まにまにの原点


※まにまにの原点的なアレ(最初に思い浮かんだ場面。ここから派生してる)
※すんごいラフ、設定スカスカ


胸糞悪い夢を見た。

「はぁ?お前術式持ってねぇの?死ににきたの?何それウケる」

私は昔からあるモノが見えていて、この能力を生かせる呪術高専へと入学して勉学に励んでいた時期があった。冒頭のはこの界隈で有名な五条悟との初対面で言われたセリフだった。
呪力しか持たない私は最強の術式と眼を持つ彼からしたらミジンコみたいな存在だったんだろうが、些か腹が立つ。
アラームの音とバイブの振動で目を開いたらいつもの自宅の天井。

「……最っ悪」

胸糞悪い目覚めから気を取り直し、出社すべく身支度を整え家を出る。呪術高専を卒業した私だけど、卒業後は呪術師でも補助監督でも窓でもなんでもなく、普通の一般企業へと勤めた。
私には同級生のように反転術式を使う力もないし、呪霊を操る力もない。そして何よりあのなんでも持ちうる男の存在が眩しすぎて、アレを見ていると自分がより一層惨めに思えて最悪呪霊になってしまいそうな気分さえするのだ。

「おはようございまーす」
「おはようございます苗字さん」
「はよざいまーす」

呪術師を志す事は辞めたけれどだからといって呪いが見えなくなる事はなくて。単純に呪力で祓う分には問題はなかったから、すれ違う職場の仲間に取り憑いた呪霊を握りつぶしながら出勤するのがお決まりだ。

「じゃ、商談行ってきます」

資料オッケー身だしなみオッケー。
仕事仲間にそう伝えると私はオフィスを出た。今日は街中の喫茶店にて新規顧客様と本契約の商談を予定している。

ーー

「最近何か悩み事でもあるんですか?」
「え?」
「体の調子とか」

大成功に終わった商談。契約書のサインを終えて相手が一通り落ち着いた頃を見計らい、アイスコーヒーを手にしながらふと口にしてみた。

「えーすごいわねぇ苗字さん。そうなのよ、最近寝付きが悪くってねぇ」
「暑くなってきましたしね」

そう肩に手を置いて溜息を吐く彼女の肩を見据えると、この世のものではない物の怪、呪霊の姿。

「じゃあ、少しお手洗い行ってきますね」
「はい、……ごゆっくりー」

カバンを手にして席を立つ彼女をにっこり笑って見送る。彼女が後ろを向くと同時に私はカトラリーボックスの中に入っていたナイフを取り出し、呪力を込めながらそれをテーブルに突き立てた。体にナイフが刺さった呪霊は苦しそうにもがくと姿を消し去る。

「あら!?」

お手洗いに向かっている途中の彼女が驚いた声を上げた気がしたが、私は気にすることもなくアイスコーヒーを手に取った。


ーー


「じゃ、今日も外回り行ってきまーす」
「はーいお気をつけて苗字さん」

そんなこんなで勝手にひっそり呪霊退治しながら過ごす日々。

「ーーお世話になっております。株式会社ジュジュテックの苗字です。はい。本日のー、あ、そうです。はい、」

電話しながら街の往来を進むとふと目についた一人のサラリーマン、とその背中に憑く呪霊。

「(取っておいてあげるか)」

彼の背中にへばりつくそいつを手に取った瞬間、横から手を掴まれる。

「…なっ、」
「やっ、久しぶり〜」

白髪、包帯、巨大な変人が私の手首を掴んで、もう片方の手で「やぁ」と挨拶してきた。暫し瞠目したが、電話先から私の様子を伺うような声が聞こえて我に返る。

「…それでですね、次のアポなんですけど」
「アハハ、ガン無視」
「分かりました。ご確認ありがとうございます。それでは、はい、当日よろしくお願いします。では失礼いたします」

商談一件取り付けた。スマホをしまって厚いビジネスバッグの中からスケジュール帳を取り出し、先程決まった日程に取引先様の名前と時間を書き加える。

「…何しに来たんですか」
「スカウト?」
「芸能事務所でも立ち上げたんですか?おめでとうございます」
「僕一人でもいいかもね!呪術師タレント枠!」
「テレビ出演されたら時間帯教えてくださいね。テレビ消します」
「ありゃ、僕すごい嫌われてんじゃん」
「良かったですね」
「てゆーかなんで敬語?僕らタメだよ?」
「社会人はタメより敬語がデフォルトなんで。それで何の用ですか?」
「うん実は呪術師がひっじょーに人手不足でね、ちょっと困ってるんだよね」
「へぇそりゃ大変ですね。タレントになって募集したらいいですよ」
「昔から口減らずなヤツだな、名前。そんな名前ちゃんにはこの僕が株式会社ジュジュテック強制解雇の刑〜」
「…は?」

何言ってんだこの人、そう思っている私のポケットの中で携帯が震えた。ディスプレイに浮かんだのは社長の名前だった。