白い天井を一人で睨みつける。いちばんの孤独は、きっと今、あなたがいないこの瞬間だと思った。ピルは合わなくて飲めない。すぐ気持ち悪くなってしまう。それが怖くて飲むのをやめた。そもそも、普段はこんなに酷くないのに、なんで悟がいない今日に限って。
ご飯あったけ、と思って冷凍庫を見るけど、レンジにいれたらすぐ食べれそうなものもない。そもそも食欲もあまりない。甘いものを食べたい気がするけど、ないならないでいい。できればチョコレートが食べたい、アイスでもいい。だけどコンビニに行くのは嫌。酷い顔してるけど着替えて鏡を見て化粧する元気なんてあるわけない。ペットボトルの水だけはあるし、まあなんとかなるだろう。動きたくない。今日が土曜日で良かった、お休みだ。悟は出張に行ってしまったけど。洗濯も食器洗いも掃除だって、何一つできていないけど。
寝室まで行くのもめんどくさくなってしまって、わたしはリビングのソファーの上に横たわる。何もしていないのに、なんでこんなに体力を使うんだろう。お腹の下の方に鉛でも詰め込まれたみたいだ。
クーラーをがんがんにかけて、毛布に包まる。今の気分はそんな感じ。それでようやく心のバランスをとる。VODでラブロマンスを流しながら、気がつけばわたしは眠ってしまった。
夢を見ていた。夢の中でわたしは迷子になって、悟が迎えに来てくれる。そんな夢を見ていた。
「起きた?名前」
「…あれ、悟?出張は?」
「携帯見てよ」
「ん…」
メッセージアプリに、着信履歴に、夥しい数の悟からの伝言が入っていた。わたし、そんなに長い時間寝てたのか。まだまだ眠れる気がするのに。気づかなくて、ごめん。わたしは小さな声で謝った。悟は心配だったから急いで帰ってきた、と言ってくしゃくしゃとわたしの頭を撫でて笑う。
床にはスポーツドリンクとチョコレートが入った袋が置いてあった。ああ、悟が買ってきてくれたのか。わたしが欲しかったもの。
「今朝も体調悪かったでしょ」
「バレちゃった?」
「なんで隠すのさ」
「今までずっと平気だったの、ひとりでも」
悟と暮らし始める前まで、わたしはずっとひとりだった。それでもここまで生きて来れたんだし、お腹が痛くて動けない時なんて何回もあった。時間が経てば消えて無くなるのに。こんなに孤独を感じる心になったのは、当たり前のように悟がそばにいてくれるようになったから。
「なんでも言ってよ、そうじゃなきゃ一緒に住んでる意味ないじゃん」
「でも、悟は出張が」
「僕のこと誰だと思ってるの?」
「人類最強の男」
「違う、名前の恋人だから」
「…そっか」
「呪いなんて、一瞬で祓って、戻ってくるよ、いつだって」
わたし、いつだって不器用でごめんね。弱いところを見せるのが悪いことだとまだ思ってるの。いつになっても甘えるのが下手でごめんね。本当は、悟にこれ以上負担をかけたくないんだけど、これからはもっと頼るから、悟もわたしのことちょっとは頼ってくれていいんだよ。
悟は、僕はもう充分名前に甘えてるよ、と言って指を強く絡ませた。
もしいつかこの先の未来でわたしとあなたの子供が産まれたなら悟によく似た男の子がいい。それで、あなたによく似た優しい男になったらいい。恋人が体調の悪い時には、スポーツドリンクとチョコレートを買い込んで、暖かいご飯を作ってくれるような、そんな男になったらいい。それで、ついでに世界救っちゃったりしてね。
未来は今日ちょっとだけ色を変えて、わたしが考えるよりももう少しだけ単純なものになっていく。
オール アイ ウォント
20200303
いただいたリクエストは女の子日に五条悟に甘やかされる、でした!素敵なリクエストありがとうございました!