豆腐ヒロインと銀さんと甘々

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「手伝ってもらってしまってすいません名前さん」

新八の声になんとなくジャンプから視線を上げた。
古紙や雑誌類をまとめて紙紐で結んでいる名前の隣で請求書の紙を束ねていた新八が申し訳なさそうにして眉尻を下げていた。

「いやいやいや…!むしろこれから私がお世話になるし…!」

まぁ、ここまで何があったかは一々説明すんのもめんどくせーから、詳しくは本編見ろって感じで、なんやかんなで名前を万事屋に住まわせることになった。
その前に一度万事屋の中の掃除をすることになり、今こう来て名前が来ている。

「ンなもん気にすんなっつったろ」
「アンタはもうちょっと気にしてくださいよ銀さん」

心底から出てきたセリフをそのまま口に出して、ソファーに横になりながら手元のジャンプを捲る。
新八の冷ややかな視線を感じるがこの際フルシカトだ。

「それにしても…四次元ポケット並みの収納スペース…だねぇ…」
「依頼報酬にガラクタ貰って来たりするんで、この有様なんです。銀さんもなかなかジャンプ捨ててくれないし…」
「ジャンプはゴミじゃねーんだよ。夢だ。全国青少年達の夢が詰まった宝モンなんだよ。全てはそこに置いてんだ俺ァ」
「ここがラフテルだなんて全海賊が聞いて呆れますよ」

一見綺麗に保たれている万事屋内も、まァ実際は押入れの向こうなんざそれはもう色々と物で溢れかえっているわけで。一部の押入れ内は神楽と定春の寝床になってんだからそれもそうなるわ、と開き直っちまってる。

「ひゃっほー!」

寝室側のタンスの配置をしていた神楽が騒がしく居間に駆け込んできた。おい静かにしろ神楽。またばーさんにしばかれんぞ。

「エロ本見つけたヨー!名前!新八ー!銀ちゃんの好み読むアルか!?」
「ぶ!?」
「銀さんアンタ…っ!神楽ちゃんがいるってのになんてモノを…!」
「それアレ!俺のじゃなくて、アレだよあアレ!」
「その動揺っぷりが物語ってますよ銀さん」
「だァァアアア待て待て待て神楽!!」

待て待て待て待てェエエエ!!待てよ!どこにあったそれ!?嘘だろ!?

ソファーから転げ落ちるように降りて神楽を追いかける。

「嘘アル」
「てんめェエエエ!!」

……どうやらよっぽど俺を振り回したことが面白くて楽しかったらしい。ゲラゲラ笑いながら逃げ回る神楽を全力で追いかけた。

「ワン!」
「どわ!?」

真横からの衝撃に体は吹っ飛ばされて、上からの遠慮ない圧力に昼飯の炒飯がもんじゃになって出そうになった。

大方俺と神楽が遊んでるとでも思ったであろう、遠慮無しにじゃれつく定春の顔面を押しのける。潰れるっての!

「あーもう、新八ィ!神楽ァ!オメーら定春の散歩行ってこい!定春がしつけェ!」
「はいはい…ここ最近定春の散歩しっかり行けてなかったし…行きましょうかね」

新八が立ち上がる様子に散歩だといち早く勘付いた定春がようやく俺の上から退いた。
あー疲れた。立ち上がりかけたところに、写真が一枚目の前に落ちてきた。


ンだコレ…。どっから出てき……


「名前も一緒に行こうヨ!」
「えっ、良い「名前はダメだ。仕事残ってっから」…へ!?」
「ぶー!銀ちゃんのケチ!」
「300円でどうだチワワ一等兵」
「ひゃっほー!」
「大人気ないな銀さん…」

うるさい連中をさっさと散歩に行かせ、万事屋内に名前と2人きり。

「あー、やっとうるせェの居なくなったな」
「そんなことないですよ!みんな賑やかで楽しいです」
「そーかい」
「あ、そういえば仕事ってなんですか?」
「ん?特にねーよンなの」
「え」
「あんなのアイツらを追っ払うためのただの口実だ」
「えっ、え?なんで!?」
「………お前…結構鈍めにできてんのな。こんなのが江戸救ったのかよ…」
「いや、そんなはずは…!てか、さり気なくディスられてます!?」
「あーもーわかったわかった。とりあえずこっち来い」

神楽達を玄関先で見送って、居間に戻ってきたばかりの名前と話をしてたせいで名前は居間の入り口で突っ立ったままだった。
雑に手招きして呼べば、名前は俺が座ってるソファーとは反対側に腰を降ろそうとした。

いや、なんでだよ。

「ちげーっての。こっち」
「えぇ!?…は、はいぃ」

俺の横の座面を叩くと、一気に顔を赤くしながらそそくさと移動して「失礼します」と小さく断りを入れて近寄る。

それよりも先に細っこい手首を掴んで自分の方へ引く。

「ぶべらっ!?」
「よーし、やっと捕まえた」

すんなり胸下に収まった小せぇ身体を抱き込むと、名前の身体が緊張からか硬ばってんのがよく分かって、思わず鼻で笑っちまった。

「な、な、なんですかどうしたんですか…!?」
「んー、銀さんをセンチメンタルにしたお仕置き?」
「なんで!?」

こいつ、相当パニクってやがるわ。顔を一目見て揶揄ってやろうかと覗き見るが、相当恥ずかしいのか逆の方を向かれた。
ま、いいけど。

髪から香るシャンプーの匂いを吸い込みながら、柔らけェ髪に指を絡めて遊んでみる。そこでふと思い出したのは、さっきの一枚の写真。

「…お前さー」
「…ハイ」
「マジで俺以外にコレされんのもうやめろよ?」
「………ハイ?」
「返事!」
「ハイ!…でも、あの…神楽ちゃんは…?」
「アイツはセーフ」
「…あのー、銀さんと神楽ちゃん以外に記憶にござらないのですが…」
「…そーかよ」

ふーん、ありゃノーカンってか。

「…あれ?」
「ん?」

名前の声に少し下を見ると、コイツはテーブルの方を見ており、その視線の先を追うと、俺がさっき見つけた写真。

「この写真…」
「あ、タンマ!タンマ!」
「!」

慌てて名前をキツく抱き込もうとしたら意外にも名前の方が動きが早く、さっと俺の腕からすり抜けりゃあ写真を手取って逃げた。
それからちょっと離れたところに避難してマジマジと確認。

「こ、これ…!ひぎゃっ!?」

写真に気を取られてる名前の背後に回り込んで羽交い締めしてみる。やっぱり小動物の如く身体をはね上がらせるからこれはクセになりそうだ。

「おーい名前チャーン。美味しそうなうなじがガラ空きだよー」
「ッあ…!…待って待って銀さん…っ!!」

ちょっとしたイタズラでうなじにキス止まりにするつもりが、思っていた以上に肌の質感が良く、思わず歯を立てちまった。
……ま、いいだろ。

そのまま調子に乗ろうって時に慌てて写真を突き返された。

「あ?もう良いの?まだ持っててくれた方が銀さんとしてはこの先楽しくなること間違いなしなんだけど」
「…い、い、いらない、ですっ…」

自分の首を両手で抑えながら後退りする名前はマジで小動物そのものだ。そんなんだからこっちのドS心が止まんなくなっちまうだろーが、分かってんのかコイツ。

「あ、そ。こっちガラ空きだけどな」
「んっ」

腕を掴んで引き寄せ、ガラ空きの唇を貰った。前々から思ってたことだが、こいつの唇はマジで柔らけェ。
お前はゆでダコか、って突っ込みたくなるぐれぇに真っ赤にした名前の頬をゆるく掴む。

「名前」
「ひゃい…」
「しつけーけど、確認な。あたりめェだけど俺以外のヤローと馴れ合うの禁止。ほれ、返事は?」
「は、んぅっ」

返事をしようとする名前のセリフを奪ってやった。
やべーなたまんねーなオイ。こいつ万事屋に住んだら銀さん大丈夫かな。いやその前にコイツも心配だけどよ。
力が抜けてもはや文字通りタコ状態の名前をソファーに座らせ、床に落ちた写真を拾う。

「さーて、コイツはさっさと処分すっか」
「なんで…そんなの持ってるんですか…っ!?それめちゃくちゃノーカンですよ!!」
「あー、まぁ、弱み握りに?」
「マジで正真正銘のドSですね…!!」
「ワリーな、褒め言葉にしか聞こえねーわ」

そーだよ。あんときゃあコレでなんかあった時に多串くんを強請ろうなんざ思ってたが…、こんなタイミングで出てこられて逆に俺がメンタル返り討ちに遭って…そりゃねーよな。おセンチメンタルにもなるわ。

道路脇で尻餅をつく多串くんとその腕の中にいる名前の姿の写真をもう一度見たら、すげー無性に腹が立ってきた。あん?そ!いつ撮ったかって?ンなの本編行ってこい。

神楽達が帰るまでにコイツにメンタルケアしてもらうか。写真を握り潰したらビクつく小動物に近づいた。


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