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拍手御礼+1
(五条先輩と後輩の5月23日)

・キスの日なので!拍手御礼を追加しました〜!
・ワードパレット、リクエスト頂いた分は絶対にハッピーエンドにしようと思っているんですが、どうしても伏黒甚爾さんの話がハッピーエンドにならなくてあれなので追記で供養させてください。ネームレスです。
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22.伏黒甚爾×薬指の幻日


 この男になら殺されてもいいな、と思ったから足を開いた。
 会えば夜明けまでわたしのことを抱いて離さなかったので、たぶんこの男はわたしのことを気に入っていたんじゃないかと思う。わたしはいつだって寂しかった。この世のどこにも自分の居場所がないような気がしていた。そういう言葉にできない寂しさを埋めてくれるのはこの人だけだと、錯覚するほどには会えることを喜んでいたのも事実だった。
 恋人では決してないけれど、恋人にするようなキスをして、恋人にするように強い力で抱きしめる。
「はじめは声も出さなかったのになあ」
 それはとても、楽しそうな声だった。

 夜が明けるころには汗や涎で化粧なんかすっかり剥がれ落ちてしまっている。髪は乱れているし、声は枯れて、疲れていた。ホテルの備え付けの化粧台に映るわたしは、ほんとうに母親に似ている。化粧をあまりしない人、ご飯を毎日作る人、仄かにも香水の匂いがしない人。たった一人のことをちゃんと愛し続けられる人。顔は似ているのに自分とは正反対の人。
「わたしの両親、すごく仲が良いの」
「…そうか」
「わたしにはそれが窮屈だったの、仲良しの家族を演じているみたいで」
「ガキだ、おまえは」
「うるさいな。わかってるよ。…甚爾はどんな家で育ったの」
「俺には親なんていねえよ」
「嘘でしょ」
「どうだかな」

 うなじを指が這う。ああ、まただ。どうしたら女を、ひいてはわたしを喜ばせることができるか熟知している。こうしていつも自分のことを一切話すことなく、すべてを有耶無耶にするのだ。
 昔話にあるように、大地から生まれただとか、空から降って来ただとか。そう言われたら、嘘だと知りながらも信じてしまいそうになる。仄暗い部屋の中、だらしなく声を出しながらそんなことを考えていた。



「故郷に帰る、親が死んだ」
 それがわたしと離れるための体のいい嘘だということになんとなく気がついた。親が死んだ?親なんていないと嘯いていた男が、そんな殊勝なことをするはずがないと思ったからだ。
「甚爾、あんたの故郷ってどこなの」
「…どこがいいと思う?」
「じゃあ、沖縄とかどう?」
「いいな、それ」
 やっぱり全部、うそだ。
 わたしの番号を着信拒否して、携帯電話のアドレス帳から名前を消して。たったそれだけで永遠に会わなくて済むのに。そしたら、わざわざ下手な嘘をついてまで離れる理由を作らなくて済んたはずだ。
 もう、たぶん、この人とは二度と会えない。殺されてもいいと思える男に出会うことなんて、きっともう二度とない。最後に見た顔が優しい顔でよかった。わたしの記憶の中には優しい顔をしたこの人だけを住まわせていよう。
 あんたは、わたしが知らない土地で、別の人間と生きて、いつかわたしのことを思い出して、後悔したり、寂しくなったりすればいい。

 どれだけ馬鹿なことをしてもいいから、死なないでね。
 わたしはこの人の顔も見れないままそうつぶやいた。
 湿っぽいのは嫌いなんだ、と言いながら甚爾はわたしの頭を撫でる。さよならの言葉は最後まで聞こえなかった。


20200523

2020/05/23
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