「もう女として見れないんだ、別れよう」




三年付き合った彼氏に振られた。
大学時代からの友人である彼と交際に発展したのは“なんとなく”以外の理由が無くて、三年のうち別れるまでの約二年はセックスレス。女として見られなくなったのも理解出来るし別れるべくして別れたんだろう…。
それでも一緒にいれば気を遣わないし楽でそれなりに好きだったから、

「結構しんどいな…。」

「朝から元気が無いな!どうした!」
「煉獄先生…」

寝不足の頭に響くこの声は紛れもなく煉獄先生だ。
教師、という仕事は思った何十倍も激務で彼と会う時間がほとんど取れなくなったのも別れる原因のひとつだったのかな。そんな激務をキメツ学園の先生達はタフにこなしている。
煉獄先生もその内の一人、というよりはこの学園で一番元気のある先生だと思う。

「いやー、ちょっとプライベートで色々ありまして…」
「なんだ!話してみるといい!」
「大丈夫です、ご心配おかけしてすみません」
「うーむ、元気が無いと病気にも罹りやすくなる。そうだ!今日呑みに行こうじゃないか!名案だな!」
「ははっ!どんな理由ですかそれ、でも有難う御座います。行きたいです」

朝から元気いっぱいの煉獄先生と会えて、なんだかこっちまで元気貰えた。人の話とか聞いてなさそうだしせっかちな人だけど、人のことをよく見てその人の望むものを差し出してくれる煉獄先生は凄い人だ。
今日はどちらにせよ一人で呑みにでも行こうかなと思っていたから嬉しい誘いだった、彼氏以外の男の人と呑みに行くのなんて久しぶり!それも学園の三大イケメン教師とだなんて、楽しみだな






・・・






「ぷは〜!ビール最高!華金最高!」
「なんだ、思ったよりも元気そうで良かった!」

学園から程近い居酒屋に足を運び、とりあえずビールで乾杯。金曜日の夜だからか居酒屋は賑わっていて、個室だけどその賑やかな声は筒抜けだった。
ーーー今日は何もかも忘れて呑むぞ!
それにしても本当に煉獄先生と二人きりだとは思わなかったな、学園の先生達はそれなりに仲が良いし誰かしら連れてくると思ってた。もしかして、話を聞いてくれようしてくれてるのかも。煉獄先生は漢気のある良い人だ、イケメンだし

「そりゃあ煉獄先生みたいな美男を目の前にしてビール呑めば元気も出ますよ」
「美男か、初めて言われたな!」
「嘘だ!天然人たらしめ!」
「ハッハッハ!妖怪みたいな名前だ!」

嫌味の無い性格で誰とでも打ち解けられる煉獄先生と一緒に呑むのは凄く楽しい。そう、楽しすぎた。寝不足も相まって酔いはすぐに回り気付いたら元彼の愚痴を溢していた。





「三年ですよ!三年!結婚だって考えてたのに」
「うむ、中学生が高校生になってしまうな!」
「そうですよ、それなのに女として見れないなんて酷いっ」
「……そう言われたのか」

煉獄先生は初めこそ私に彼氏がいた事実に驚いていたけどしっかり話を聞いてくれる。あまり否定はせずに淡々と言葉を返してくれるのが嬉しくてどんどん言いたい事が口から出てきてしまっていた。

「私って女として見れませんか?」
「そんなことないぞ!苗字は可愛いさ」
「えっ…」

酔っていなかったら煉獄先生の優しい社交辞令だと受け取るかもしれないが完全に酔いの回っている私には酷く甘い言葉に聞こえてしまった。
ガヤガヤと色んな音が聞こえる居酒屋で“可愛い”という言葉だけが耳に残る。

「本当にそう思います?」
「ああ、俺は嘘をつけないからな!」
「じゃあ今から抱いて下さいって言ったら抱いてくれるんですか?」

煉獄先生の顔が赤くなるのを私は見逃さなかった。可愛い、この人に抱かれたい。この人が私に欲情してる顔がみたい。

「それは、出来ないな」
「なんでですか。寂しいんです、寂しさ埋めてくれませんか?」
「……恋人でも無いのに駄目だろう。」
「じゃあ仮の恋人になって下さい、煉獄先生みたいな人に抱かれたい」
「だがっ、」
「私が女だって証明して欲しいです」

その言葉が合図かのように口を塞がれる。煉獄先生は経験豊富なのかな、キスだけで逝ってしまいそうだ。

「んふっ…んん、はぁ……ん」
「そう可愛い声を出すな。ここは個室といえ居酒屋、移動しよう」
「うち、こっから近いです。」

スマートに会計してくれ、お店を出ると手を繋がれる。タクシーを拾って家までいくがその道中もずっと手を握っていてくれた。











暗夜の焔 01








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