃねェよ。聞かされてんだよこっちは。さっさとその締りの悪ィ口元塞げ。出来なきゃ一回切腹しとけ。いっそのこと障子ごと腹捌け」
「じゃあこの締まりの悪い唇、副長の唇で塞いでください!」
「障子に塞いでもらえ」
「障子越しのキスも悪くないですね!副長がそんなロマンチックだなんて思わなかったです」
「マジでお前そろそろくたばってくんない」

今日も相変わらず会話が成り立っていない模様。ま、いつものことなんですけどね。先に道場へと足を進ませる副長の背中を追いかける。
広くて飛びつきたくなる背中…見つめていると……なんだかムラムラします。

「いやだから心の声で出るっつっただろ!黙ってろ!」
「無理です!副長今日も大好きです!パンツ見せてください!というか下さい!」
「死ね」
「稽古後の汗だくのやつでもいいんで!!」
「俺が気分悪ィわ!!!…あークソ、朝から疲れる」
「んもー副長ったら照れ屋さんなんだからー。いつになったら付き合ってくれるんですか?」
「オメーが攘夷浪士百人捌いたら考えてやるわ」
「無理ゲーすぎる」

道場へ足を踏み入れると、手拭いで汗を拭くベビーフェイスの小僧……総悟と目が合った。

「おはよ総悟」
「見事な玉砕っぷりですねィ名前さん。聞こえてましたぜ」

コイツさぼり癖ある割にはこういうとこ意外にちゃっかり参加するんだよなぁ…、そんなことを思いながら竹刀を一本手に取る。「オイしっかり柔軟しとけよ」なんて副長からの優しいお声がかかって、嬉しい!と思って振り返ったら私じゃなくてテツくんに向かって言ったお言葉らしくてへこんだ。

「ふっ、聞いて驚け総悟くん。今日でフラれたの百回目記念だ」
「ありゃ数えてたんで?そりゃおめっとさん」
「女はマメじゃないとね」
「あれー?苗字隊長が道場になんて珍しいですね?」
「ん?」

ザキだった。彼に言われたセリフに、そういえば確かに私が朝から道場なんてのは久しぶりかもしれないなぁなんて。

「副長にデートに誘、ごぶらっ」
「苗字隊長大丈夫ですか…」
「だ、大丈夫。たとえ竹刀でボコされようともハリセンで叩かれようとも!!私の副長への愛はやめられない止まらないー」
「かっぱえびせんですか…。副長追いかけにとうとう朝稽古まできたんで?苗字隊ちょ、いだぁ!?」
「ザキくん、隊長って言うのはやめてって言ったでしょ」
「いやぁ、なんか肩書きが付くとついクセで…」

そう、実は一ヶ月前に真選組に新しい隊が作られたのだ。

今までは一から十まであったのだけど、此度私が来てから新たな隊ーーその名も副長愛羅武勇、

「いだぁ!?」
「気が散るんだよオメーはァア!なーにが愛羅武勇だ馬鹿か!お前そろそろマジで射撃隊隊長らしくしてねェと潰すぞその隊!」
「そうなったら副長の胸を撃ち抜き隊隊長始めました、します」
「やかましいィイイ!なんで冷やし中華始めました風になんだ!!」

「テメーも柔軟しろ!」と罵りのお言葉を頂いて渋々身体を伸ばす。

「ザキー背中押してー」
「はいはい。懐かしいですね、人のことコキ使う感じ」
「ザキも射撃隊入れば良いのに。隊長私だよ?超絶プリチーなのが隊長だよ?」
「…俺は専ら潜りですから。いやぁ、真選組結成直後にそれまで紅一点だった苗字さんだけ一人京の用心棒として連れて行かれて四年弱…。刀片手に手を振って旅立った筈なのに飛び具片手に江戸に帰ってくるなんて…誰も思いもしませんでしたよ」
「ふふっ、私も。そんで帰ってきたと思ったら副長がハンパないイケメンに成長してたなんてのも思わなかったわー。…まぁ一番びっくりしたのはザキがこんなに丸くなったのたけど」
「俺もいろいろあったんですよ」
「君本当にザキ?いだだだだ」

ぐぐっと背中を一層強い力で押されて膝裏が悲鳴を上げた。

「オイ山崎、そいつにそんなぬるい押し方してんじゃねェよ。ドタマが床ぶち抜けるまで押せ」
「副長それ逆効果ですよ。本人喜んでます」
「もっと押してください!お願いします副長!」

あらら、本当に床ぶち抜けちゃった。ザキが。

そんなこんなで苗字名前、真選組特別狙撃隊隊長、ついでに真選組副長の土方十四郎のことを愛してやまない変人やってます。