高専五条とまつげ
「五条ってさ、いつも眠そうだよね」
教室で漫画を眺める五条の目を見てたら思ってた言葉がそのまま出ていたらしく、少ししてから白い睫毛をしばたたかせた五条は顔を上げて私を見た。
「…は?」
机に頬杖付いてぼんやりご尊顔を拝み続ける私はその綺麗な双眼と見事ご対面。良いツラ過ぎて直視できないので、机の上に置きっぱなしだった五条のやけに暗いサングラスで物理的にフィルターをかけてみて、手動で上げたり下げたりして五条のお顔を見たり隠したりしてたらサングラスを取り上げられた。
「お前目大丈夫?この麗しい六眼がしっかりご開帳してんの見えてねぇ?」
「そう、それね、なんでだろうって思っててようやく今分かったかもしれない。聞いて」
「いやまずお前が聞けよ」
はぁーっと深々ため息を吐いた五条が私から奪い返したサングラスを頭の上に乗せ、椅子の背もたれに深々と腰掛ける。漫画の内容が一瞬トんだのか、一つ前のページをぺらりと捲って元のページに戻すと「で」と一言…一応話を聞いてくれるらしい。
「睫毛だよ、睫毛」
「はぁー?」
「睫毛が白いとさ、目の縁がぼんやりしちゃって目の開き具合が分かんないんだよ」
言ってることがよく分からなかったのか、漫画から視線を逸らして宙を見上げた五条がパチンと一つ瞬きをすれば、応じて白い睫毛がバサバサ動いた。
「ブロンドヘアの外国人さんがアイメイク黒でガッツリ囲う理由が五条見てて分かった気がする。白いのも困りもんねー。目力半減してる」
「うっせーな。糸目三白眼よかマシだろ」
「シンプルに夏油の悪口じゃん。言ってやろー!」
携帯取り出して絶賛硝子と任務中の夏油に向けてメッセージを開く。
「――いって!」
「えっ?」
不意に五条が珍しくそんな声をあげるから、つい驚いて視線を携帯から上げた。五条を見ればがじがじと荒々しく目元を擦っている。
「え、ど、どうした…?」
「睫毛入った多分。あー、お前が睫毛睫毛言うから」
「嘘でしょ、私睫毛言いすぎてとうとう五条の睫毛呪った?」
「ざっけんなマジで」
「待って待って、擦ると余計に良くないって。ほらご尊顔寄越して」
「…あ?」
五条の顔を捕まえ、上を向けさせて痛そうにしている側の目の上下を指で抑える。……わー、フッサフサ。頭の片隅でそんなことを考えながら五条の少し充血した眼球をマジマジ眺めて、気付いた。
「うわ、大変だ、睫毛白いから見えない。眼球と同化して行方不明!!」
「やっぱ呪っただろお前。代償はデケーからな」
「いやいや…私如きが五条の睫毛を呪える訳がないでしょ。……あ、瞬きしたらダメだって!」
どうにか五条の瞼を押さえつけて睫毛らしきものの存在を探す。いやこれ無理ない?目薬あったかな?五条から顔を離して自分のかばんへと視線を逸らした途端、
「名前」
「え?」
くい、と顎を掴まれた途端、唇の端に柔らかくて温い感触。おまけにリップ音。「は?」と呆然としていたら五条がサングラスを鼻に落とし、持っていた漫画を手にして立ち上がった。
「うし、灰原に新巻借りてこよーっと」
「……は…?はぁっ!?」
椅子をガタガタ音出せながら立ち上がる私に、五条が教室の出入り口で一度こちらを振り返り見る。
「睫毛呪った代償」
五条がべーっと舌を出した。
―――――
睫毛探しに勤しむ名前さんを見てたらつい軽くムラっとした五条。