初夜-前篇

◼︎


「ぎ、銀さん…!」

背中に当たった布団の感触、真上には天井を背後にした銀さんに心臓がばっくんばっくん騒ぐから思わず目の前の人の名前を呼んでしまった。

「んー?」
「ちょっと待っ」

手慣れた手つきで帯を外されて、前合わせからするりと差し込まれた手が胸元をさらりと撫でた。まるで肌の感触を愉しむように指先で撫でると、さらに合わせ目を広げるように手を動かしてくるので思わず反射的にその手を掴んでしまった。

銀さんの目と合う。

「ここまで来ておいて待ったはねェだろ名前ちゃんよ」
「そ、それはそうなんですけど…!あの、心の準備ってヤツが…」
「散々ここら辺までやってきただろーが。まだンなもん用意できてねェの?」
「だっ、だって、」
「…なるべく痛くしねェから、な?」

耳元で囁かれてゾクリと背筋が粟立った。それは、ズルい。

「あ、の…私本当にこういうの経験無くって…!」
「わーってるよ。銀さんに全部委ねときな」
「…っ、はい…」

私の反応に満足したのか、あやすように額に口付けながらゆっくりと合わせ目を広げていく銀さんの手に私はかちこんちんに固まる。

銀さんとお付き合いしてから2ヶ月。キスを重ねたことはあれども身体を重ねたことは一度も無かった。それらしい雰囲気はあれども私が生娘ということもあって恥ずかしすぎて暴れたり、思いもよらぬ邪魔が入ったりと、ズルズルとその機会は延びる一方だった。

銀さんも大人とはいえ男であって、とうとう我慢が限界を超えたのかある日突然神楽ちゃんと新八くんをお妙さんのところへ泊まりに行くようにと言い出し、翌日は遅い時間に帰って来させるようにか遊園地へ行くお小遣いまであげていた。

緩められた長襦袢を広げられたらその下はもう下着しかない。まだ袖を抜き取られていないが、着物が開けてきた所で銀さんが固まり、思わず自分の胸を袖で隠した。

「…な、何か…」
「………超絶景」
「は?」

マジマジと見るやこくりと喉を喉を鳴らす銀さん。

「マジで食っていいんだよな?」
「えっ?く、食う…?」

何かの確認をされて困惑していると、銀さんの顔が首元に落ちてきた。何度も何度も首筋に押しつけられ吸い上げられ、私は固まるしかなかった。 

「もっと力抜けって」
「だ、だって……っ!」

その時銀さんの右手が肩に触れてきて身体が一瞬だけ震える。

「コラコラ隠すんじゃないの」

肩の古傷をなぞる様に銀さんの指が動き、肩の傷を見られるのが不安になって長襦袢を肩の傷が隠れるまで引っ張ったら、銀さんに剥がされてしまった。

…普通の女の子にならあるはずのない生々しい刀傷が私にはある。

「言っとくけど…、俺ココすげー好きなんだわ」
「えっ」
「なんでか知ってる?」
「……んんっ…!」

悪戯っぽく笑ったかと思えば、盛り上がった傷口に銀さんの唇が触れてピクリと身体が揺れた。柔っこくて生暖かい感覚が肌を伝って背筋が震えて声が溢れ出た。

「あ、ぁっ、」
「お前が寝てる時にここにちゅーしたことあんだけどさ、寝てんのに「んっ」って反応すんだぜ?すっげぇエロいなんのって」
「…えっ……はぁ!?いつですか!?」

しれっととんでもないことを言われてまた顔が熱くなった。し、知らないそんなこと!!

「さてね。…寝てる間でも反応してくれんだったら起きてる時はどうなのか…すげー楽しみにしてたんだわ」
「…あ…悪趣味…」
「なんとでも言ってろ」
「んんっ」

油断していたところをべろりと傷を舐め上げられて自分の喉から甘ったるい声が溢れた。自分の声から出ているのが恥ずかしくて口元を手で覆うと、銀さんの大きな手がそれを掴んで剥がした。

「だから声、聞かせて」
「ぎんさっ……」

唇と唇が触れ合って、くぐもった声が出る。横腹を撫でる手が背中側に回って、下着のホックに伸ばされたのが分かると、胸の圧迫感が軽くなった。

「やっべェ…たまんねェなコレ…」
「…っ、あんまりじろじろ見ないでください…」
「オイオイそりゃ無理に決まってんだろーが。テメーが惚れた女の身体が目の前にあんだぜ?」

下着の支えがなくなってだらしなく垂れる胸を銀さんの大きな手が包む。恥ずかしいけど、あったかくて落ち着く不思議な感覚だった。
ふにふにと胸の感触を愉しむように軽く揉まれると、銀さんの胸の突起に触れてぴくんと身体が揺れた。

片胸を触られながらまた首筋に銀さんの唇が落ちる。ふわふわとした髪が擽ったくて身を捩った。

「く、くすぐったい」
「お?余裕じゃん名前ちゃん」
「ちがっ……ッ!」

首筋をキツく吸われてぎゅっと目を瞑った。その唇は次第に胸の方まで降りてきて、胸の突起に触れてきた途端、身体が跳ねた。

「んぅ…ッ!」

どうしても目の前で起こってることが信じられなくて目を逸らしてぎゅっと目を瞑る。だって、あの、あの銀さんが私の胸に吸い付いているだなんて…。恥ずかしすぎて顔から火が出そうなくらい熱くなった。

けれど、目を閉じれば余計に神経はそちらに持っていかれるばっかりで、自分の喉から出てくる女らしい声を抑えようとして手の甲で必死に押さえ込む。目は閉じるもんじゃない…。

「ははっ、強情だな」
「…っ、はぁっ」
「調教し甲斐ってモンあるからいーけど」
「んんっ」

リップ音を立てながら胸の突起から唇を離した銀さんが耳元をひと舐めすると低い声でそう囁いた。腹の底、自分の女の場所が疼くような感覚に膝をすり合わせると、それに気づいた銀さんが優しく笑う。

「忘れられねェ夜にしてやるよ」

本当にこういう時ばっかり、ズルい。


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