豆腐ヒロインと銀さんとその後
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「いやいやいやいやいや!!無理無理無理無理!!無理です!無理ですってば!」
ブンブンと顔の前で手を左右に振る私の目の前には困惑した表情の銀さん。ほんのりお酒が入っていて、口調はしっかりしているが目は少しだけとろんとしている。
ちくしょう可愛いな!!可愛いなと思ったよ!!
「何言ってんだオメーは。どの辺が無理なんだよ。銀さんが無理かそうなのかコノヤロー」
「ちちち違いますせん!この状況は無理ます!」
「オーイ日本語崩壊してっぞ。いーからさっさと入れ!」
「うっぎゃぁああああ!!ままままだ心の準備が…ッぐげふっ!!」
銀さんにガシリと腕を掴まれて喚いていると後ろから重たいものにのし掛かられて、床にはっ倒された。
しかし不思議とものすごく重たいわけでもなくて、この柔らかいモフモフの感触は定春くんに違いない。首を捻って上を見ると、目がしょぼついてる定春くんと神楽ちゃんとご対面した。
「銀ちゃんに名前煩いネ。ガキは早く寝る時間アル。さっさと寝るとヨロシ」
「神楽ちゃんの押入れで寝ます!!」
「定員オーバーアル。大人しく銀ちゃんの布団で寝るネ」
「ちょちょちょちょ!!えっと、じゃあ、ソファーで寝ます!私ソファーと友達なんです実は!」
「バカヤロー。あのソファーツインズは俺らの家族だ。俺たちの家族の上で寝んのかオメーは」
「うぐっ…!」
そう。先程から意味わからん小競り合いしているのは真夜中の万事屋内である。
尚且つ寝床についてあーだこーだの言い合っているのであった。
実は本編最終回で銀さんに「万事屋に来い」と言われ、店長にもその話をしたのだが、まぁ、引っ越し準備とかいろいろ出来てないから、引っ越すのは後日ということになった。それはそれでいいのだが、今なぜこんな状況になっているのか。
それは数時間前に遡る。
元の世界に戻れなくなり、再びこの銀魂の世界で暮らしていくことが決まると、なんだかんだで万事屋メンバーにその他諸々たちが大喜びして歓迎をしてくれて、改まって歓迎会を開いていただいた。
若い衆で日を跨ぐ時間までどんちゃん騒ぎしていて、いざ解散となった時に事件は起きた。
あろうことか、先に帰っていた店長が玄関の内鍵を閉めて寝てしまったのだ!!あ、ちなみに、私は店長の自宅の一室を借りて生活してます。
そんなこんなで満喫で凌ごうかと思ったら、送ってくれた銀さんがウチ来いと言ってくれて、お風呂も寝巻きも貸してくれてこうして今に至っている。
「た、只でさえ銀さんの寝巻き着てるだけでも死にそうなのに…!!」
「あ?何か言った?」
「いえ!なにも!!」
「あと3〜4時間後には朝なんだ。そんくれーにゃ店長も起きんだろ」
「じゃあ、その時間まで起きてまZZZZZ」
「すでに寝てんじゃねーか!」
「はっ!?」
いかんいかん。眠すぎて一瞬まじで意識が飛んだ。
とにかく朝日が昇るまでオールするしかない。
「バカのコントも見飽きたアル。定春、寝るヨ」
「私も連れてっ…がふッ!」
のそのそ廊下へ向かう神楽ちゃんの背を追いかけようとすると襟を掴まれて情けない声が出た。グン、と後ろに引っ張られてあったかいものに包まれる。
「分かった分かった。もう俺もねみーしめんどくせーから強行突破な」
「ぎぎぎ銀さんんん!?」
なんともスムーズに横抱きにされて、あっという間に寝室に連れてこられた。
ヤバイよヤバイよヤバイよ!!!
「どーせ俺がソファー寝んのに遠慮してんだろ?んなら、こーすりゃいいんだろーが」
ち、ちがっ…!いや!合ってるけど!確かに銀さんがソファーで寝るの申し訳ないけどそれ以上に私が銀さんの布団で寝ることの方が耐えられない!!朝起きて鼻血まみれだったらどうしよう…っ!
「う、わっ!」
ころんと布団に転がされてその横に銀さんが寝転んだ。ぶわっと香る布団の持ち主の匂いに思わず顔が熱くなる。
しかもなんかすげーナチュラルに…だ、だ、抱き枕にされたァァア!!!銀さんあったかい!良い匂い!筋肉!!
て、手!どこに置けば良いの!?胸!?無理!!手のポジション迷子!
「…ぶっ」
「へ!?」
「ぶくくっ…!!…お前緊張しすぎだっての」
突然ゲラゲラ笑う銀さんにビクついた。びっくりした…一瞬頭の中のこと聞かれてたのかと思った。
背中に回った手が、優しくトントンとリズムよく叩く。まるで子どもをあやすようなそれに、ちょっと拍子抜けした。
「別に取って食いやしねーよ。ンとに免疫ねーなお前。本当に前々から銀さんのこと知ってたのかよ?」
「だ、だって…!」
「ハイハイ。早く慣れろって。んで、寝ろ」
「は、ハイ」
時計が時を刻む音と、銀さんが私の背中を優しく叩く音、その時に布が擦れる音が耳に入る。
あぁ、さっきまでアドレナリン全開で大放出してたはずなのに今もうセロトニンまみれな気がする。心拍数も落ち着いてきているのが分かる。
私の心臓、今日もよく働いてくれたよホント…。今日も今日とて、寝る直前まで銀さんにドキドキさせられっぱなしだ。
「……名前?」
もぞりと頭の辺りで何かが動いて、銀さんの優しい声が意識の片隅で聞こえたような気がした。
…夢と現実の狭間って、ここなのかなぁ。
「おやすみ……い゛ッ!?」
「ッ!?ひぇ!?い、今の!?」
「お、おまっ……!」
おでこの柔らかい感触に飛び起きたら後頭部に衝撃が走った。
うん、やっぱり眠れませんてコレ。
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