※夢主さんが喫煙しますが、推奨する意図は一切ありません。
豆電球がついた部屋で夜を過ごすのが苦手だった。目を閉じてもまぶたの裏側でちかちかと点滅する感じがして眠れなくなる。
「傑はなんで部屋の電気真っ暗にしないの」
「……ベッドの上で煙草を吸う名前に、火傷の痕つけられたくないからかな」
「ばーか。そんなヘマしないのに。……もうこの部屋で煙草吸うのやめようかな」
「それは困る」
「ふーん?」
もちろんわたしが口にした禁煙宣言は嘘で、少しでも傑が困ればいいなと思っただけだ。安心して煙草を燻らせることができるのは広い高専の中でもこの部屋だけだし。それは困ると言ったのは口だけで、当の傑はぜんぜん困った様子はない。いつも通りのしゃあしゃあとした薄い微笑みを浮かべていた。
「名前の、火をつける指先が好きだよ。きれいだ」
「そこだけ?」
「まさか」
背中に傑の体重の一部がかかる。首筋に口付けされたのがわかった。くすぐったい。
「ねえ、煙草吸い終わるまでまって」
「……薄く灯りを灯してる理由、本当は、名前が私の部屋と悟の部屋を間違えたら困るからだよ」
「ばか」
傑と五条くんを間違えることなんて絶対にないのに。五条くんの部屋、灰皿ないから煙草も吸えないじゃん。
今手に持っている煙草を、夏油の身体の、私にしか見えないに場所に押しつけてやろうかと思ったけど、やめた。ガラスでできた灰皿に吸いかけの煙草をぐりぐりと押しつけて橙色に灯った火を潰す。かわりに鎖骨あたりに噛みつくと、傑の肌にはうっすら血が滲んだ。薄く灯りがあるからよく見える。
「名前、痛いよ」
「その傷、硝子に見せないでね」
「馬鹿だな、……見せれるわけないだろ」
滲んだ血を唇で啄むようにして吸い上げる。驚くくらい熱い。傑の細胞が溶け出した血液からは、月並みだけれど鉄の味がした。
「うん」
わたしだけが触れられるちいさな傷口。その傷、絶対わたし以外には触らせないで。絶対。それで、薄くなったらまた噛みついてやる。
20210406
わたしには見える